仕事の対価は彼女の寝顔
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日曜日 19:40 一葉の部屋
弱弱しい光を放つ室内灯が照らす部屋の中。シングルベットに横たわる1組の男女。何も起きないはずがない。
「......と普通の人なら思うんだろうな。」
一葉を起こさないようにベットから体を起こす。
雰囲気的に星を視たくなったので少しカーテンをめくり覗いてみたが曇っていて星なんて見えない。
損した気分になったのでカーテンを直し一葉のほうに目を向ける。
一葉は俺の腕を抱きかかえながら静かに眠っている。
幸いそこまで強い力ではないので体を起こすくらいの自由は工夫すればできるのだ。
「ふぅ、ハードな日曜日だった。」
一葉の顔を優しく撫でながら、ついため息をこぼしてしまう。
だがそうするのもさっきまでのこと、つまり日曜日のことを思い出すとしょうがない。
◇◆◇◆
まず目覚めた後、一葉と朝まで交わっていた。
俺は薬で自由が利きにくい状態だったから主導権はもちろんあっち側にある。
いつもテンションを高く維持しているため体力がすごく、日が昇る少し前まで彼女の勢いは衰えることが無かった。
日が昇りはじめ、窓の外がぼんやりと明るくなり始めたころ、俺たちは(主に俺が)体力が尽きてそのまま二人で眠りについた。
目が覚めたらお昼過ぎだった。
体が汗と体液でべたべたして気持ちが悪い。
まだ眠っている一葉をゆすって起こす。
その時には薬も完全に切れ、体の自由を取り戻していた。
「おはよう。」
「ん......おはよう。逃げなかったんだ。」
「本気で言ってるのか? だとしたらお前の中の俺はなかなかの薄情者だな。」
「ううん。確認しただけ。ありがとう。待っていてくれて。」
「そう思うんなら薬って眠るのを強要しないでくれ。」
「フフフ、それはできないかな♪」
「はぁ、だよな。知ってたよ。まぁそれはいいや、それよりシャワー貸してくれ。」
「あー、ちょっと待ってね。」
そう言うと寝間着を身に着け一葉は部屋を出る。
さすがに親がいるかもしれない状況で親の前に裸で出るのはまずい。
今下に降りて行ったのは両親がいるか確認しに行ったのだ。
娘が男を家に監禁していることを一葉の両親が許すはずはない。
だから今一葉の両親は俺がこの部屋にいることを知らないのだ。
「外出していてくれたらいいんだがなぁ。いたらシャワーはお預けだ。......見つかったら殺されるな。」
最悪な事態を想像していると
しばらくすると会談を上る音が聞こえてくる。
足音の主が誰だかわからない。
一葉が戻ってきたのかもしれないし両親が上がってきたのかもしれない。
(念のためクローゼットにでも隠れるか)
服をベットの下に、カバンを机の影に隠し、自分は素早くクローゼットの中に身を潜めた。
彼女のクローゼットに全裸で隠れる自分を想像してめまいがしたが、このまま一葉の親に見つかるほうが憂鬱だ。背に腹は変えられない。
......コツ ......コツ ......コツ
足音は階段を上り終え俺が隠れている部屋の前で立ち止まった。
......ガチャ