真奈美2
前回告知した投稿日を無視して申し訳ございません。
本日より投稿を再開いたします。
億劫な受験対策特別授業という名の過去問演習を終え帰り支度を整える。
窓の外を見るといつもより薄暗い。
どうやらどこかから運ばれてきた厚い雲が空を覆い隠している。
これは一雨来るなと考えていると、窓の外がピカッと光った。
ドーーン!!!
身がすくむ轟音と共にザーザーと雨が降り始める。
この雨の中傘をさしてもだいぶ濡れてしまうだろう。
ちょうど気晴らしに図書館へ行こうと思っていたため、俺は別館にある図書室へ向かうことにした。
結論から言うと本を借りることはできなかった。
渡り廊から中庭を見下ろすと、傘を差した集団がメダカ池にたむろしていた。
上からでは誰かはわからないが傘の色から女子であることがわかる。
なんとなくその集団がいなくなるのを観察してみると、どうやら奴らは靴をメダカ池に放り投げたようだ。
「あー、またか」
俺は急いでメダカ池に向かった。
靴が池の底に沈んでしまうと厄介だからだ。
◇◆◇◆
到着した時、まだローファーは靴底を上に浮かんでいた。
腕を伸ばしてもまずかに届かなかったので仕方なく自分の右足を犠牲にすることにした。
「......やっぱり靴は脱いだ方がよかったかな。でも素足で突っ込むのやなんだよな」
池の水や泥がスニーカー内に一気に入り込んできた。
その気持ち悪さに顔をしかめながらもなんとか拾い上げた。
ローファーは底に沈む前に回収できたがやはりずぶ濡れになってしまっていた。
これはどうしたものかと思いながらメダカ池から出て屋根の下に入る。
右足はもちろんだが雨に打たれてシャツが透けてしまった。
ハンカチでローファーを磨いて少しついてしまった泥や汚れを拭っていると
「......ねぇ」
突然声をかけられた。
振り向くとそこに彼女はいた。
走ったのか呼吸は乱れているがその目は俺を睨んでいた。
「かかわらないでって言ったじゃない!」
「......申し訳ない、君の靴が濡れてしまった」
「ねぇ、なんで余計なことをするの!」
「よければ俺の片方の靴を貸すけどどうする?」
「「・・・・・・」」
互いに沈黙する。
会話が成立しないのだから当たり前だ。
次回「真奈美3」
投稿日2022年2月3日(予定)
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