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歪んだ愛  作者: 時計塔の翁
第一章 出会い。二人の視点
13/48

エレベーターと瑠璃の部屋

◇◆◇◆


 エレベーター内にて

 黒鳥瑠璃は上に上っているエレベーターの床にしゃがみこんでいた。

 彼女の顔は真っ赤に染まり、瞳から流れた涙で熱を帯びた頬を濡らしている。

 体は小刻みに震え、右手で自分の胸を苦し気に抑えている。

 四方に閉ざされたこの密室空間には彼女の荒い息の音が鳴り響いていた。

 見るからに苦しそうに見える彼女だが、彼女表情は妖艶な笑みを形作っていた。

 

 「はぁ......はぁ......私、人としゃべれた。一緒に帰れた。友達が、......友達ができた!!!!あぁ幸一くん、幸一くん!!池垣幸一くん!!!!。私に話しかけてくれた人。優しい言葉をかけてくれた人。初めての、私の初めての友達!!。あぁ、なんて素敵なんでしょう!!!!」


 彼女はエレベーターの扉が閉まった瞬間、保っていた正気が一気に崩壊した。

 普段の彼女ならばいくら自分以外いないからと言っていつ誰が乗ってくるかもわからないエレベーター内でこのような醜態をさらすようなことは天が落ちてきてもありえなかっただろう。

 しかし16年間の孤独がこの1、2時間で満たされたような幸福感と高揚感が彼女の感覚を麻痺させていた。

 彼女はこの狭い空間でせわしなく歩き回った。かと思えば唐突に床にしゃがみこみ息を荒げる。

 幸運なことに途中から瑠璃が乗るこのエレベーターに乗り込む住人はおらず、瑠璃のこの奇妙な行動は瑠璃が降りる階層にたどり着くまで続いた。


 

 ◇◆◇◆

 


 瑠璃の部屋

 ポーン!

 という音と共にエレベーターがとまり、扉が開いても瑠璃はそのことに気づいていなかった。

 だが扉が閉まりかけた時、ようやく着いたことに気が付き急いで飛び出した。

 長い廊下の右手側にある部屋の扉の前に立ち止まるとカバンからキーホルダーもついていないカード入れを取り出し鍵を開けて恐る恐る中に入る。

 

 瑠璃に反応して玄関の照明が自動で点灯する。

 彼女は無言で靴を脱ぎ、さっきまで暗かった廊下を歩き、リビングに向かう。

 隅々まで掃除された部屋内は埃一つ落ちておらず家具や小物はきちんと整頓されている。しかしそれが逆にこの部屋の人の住んでいる形跡を感じさせない。


 人がいないことを確認した瑠璃は手に持ったカバンを床に放り出し、置かれたソファーに身を投げ、クッションを抱えながら笑みを浮かべる。

 今日の出来事を何度も何度も脳内で再生させ、次第に笑みは深まりその口からこぼれ出た笑い声がリビング内を駆け巡る。


 「あぁ、優しかったなぁ幸一くん......私なんかの名前も憶えていてくれたし、車道側を歩いてくれたし、のろまな私のペースに合わせてくれたし。

 そういえば......幸一くん。私以外の人の名前があやふやだって言ってたなぁ......。それって私のことを意識してくれてるってことでいいんだよね......きっとそうなんだよね。私なんかの名前を、私だけを覚えていてくれたんだもん。そう思ってくれてるってことでいいんだよね。そう思ってもいいんだよね。


 ......いいよね......」


 彼女の笑い声だけがこの部屋に響き渡る。

 彼女の夜はまだまだ続くのだ。

次回「まだ題名決まってません」

更新日4/6深夜

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