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かけがえのないパートナー  作者: えずみ かいのう
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第1章 仕事はゴルフ!?

“人生1度、食べる分だけ労働し、いつもにこにこゴルフ三昧”を座右の銘にする、

32歳独身サラリーマン 桐山純が、ゴルフに仕事に一生懸命?



「ナイスバーディー!」キャディーさんの心地よい声がゴルフ場に響く。

何度聞いてもいいものだ。


俺は桐山純、32歳独身の天空システムズに勤めるサラリーマン。

父親の影響でゴルフにはまり、今では“人生1度、食べる分だけ労働し、

いつもにこにこゴルフ三昧”を座右の銘にしている。


今日は近所の練習場で知り合った電気工事屋の飯島さんと歯科医の綾澤さんと会社を休んで

楽しいゴルフに来ているが、サラリーマンには有給休暇というありがたい制度があるので、

毎年目一杯利用させてもらっている。


「きりちゃん、今日は絶好調だな!」

「普通だぜ、こんなの!」

とは言ったものの、15番を終わってフェアウェイキープ、パーオン率

共に100%、4バーディーノーボギーは出来過ぎだ。

こんな時間が一生続いたら、世界平和も実現できそうな気がする。

ただし楽しい時間というのはあっという間に過ぎるもので、現実はすぐに

やってくる。



翌朝、最寄りの東海道線“鴨宮駅”向かって早歩きで5分、“小田原発東京”

