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七話
目をつぶり。
耳をふさぎ。
鼻をつまみ。
口を閉じる。
全身の筋肉が弛緩し、体がバターの様になる。
体の形が無くなり、新しい繊維にしっとりと染みこんでいく。
目を開かなくとも、空間を漂う魂を感じることができる。
耳を欹てなくても、遠くの足音が聞こえる。
鼻を効かさずとも、吉兆が予知できる。
口を開かなくても、心が満たされる。
鼻先に3つの魂が漂う。
手を伸ばさず、反射で魂を鷲掴みにする。
「ファンタム」耳元で囁かれる。
眼前に雪を被る山脈が現れる、まさに青天の霹靂。
空中を移動している。高速で。
オペレーターの声の声が聞こえる。
『目的のデネブ帝国、補給基地まであと10km、山脈を盾にして進め。』
耳をつんざく破裂音がバリバリと空気を振動させる。
「ファンタムエンゲージ。」
『200km先の内陸からの魔導砲射撃だ、撃墜されたらハエ以下だ。検討を祈る。』