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受け継がれるバトン  作者: 伊達サキ
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そして数日後、めったに鳴らない家電に小山先生からの留守電メッセージがあった。「直ぐに来医するように」とだけ入っていたが心当たりはなかった。「なんだろう?急に?」検査結果を聞きにいくのはサボっているがそれかな?それとも何かのインフルエンザにでもかかっていたのかな…?と他人事のように受け流してはいたがジャケットをはおり小山医院に向かった。ミホは幼い頃、早くに母親をなくしていて今は父との二人暮らしだった。父の仕事は交代制で夜勤も多くふだんでもなかなか顔を会わさない。しかも、昔人間で、無口で必要なことしかしゃべらない。「まぁ、いいか」余計な心配をかけることもないだろう。取り敢えず一人で行くことにした。今日が土曜日のせいか午後の待ち合い室はひっそりとしていた。ほんの二、三分で呼ばれ診察室に入った。少し不安気なミホに気付いてか小山先生はゆっくりとそして優しく話し出した。「今日、特別寒いね。体調はどうかな?」いつもの口調にホッとした。そして自分から何かあったのかと尋ねた。「実は先日の血液検査で少々ひっかかっちゃってね。念のため大きい病院でもう一度詳しく調べてもらった方が良いと思ってね。ほら、ミホちゃんってスポーツ特待生で大学も決まってる将来有望選手だからね。」


と、言って一通の紹介状を渡された。たちの悪いインフルか何かかと思っていたので少々複雑な気持ちになった。そして最後に一言…「お父さんににもぜひ付き添ってもらってくださいね。しっかり屋さんといえど、ミホちゃんはまだ未成年だからね…。」まあ、無理はない。都合をつけて行くしかないか…と腹をくくった。父には余計な心配をかけたくなかったので詳しい事は話さなかった。そして、三日後、ミホたちはY市立総合病院の循環器科を受診するために来院していた。てっきり整形外科かスポーツ外科かと思っていたので心づもりもなく戸惑っているうちにひととおりの問診から始まりへたくそなナースの痛い採血に顔をゆがめたり、訳のわからない機械の中に入らされて『動くな』と理不尽な命令口調の検査官にイラつきながら、いくつかの検査を受けさされた。全く「された」のオンパレードだ。こちらの意思なとあったものじゃない。その上、二時間ほどロビーで待たされた。ここではまだケータイが使えるので長い時間をつぶすのには救いだったが父は、隣の椅子でうたた寝していた。きっと夜勤の疲れたからだろう。そうしているうちにやっと『ピンポーン』と間の抜けた呼び出しパネルに自分に今日、名前代わりに付けられた番号が表示された。


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