行きに乗った。本社がある“みなとみらい駅”へ向かう俺は、この7時半にいつも乗り

始業時間ジャストに到着する。


座席はまばらでゆったり座ることができるが、平塚駅を過ぎたあたりから

座席もいっぱいになり、人混みの嫌いな俺はいつも憂鬱になってしまう。

グリーン車に乗ればそれも解消されるが、平社員の俺には身分不相応という

やつだ。



「オハヨっす!」いつものように始業時間ギリギリに自分の席に勢いよく

すべりこんだ。


「き・り・や・まぁ〜」これもいつものように上司である山西課長が

毎朝声をかけてくれる。

「お前さあ、いつも言ってるけど始業時間の5分前に席に着いてろって」

「かちょお〜、僕低血圧なもんで朝苦手なんすよ」

「ちなみにいくつだよ?」

そんな質問されても、血圧なんて記憶にねえなあ〜。


「たしか100と60くらいですかね!」

「お前ねえ、それぜんぜん標準値だから。低血圧って言わねーから。

まったくいつもいつも・・・・」


左隣に座っていた瀬川ゆかり(いつもゆかりちゃんって呼んでいる)が、

ニヤニヤしてこっちを見ている。課長に聞こえないように、ゆかりちゃん

に低血圧の基準を聞いてみた。


「上が80とかじゃない?」

俺はちょっとサバを読んで、

「課長間違えました。上が70で下が40でした!」

「お前はすでに死んでいる!!」どこかで聞いたセリフだ。


「もういいから仕事しろ、仕事!」

そう言って、課長は忙しそうに目の前のディスプレイに身を乗り出して

覗き込んだ。

課長はたしか48歳だからもう老眼が始まっているのか。ヤダヤダ・・。


俺は仕方なくパソコンを立ち上げた。Windowsは立ち上がるのに1分以上

かかるので、机の上にたまたまあった雑誌“週間バーディーバーディー”を

めくった。


今週号に、足柄レイクゴルフクラブのゴルフシステム導入の記事が載っていた。うちの会社が

開発しているシステムの一つにゴルフ場システムがある。

俺の担当でもあった。もちろん俺に全て任せるほど会社は期待していないようで、

担当している営業はたくさんいる。


「きりさん、そんなの見ているとまた課長に怒られますよ!」

「いつも言ってるけど、市場調査なんだよ!」

今度は右隣の辻本(俺より後輩)が心配してくれた。辻本は神経質で

仕事一筋、おそらく血液は仕事色に染まっているだろう。


「きりちゃんもほんとメゲないんだから。そこがいいとこだけど」

ゆかりちゃんは俺のことを“きりちゃん”と親しみを込めて呼んでくれる。

後輩の男性社員は大体“きりさん”だ。


「いやあ〜、朝から褒められて照れちゃうなあ。ハッハッハー」

課長の冷たい視線を感じ、表面上固まっている画面を見ながらキーボードを

叩いた。やっと画面の明るくなったディスプレイを見ながら、今日の

スケジュールを開いた。


今日は午後4時から、伊豆半島にある伊豆白波ゴルフクラブにゴルフ場へ

システムの最終提案に行く日だった。

そういえば、開発チームの関課長が一緒に行くことになっていて、車の手配

を頼まれていた。


「課長、今日関課長と伊豆白波ゴルフクラブに提案に行ってくるんで、

社用車使いますねえ」

「分かったけど、ほんとに受注頼むぞ」

「了解しました!全力で頑張ります。それと打ち合わせが遅いんで直帰

します」

「遅いって何時よ?」

「16時からです。お客さんがその時間帯がいいって言うもんで」


ほんとは10時過ぎが良かったらしいが、俺の都合上16時からにして

もらった。

「しょうがねえな、気をつけて行ってこいよ」課長はとってもいい人だ。



午前中は資料を必要な分印刷して、クリアーフォルダーで4部作った。

俺と関さんは、12時には出発して途中昼食を取ることにしていた。


「ゆかりちゃん、お土産何がいい?」

ゴルフ場に行くときには職場へのお土産を買うことにしている。ゴルフ場で

買うと、そこの社員も喜んでくれるからだ。


「伊豆よねえ〜、おまんじゅう食べたいかなあ?」

「了解!最近ネットではやっている“天空饅頭”買ってくるよ。餡がしっかり

入っていて、甘みはあるもののさっぱりした口当たりがいいらしいよ」

「楽しみにしてるぅ〜。だからきりちゃん好きよ!」

こんなに喜んでもらえると俺も嬉しくなる。


地下の駐車場でエンジンを温めていると、関さんがやってきた。

3月下旬とはいえ、伊豆はまだまだ寒い。

関さんもオーバーコートを着込んで登場だ。


「お待たせ!」

うちのゴルフ場システムは、国内で常にトップ3に入っている素晴らしい

もので、関さんはそのゴルフ場システムを開発していている技術者だ。


「今日の昼飯は、“伊豆のへそ”でいいですかね?」

“伊豆のへそ”とは、伊豆の国市にある最近流行の道の駅だ。伊豆縦貫自動車道ができて、

横浜から大変行きやすくなった。

