眠り
お久しぶりでございます。
期間を開けてしまい申し訳ございません。
投稿を再開いたします。
◆◇◆◇
午後3時、一葉宅、一葉の部屋
お会計を済ませた私たちはマスターにごちそうさまを言って店を出た。
特に向かうところもなかったことと、私の家がこの店からそう離れていないことから自然に(すこし強引に)キクちゃんを私の家に連れて帰った。
「さぁさぁ、狭いところだけどくつろいで行ってよ。」
「......おい、」
「ん~?少し待ってね。この袋がなかなか固くって。」
「お~い、」
「あ、コーヒー?ごめんね。お湯が沸いてないんだ。キクちゃん甘いの飲めないからこれで我慢してね。」
「一葉。そうじゃない。その手に持っているそれは」
「ちょっと待っ、あ!切れた切れた。」
......サラサラサラ
「はい、お待ちどおさま。特製麦茶だよ。召し上がれ♡」
私は特別に用意した麦茶をキクちゃんに渡す。
キクちゃんは少し顔をしかめながらも私の手からグラスを受けっとってくれた。
その際彼の手が私の手に触れる。
私の手よりも大きくて少し硬くてあったかい。麦茶からの冷気がより彼の体温を感じさせてくれる。
「さぁどうぞ。今日は暑いから脱水症状にならないように気を付けないとね♡」
麦茶を渡したのにキクちゃんはグラスを覗き込むばかりで口を付けようとしない。
「どうしたの?飲まないの?」
「......」
「どうして?ねぇ飲んでよ。ぬるくなっちゃうよ?」
「......」
いくら私が勧めても彼は飲んでくれない。
グラスの中身をのぞき込んでいた彼の視線は私のほうに向けられる。
「なんでそんな目を私に向けるの?キクちゃんはこの中身を飲むだけでいいんだよ?難しいことじゃないよね?......ねぇ飲んでよ。」
「......なぁ、今日何曜日だっけ。」
さっきまで黙っていた彼は唐突に聞いてきた。
予想外の質問に私は何も返せなかった。
彼は左手に着けていた腕時計をのぞいて日付を確認し、壁に掛けられたカレンダーを見て曜日を確認する。
「今日は土曜日か。まぁいいだろ。」
グイッ‼
グラスを思いっきり傾けて中身を勢いよく喉に流し込む。
あっという間に飲み干した後ゆっくり私のほうに近づいて耳元に顔を近づける。
「......おやすみ」
チュッ......バタ
私の頬に優しく口付けをした後、すぐに深い眠りに落ちていった。
「......おやすみなさいキクちゃん♡」
次回「日曜日」
更新日5/23(日)予定しています。