最終話 天才が考えたワクチン
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僕は先生の話をナユタン星人をヘッドホンで聴きながら視界に入れていた。
耳は少し忙しいが目は暇だった。
全然聞かれていない話に油断して口をパクパク動かす先生はそれなりに面白い。
俺のヘッドホンにはノイズキャンセラー機能は無い。
だから先生の話はそれなりに聞こえている。
温かい味噌汁をおかわりしながら好き勝手話す先生は楽しそうだ。
先生もナユタン星人が好きなのだ。
ヘッドホンからの音漏れを聞いてつい機嫌が良くなってしまうのだろう。
太陽デスコは山頂だ。
彗星ハネムーンは天頂だ。
エイリアンエイリアンは絶頂だ。
ナユタン星人を聞けばいつでも宇宙に行ける。
眩しすぎる太陽を影を好む月を青く存在する地球を視ることが出来る。
最近新型コロナウイルスが地球で流行っているそうだ。
数年以内に体制と対策が確立されて沈静化するだろう。
温かい汁物を食べてうれしそうな先生。
ナユタン星人を聞いて飛んでしまう僕。
温かい汁物を気持ちいい音楽を狙って滅ぼす。
そんなウイルスもワクチンも未だも開発される気配がない。
人類が滅びるまで彼らは側にいてくれる。
沈静化することは無いだろう。
教科書をめくれば実際に起きた数々の現実のディストピア。
ノートに落書きしたあの頃の僕が考えた理想のユートピア。
温かい汁物を食べてうれしそうな先生。
ナユタン星人を聞いて飛んでしまう僕。
麺と汁が主役の温かい汁物ランドに簡単に入場する先生。
人を駄目にするはずのエンターテイメントに救われる僕。
不安の反対は安心だ。
安心は好きな具材の温かいスープだ。
安心は飛んでしまうミュージックだ。