「そうだね。近くに行ってから食べることにしよう。そのほうが安心だからね」


横浜町田I Cで東名高速に乗って小田原厚木道路、そのまま箱根新道から

伊豆縦貫自動車道に直結だ。

3月の箱根は先日降った雪がまだ道路脇に残っていて、いかにも外は寒そうだった。


すでに10年は乗っているT A Y O T Oの社用車の暖房を全開にして安全

運転で飛ばした。T A Y O T Oの車は頑丈でいい。できれば少しぐらい

壊れてくれた方が、我々営業マンは新車に乗れて嬉しいのだが・・・。


「どう、最近調子は?」関さんがこの質問をするときはゴルフの話だ。

「なんとか片手シングルになりましたけど、なかなかうまくいかないですね」

片手シングルとは、ゴルフのハンディーキャップが5以下のことを指す。


「明日もゴルフなんだろ?」

「よくご存じで」

「君とも5年以上の付き合いだからね。山西課長には内緒にしとくよ」


「あざっす。ゴルフ場で“天空饅頭”買うんで、奥さんに持っていって

あげてください!」

関さんの奥さんは俺と同期で、同じ営業で事務をしていた綺麗な人だ。


「いつもすまないねえ。君と出張だと妻に言うと、喜ぶんだよ」

関さんも亭主の面子が立つようだ。結婚とはつくづく面倒なもんだ。


「とんでもないっす。ゴルフ場も喜んでもらえるんで一石二鳥ってやつです!」

「それにしても片手シングルはすごいよ。サラリーマンじゃ滅多にお目に

かかれない。ここ数年ですごい進歩しているよな?」

「それだけ投資しているってことですかね。うちは両親が家を建てたんで、

僕の借金はないっすよ。ちょっとあまちゃんかなとは思ってます」

「いいんじゃないか、それでも。うちは去年家を建てだろ。35年ローン

だよ、なんのために働くんだか・・・」


35年は長い、長すぎる。気の毒に超ロングローンに苦しんでいる日本の

サラリーマンは多いと聞く。

一方の俺はロングと聞くと、パー5のロングホールを思い浮かべるが

悩むことは滅多にない。


やっぱり日本経済はどこかおかしい。“金は金持ちのところに集まる“と

言うのは、その最たるものだ。


「ゴルフはあまりやってないんですか?」

「ああ、年4回の社内コンペだけ。それでも妻に白い目で見られるよ」

「ご愁傷様です。じゃあ“天空饅頭”は20個入りにしましょう!食べがい

があります!!」

「きりちゃんが羨ましいよ」

本心からの言葉のようで、俺は関さんが少し気の毒になった。


そんな話をしているうちに“伊豆のへそ”に14時前に着いた。

伊豆と聞くと冬でも暖かく感じるが、寒さは横浜とたいして変わらない。

ここから伊豆白波ゴルフまで1時間みれば十分なので、ここで1時間

ゆっくりできる。といっても男2人、昼食をとってコーヒーを飲みながら

世間話をするだけだ。


「伊豆白波ゴルフには何回かきてるの?」

「4、5回は行っていると思いますよ。冬は寒くて行きませんけどね。

でも芝とか手入れはされていて、いいコースですよ」

「横浜からだとちょっと遠いな。まあ、うちのシステムに決まったら

コンペやるよう課長に言ってよ」

「もちろんです!絶対やりますから、そのときは来てください。それより、

まず下見をしないといけないですよね。ゴルフの接待ということで担当の

勝又さんと一緒に」

「それがいいねえ。きりちゃん、よろしく頼むよ」

そう言って席を立ち、また舗装された山道を走り始めた。


くねくねと曲がる道路はハンドル操作が面倒だが、アスファルトのグレー

を除いて、空のブルーと木々のグリーンは気持ちがいい。

この際、道路も芝生と同じグリーンにした方が、個人的にはいいと思う

のだが・・。



ゴルフ場に着くと、駐車場の車は既にお客さんが帰宅したためか数台

くらいしか停まっていなかった。

大理石の立派な玄関を通りフロントに行くと、以前も応対してくれた

小泉さんが快く迎えてくれた。

こう言っちゃあ失礼だが、伊豆の山奥でこんな可愛い子に会えるとは

嬉しい限りだ。


「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

俺と関さんは、10人ほど入るパーティールームに案内された。

少しすると、今日初めて会うオーナーの江坂さんと総務課長の勝又さんが

入ってきた。オーナーは仏頂面で、いつもそうなのかご機嫌斜めのようだ。


「遠いところわざわざ有難うございます」勝又さんが恐縮して言った。

「とんでもない。こちらこそお忙しい中お時間をいただき有難うございます」

ここまでは儀礼的な挨拶だ。


「グリーンもフェアウェイも芝の状態は良さそうですね?」

ゴルフ場に来たら、ゴルフの話に限る。

「今年は雪が思ったより多かったので大変でしたよ。まずまずといった

ところですかね」

「またこちらでお世話になりたいものです」

