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ないよ


ここは世紀末。核戦争によって荒廃した弱肉強食の世界。


略奪、強奪、SEXしかない世界。


そんな荒れ果てた土地に彼女はいた。


彼女はこの地を旅して、食料と水を求めてようやく村へと着いたのだ。



「ふぅ、なんとか着いたわね・・・」



「オラッ!てめぇ等ッ!皆殺しだッ!」


「ひゃっはーーーーッ!」



だがそのには町を駆け回るバイクに乗った男たちが武器を持ち暴れまわっていた。


核戦争後の秩序の乱れたこの世界では略奪がそこら中で行われている。



「やめてくだせぇ!オラたちの食料がッ!」


「うるせぇ!抵抗するならぶっ殺すぞッ!」



初老の男が荒くれもの達に抗議の声を上げる。



「その食料を持っていかれたら村の者たちが死んじまうっ!どうかっ!頼みますっ!」



バイクにベタベタと縋りつくジジイに殺意が芽生えたのだろう。荒くれものの一人が手に持った鉄球をじじい目掛けて振り回す。



「ぎゃぁぁぁぁっ!」



痛快なるヘッドショット。荒くれものたちからは歓声が上がる。



「ひゃーーーはっはっはッ!逆らうやつはみんなこうだぞッ!」



頭を砕かれたじじいはその場に倒れ、地面に血が広がっていく。


村人達はその光景に怯え、もはや抵抗する者はいなかった。




「ああんっ?てめぇなんだ?道のまん中に突っ立って?邪魔だッ!殺されてぇのかッ!」


「どうした?ん?女?」



そこに立っていたのはこんな世界には相応しくないであろう恰好をしたセーラー服姿の少女だった。





私は久遠静。「はっ?(威圧)」系女子だ。


今まで大体のことはこの「はっ?(威圧)」で片づけてきた。


私のこの「はっ?(威圧)」を使えば大体の人間は恐れおののくのだ。


それほどの才能にあふれているのだ私。




・・・なんていうのは嘘だ。


いや、「はっ?(威圧)」系女子と言うのは本当だ。


私はこの世界の住人ではなく、転生者だ。


「はっ?(威圧)」はこの世界に転生してきた際に女神様から頂いた特典だ。


9連トラック玉突き衝突事故に巻き込まれた私は死後の世界で女神様と出会った。


女神様は不慮すぎる事故で死んだ私をもう一度生き返らせてくれるといった。


その際に特典として一つ特殊能力を授けてもらえるとのことだ。


私は小躍りして喜んだ。


未練があるかと言われれば結構微妙だった。家族仲は悪くなったが正直めっちゃ学校でいじめられてた。


顔面偏差値は良いほうだと思うのだが、周りに合わせることができず空気が読めないとクラスでは評判だった。


空気が読めないとクラスの女子からは嫌われていじめられるのだ。死ねばいいのに。


あいつらは弱者の心がわからない人間の屑共だった。未練などもはや無い。死んでせいせいするぜ。死んだのは私だけれど。


そして女神様から授かった特典は「はっ?(威圧)」だった。


最初は意味が分からなかったが、女神様曰く、私がこうやって威嚇するだけで相手は恐れおののき、私に恐怖するのだとか。


・・・あんまりすごそうじゃない能力にがっかりしたが、転生先が剣や魔法のファンタージ世界ではないと聞き現代っ子相手だったらうまく立ち回れば俺つえーができるなと思い納得した。


それに今度は私がクラスでいじめる側になるのだ。そのことにテンション爆上げ(笑)今度は逆にいじめて抜いてぶっ殺してやる(誓い)


さて、そんな素晴らしい特典を頂いたわたしなのだが・・・その転生先はと言うと・・・





「女神様ーーーッ!転生先間違ってますよーーーーッ!ここじゃありませーーーーんッ!ここじゃ特典なんてクソの役にも立ちませーーーーんッ!」



わたしは天に目掛けて精一杯叫び続けていた。しかし帰ってくるのは鳥の糞ばかり。クソが。


なんと女神様から転生された場所は荒れ果てた荒野のど真ん中。周りには草木一本生えていない。草生える。


剣や魔法のファンタジー世界じゃないと言われて勝手に現代的な予想していたのだが、マッ〇マックス的な世界も剣や魔法のファンタージ世界じゃなかったんだ。草生える。



「おらッ!クソ女神ッ!ちゃんと仕事しろッ!こんな何もない所に置きやがってッ!」


私は一日中、泣いて、笑って、また泣いて、笑い合って、愛し合って、豊かな暮らしを得て、しかし死期を悟って、神へ願い、そして祈った。


しかし女神様からの返答は一言もなかった。


「このクソがぁぁぁぁぁぁぁぁ」





結局女神様クソかの返事もなく。荒れ果てた荒野の中、水も食料もなく、絶望の淵をさ迷っていた。


なんとか村を発見した。ほっと一息。


じじいの頭がスイカみたいにはじけ飛んでる。


ボディービルダーみたいな彼らはバイクに乗りながら鉄球とか振り回している。


バイクに鎖で繋がれた男が引きずられている。


これは村じゃない。そう自分に言い聞かせていた。



「ひゃっはーーーーーッ」


「殺せッ!殺せッ!殺せッ!」


「女子供も皆殺しだぁぁぁぁぁッ!」



ただのしがない学生でしかなく、いじめられてたから頭も悪く碌な趣味も特技もない私には目の前で起こっているボディービルダー達の殺戮ショーをなんとか乗り切るだけの自信は全くないと言っていいでしょう。


終わりだ。


異世界転生をして特典まで貰ったけれど。もう終わりだ。どう考えても無理だもん。


そういう瞬間って意味不明に突然起こる。9連トラック玉突き事故とかそうだった。


私はまた自分の死期を悟ったのだ。


目を瞑る。


異世界転生死亡RTA最速を目指して。


でも死ぬときはせめて苦しまずに殺してください。前の時は苦しかったぁ。だからそれだけはお願いします。


・・・お願いします。



「おいおい、誰だかわかんねぇけどなんだこの女?急に目を瞑りやがったぞ?」


「でも意外といい女じゃないっすか?」


「おっ、そうだな・・・じゃあ捕まえるか!」



しまった!顔面偏差値だけはいい私は殺されず捕まえられる可能性が高いことを忘れていた!


クラスのブスどもの劣等感まみれの嫉妬心からくるいじめのせいで卑屈になっていたのか!


そうだ捕まったら犯されてしまうじゃないか!美人の宿命クソッ!可憐な少女の運命ふぁっく!



「そうっすね。この女は捕まえて拷問してやりましょうッ!」


「そうだな!犯すのも飽きたし拷問してやるかッ!」


「鉄の中で火あぶりにしても人間中々死なないらしいですぜ!」


「箱の中で串刺しにしてもある程度生きれるらしいなっ!」


「「「ひゃっはっはっはっは!」」」



私は


耳を


疑った。


甘かった。


犯すならまだしも


拷問って


畜生。


女捕まえたら犯せよクソボケ。犯すのに飽きたってこの野郎。それでも男か。ふざけんなよ世紀末。


私の最悪の想定の100倍酷い会話の中で足が残像を帯びるくらいバインバインにふるえている。


き、起死回生の一手!なにか起死回生の出来事よッ!起これッ!


「オラァッ!」


金属バットで膝から激痛。そして捕縛。


「捕まえましたぜ兄貴!」


「よっしゃ連れてけ!」


連れてかれた。



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