一葉視点1
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会議翌日 早朝 一葉の部屋
ジリリリリリリ!!......
ジリリリリリリ!!......
やかましいベルの音に遮られ、私は夢の中から現実世界に引き戻された。
キクちゃんとの楽しくて幸せな夢を見ていたはずなのになぜか思い出せない。
きっと重い瞼をあけることと引き換えに奪われたんだ。
ベットから身を起こし勉強机に置かれた開きっぱなしの日記帳をそっと閉じる。
「あぁーぁ。今日もかけなかったなぁ。とってもいい夢だったのに。絶対覚えておこうって夢の中でも決意したはずなのに。なんで忘れちゃうのかなぁ。」
独特な虚しさを抱きながらさっきまで鳴り響いていた目覚まし時計で時間を確認する。
05:20
なぜ昨日の私はこんな早くに起きようと思ったんだろうと首をかしげる。
昨日の寝る前の記憶が思い出せない。
とりあえず顔を洗って朝ごはんの支度をしようと思い部屋から出て階段をおりる。
洗面台にたどり着き鏡をのぞいたら思い出した。
鏡に映る私は制服をまとっていたからだ。
「......あー、そういえばお風呂入るのが億劫だったからそのまま寝たんだっけ。明日早く起きて入ればいいやー。とか言ってたなぁー私。」
とりあえず浴槽をのぞくと案の定お湯は張っていない。張っていたとしてももはや冷め切った水風呂と化しているだろうに。
「しょうがない。シャワーで我慢しよう。......朝シャンは髪に悪いんだけどなぁ。」
ブツブツ文句を言いながらも身に着けていたブレザーを脱ぎ肌をあらわにする。
ついでに洗濯機も回してしまおうと洗濯籠に入れられていた私服と共に脱いだばかりの下着も放り込み洗濯機を回す。
こんな姿キクちゃんには見せられないなと鏡に映る自分を、裸で洗濯機を捜査している自分を見て笑ってしまった。
シャワーを浴びた後新しい下着に着替えて髪を丁寧に乾かす。
長い髪の毛は乾かすのには時間がかかる。
いつもならたいして苦ではないこの時間も時間に限られた朝一番では焦りが出てしまう。
何とか人前に出れる格好に髪をまとめ、次は脱ぎ捨てられた制服にアイロンをかける。
スカートの折り目に合わせて丁寧かつ迅速に。時計を見たら06:50。
「ヤバッ!!もうこんな時間?......アチッ!!」
時計に気を取られているとあやまって左人差し指に軽いやけどを負う。
だけど今は時間がない。
かけたばかりで温かい制服を身に着け二階に上がり今日の部活で使う書類と用具をカバンにしまう。
学校まで距離があるため朝ごはんを用意するとかなり急いで走らなければいけない。
「......汗だくになりながら走るの嫌だなぁ。しょうがない。朝食はあきらめてのんびり行こう。」
あきらめて空色のリュックサックを背負い家を出る。
鍵をかけたことを確かめ、のんびりした足取りで学校に向かう。
半分ほど進んだころ、どこかで見たことがある女の子と曲り角であった。
(あらら、食パンでも加えて走ればよかったかな?)
(いや、同性にやっても意味ないやろがーい!!)
勝手にぼけて勝手に脳内で突っ込みを入れる私はぶつかりそうになったことに驚いている女の子、黒鳥瑠璃さんに一緒に行こうと誘いをかける。
少し言葉を詰まらせながらも首を縦に振ってくれた彼女を連れ二人のペースで歩き出す。
「黒鳥ちゃん。昨日は暇だったでしょ。ごめんね。会議が長引いちゃって。」
「い、いえ。暇ではなくて、その、......せ先輩こそ遅くまでお疲れ様です。」
(?なんで顔を赤くしてるんだろう?)
「黒鳥ちゃん、昨日何かあった?」
「!!い、え?あ、んにゃ!?」
(あ、なんかあったな。)
おそらく昨日のことを思い出しているのだろう。顔を真っ赤にしながらあわてる姿は何かあったと結論づけるのには十分すぎる。
「(男かな?黒鳥ちゃんは裏方。1年生で裏方の男はたしか)池垣君とイチャイチャしたの?」
ボッ!!!!
(あ、真っ赤がさらに真っ赤に。えー、何このかわいい生物。)
「......いえ、その、そんな、い、イチャイチャなんてシてません!!!!」
(かわいい。いいなぁ。池垣君。)
「ンフフフ♪、青春だねぇ。別に部活動内で恋愛はOKだからねぇ。」
少しからかいながらもっと詳しく聞こうと思うも残念ながらいつの間にか部室棟についてしまった。
「開いてるかな?」
ガチャ。ギィ......
特有の聞きなれたドアの軋みを聞き、靴を脱いで中に入る。
「失礼しまーす!」「し、しつれいします。」
次回「菊池朗視点2」
更新日4/28(水)深夜予定