江坂オーナーは、まだ一言も口を聞いてない。


「うちには何度か来られていると聞いたが?」やっと口を開いてくれた。

「はい、4、5回は来させてもらいました。“戦略的なコース”“グリーンの

アンジュレーションが難しい”というのが印象です」

「桐山さん、ゴルフがお上手らしいが、ハンディーはおいくつかな?」

「今J―S Y Sで“4.7“になっています。優しいコースばかりで良くなって

いますが・・」


「ほお、サラリーマンにしちゃあ、たいしたもんだ。仕事してんのか?」

こう聞かれるときは、話に乗って来た証拠だ。


「仕事しないんで、良く上司から怒られています。でもゴルフって楽しい

ですから」

江坂さんは急に真面目な顔をして話し始めた。


「俺はなあ〜、勝又から今回のシステムの入れ替えの話を聞いたとき、

反対したんだ。ポイントはお客様に喜んでもらえるシステムなのか、他に

2社の話を聞いたが良くわからん」


俺と関さんの顔を見て、一呼吸置いてからまた話し始めた。


「ゴルフのシステムを作る人は、ゴルフを知っていなきゃいかん。

それも100前後で回る人間は、ゴルフを知ってるとは言わん。

上級者になるとゴルフだけじゃなく、周りの景色やスタッフや施設、

いろんなものを観察する目を持ってると俺は考えている。お前さんに

わかるか?」

俺も関さんも頷いた。


「江坂オーナーのおっしゃる通りです。自分で言うのもなんですが、

ゴルフ場に行ったら私はロビーやレストラン、コースはもちろん練習場、

スタッフの対応、さらに駐車場や途中の看板まで見ます。しっかりして

いるゴルフ場というのは、それらがきちんとしています。実は、そこに

システムが必要なんです」

江坂さんの様子を伺いながら、話を続けても良いかと判断した。


「たいていのゴルフ場さんは、事務を効率よくするための単なるシステム

だと考えています。でもそれは違います。システムはそれら全てを一つに

纏めるものなんです。その点を我が社は最重要ポイントとして、システム

を作っています。ですから、それを価値として認めないゴルフ場さんには、

うちのシステムは役に立たないので入れない方がいいと思います」


俺はいうだけ言って、支配人をじっと見つめた。


「ハハハッ、桐山さん、あんた面白いこと言うねえ。じゃあ止めるかあ〜」

向かいの勝又さんや隣の関さんは落ち着かない様子だ。


「それに使うのは人間だ。そのシステムを使いこなせるかどうは、うちの社員にかかっている。

そうだろう?」


「それもオーナーのおっしゃる通りです。少なくとも私から見た御社の

スタッフの方は、このシステムを使いこなせるものと信じています。

また使いこなせるように、弊社で教育やサポートをさせて頂きます。

しっかり使いこなしていただくまでが、弊社のシステムですから」


「そこまで自信があるなら、きっといいシステムなんだろうな?」

「もちろんです。私はこのシステムを開発している、この関を信頼してます。

その関が作ったシステムですから大丈夫だと考えています!」

どうせハッタリで言うなら、最後まで貫かないと嘘になる。


江坂支配人は少し間を置いてから言った。

「分かった。但しうちも経営は楽じゃない。金額は値切らせてもらうよ。

いいかな?」

「もちろんです。費用対効果を評価いただいて、私も出来る限りのことは

します。が、私はしがない平社員ですので、あまりいじめないでやって

下さい」


江坂支配人は、大笑いしながら今度ゴルフをしようと言って出ていった。


「桐山さん、良く説得できましたねえ。実はさっきまで“システムなんて

入れん“って言ってたんですよ。どうやって断ろうかとそればかり考えて

ました」

勝又さんもほっとした様子で、俺は一つ貸しができたかなと思った。


そのあと、システムの最終提案の説明を関さんからしてもらった。

俺はコースの方を眺め、今なら3ホールくらいは行けるかなあとボーと考えていた。

最後に見積書を俺が説明し、勝又さんから来週中に返事をもらう約束をした。


帰りに、フロントにいた小泉さんにお土産コーナーを案内してもらい、

ゆかりちゃんとの公約通り、“天空饅頭12個入り”と関さんの奥様向けの

20個入りを購入して関さんに手渡した。

ちなみに領収書の宛名は、“天空システムズ株式会社”だ・・。



「きりちゃんとお客さんのところに行くと、いつもドキドキするよ。

今日の“入れなくていい”は今までで一番だね!」

帰りの車の中で、しきりに関さんは感心していた。


「でしょ!自分でも止まんなくなっちゃって、江坂さんの顔見てたら

このくらい言った方がいいかなって。でもウケタみたいで良かったっす」


「まあ、うまくいったんじゃないか。それにしても僕のこと信頼して

くれてるんだ?」

「決まってるじゃないですか、もちろんですよ!でもシステムのことは

