菊池朗視点3
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どうやら彼女の思考も独特であるようだ。
彼女の隣にいる幸一は少し驚いたような表情を浮かべている。
(多分こいつの驚きは質問内容ではないのだろうが。)
「す、すみません。こんなこと聞くのはし、失礼ですよね。ごめんなさい。忘れてください。」
「いや大丈夫だ。そんな謝らないでほしい。」
「い、いえ。すみません。」
自己肯定感が低いのか何度も謝罪してくる。
幸一も心配そうに彼女をなだめている。
このままではらちが明かない。さっさと質問に答えたほうがいいだろう。
「さっきの質問の答えだが、察しの通り俺と一葉は付き合ってるぞ。だからさっきの奇行も別に異常なことじゃない......おい、なぜおまえまで驚いてる?」
俺は驚いて固まっている一葉に尋ねる。
「え、いや。キクちゃんが人にそれを言うなんて初めてだから。」
ん?そういえば言ったことなかったかな?
「まぁわざわざ言う機会もなかったし必要もなかったしな。」
「そっかぁ。えへへへへ。」
にやける一葉を見て思考にふける。
だがそれもすぐ幸一の発言に戻される。
「へー、先輩たち付き合ってたんですか。」
「うん。私とキクちゃんは二年生のころから付き合ってるんだ。結婚届もフグ!!」
何かまずいことを言いそうになった一葉の口を強引にふさぐ。
密着したことにより一葉が嬉しそうな顔をしてきたが今は置いておく。
「すまんな、この話はまた今度な。どうやら他の部員も到着したようだ。」
外に耳を向けると人の足音、しゃべり声が近づいてくる。
時計の針は07:45を少し過ぎたところを指している。
楽しいおしゃべりの時間はもう終わりだ。
またあの面倒な会議の続きをせねばならない。
「......あ、会議あるんだから着替える必要ないな。」
次回「寄り道デート」
更新日は5/4(火)を予定しています。