ハッタリですけど・・」

「だろうねえ〜。いや、自信はあるんだよ、自信はね」“ハッタリ”とは

言ったが、システムが悪いはずはないのは本心だった。


「僕が思うに、きりちゃんはいい営業だと思うよ」

面と向かってそんなことを言われたのは初めてだ。


「お客さんのことをちゃんと考えてるし、開発チームのことだって気遣って

くれる。僕の部下もありがたいって言ってたよ」

「そんなこと関さんから言われちゃうと照れちゃいますよ!まあ、やるとき

はやるんです、俺って。ただ、回数が少ないだけで・・」

それが持ち味だと関さんは持ち上げてくれた。


こんな課長ならもう少し仕事もやる気が出るんだろうが、そのために

ゴルフの時間が減るのは困るから、山西課長で満足することにした。


翌日の土曜日、いつも行っている近所の小田原オートゴルフ練習場に朝7時に集合だ。

メンバーは一昨日の木曜日も一緒にラウンドした飯島さん、綾澤さん、

そしてここの練習場の社長の息子でレッスンプロをしている雨田プロ。

プロの名誉のために言うと苗字は“雨”だがバリバリの晴れ男だ。

月に一度はこのメンバーで勝負をしていて、始めてからもう7年になる。


飯島さんのH A N D Aのワンボックスで、御殿場の富士見カントリークラブ

へ向かった。雨田プロも含め4人の腕前はいい勝負だ。


ルールは至って簡単、帰りの晩飯をかけたストローク戦だ。

優勝者は無料で、以下2:3:5の割合で負担することになる。酒が入る

と高くなるが、俺を除いて誰も酒を飲まないから俺も遠慮して飲まない

ことにしている。


移動の道中は、たいていクラブやスイング、プロの試合の論評など決まって

いるが、この時間は新しい情報が入ったりして楽しい。


ゴルフ場に着くと各自勝手にウォーミンアップを始めて、スタート10分前

にはティーグランド付近に自然と集まる。

「今日は誰からだっけ?」いつも前回優勝者が1番と決めてある。

「雨田プロからだよ」綾沢さんは記憶力がいい。


身長165cmのずんぐりした体型だが、スイングは滑らかで力強い。

2番目は飯島さん、2段モーションのような変則スイングだがショットの

安定性は抜群だ。3番目は俺の番だ。自分で言うのも何だが、身長182cm

の長身を活かしたゆったりスイングで、飛ばす打ち方を雨田プロに教わった。

最後に綾沢さんでサウスポー、本人は嫌がっているが左利きはいつ見ても格好いい。


ティーショットは4人ともフェアウェイをキープ。いつも世間話をしながら

のラウンドだが、プレイ自体は緊張感があって俺は何よりも好きだ。


午前のハーフは、俺が36のパープレイ、プロと飯島さんが37、綾澤さんが

38。4人が2打差の中にいる混戦で、午後のプレイ次第でどうなるか分からない。


午後は出だしのホールから波乱含みだ。俺が右の林に打ち込み、このホール

ボギー。続く11番のロングホールでは、珍しく飯島さんがよらず入らずのボギー。

13番のショートでは、プロがバンカーに捕まりピンに寄せきれずボギー。


17番を終わって、俺と飯島さんが1オーバー、雨田プロと綾沢さんが

2オーバー。綾沢さんが後半ここまで粘っている。

最終ホールは430ヤードと距離のあるミドルホール。気を抜けば簡単に

ボギーも出るホールだ。


雨田プロは華麗なスイングで260ヤードフェアウェイ真ん中。

俺と飯島さんは250ヤード右サイド。綾沢さんは240ヤード左サイド。

ピンはグリーンの左サイドの手前だから、俺の位置からは花道も使えて狙いやすい。


綾沢さんの2打目は、グリーンエッジで止まったがパーはほぼ確実だ。

飯島さんはピンハイ5m、俺はピン手前3mにナイスオン。

絶好のバーディーチャンスだ。雨田プロはさすがプロというショットでピン横2m。


ここからドラマが始まる。

何と綾沢さんのアプローチはなんと直接カップイン、ナイスリカバリー

ショットだ!

続くパットの名手飯島さんは若干下のフックライン、強気のパットはカップ

の縁をかすめて1mオーバー。


最もラインのいい俺のパットは、上りの真っ直ぐ。インパクトの瞬間緩んだ、直後届かないことが

予想できた。ボールは縁で止まっている。こういう部分が俺の甘いところだ。


スコアーはこの時点で、4人が1オーバーで並んでいる。あとは雨田プロの

パットを残すのみだ。

「プロ、今日はまーるく納めようかあ〜」飯島さんがプロにプレッシャーをかける。

「そうですねえ、そうしましょうかあ!?」プロも心得ている。


その割には、ピンを挟んだ逆方向からもラインを読んで、簡単にバーディーを

取ってしまうあたりがプロだ。


結局、晩飯はアマチュア3人でプロをご馳走する羽目になった。

まあ、ま〜るく収まった。

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