12話
補給基地を確保すれば、デネブ帝国が山脈を迂回し、アルファ国に侵入することが困難になる。
アルファ国による、山脈を超えての奇襲はデネブ帝国も想定していなかっただろう。
ファンタムは滑空している。手元のチェーンソーを起動する。
チェーンソーが唸りを上げる。補給基地の建屋に突っ込む。
土煙が登る。
補給基地はレールガンの着弾により、魔導具が不調となり、混乱している。
ファンタムが突っ込んだ建屋には、デネブ帝国の魔導士が3人残っている。
魔導士達は混乱し、ファンタムが敵か味方か瞬時に判断できない。
魔導士の1人が魔具を掲げて唱える。
「インスペクション!!」
何も起きない、魔具の扱いに不慣れなようである、声からして若い。
ファンタムと魔導士の目が合う。ファンタムは魔導士に向かい歩いていく。
チェーンソーが唸り続けている。
魔導士達はファンタムを観察する。
黒いロングヘア、見たことのない洋服、靴、被り物。
胸間から顔を出す犬、そして胸のアルファ国の紋章が目に入る。
次の瞬間、ファンタムが踏み込み魔導士3人の首が飛んだ。
魔導士達は魔具が使用できず、無防備なことを思い出す前に死んだだろう。
ロングレンジの砲手の通信が入る。
「ファンタムがやったぜ!現代のウィリアムウォレスってとこだな、奪還作戦最初の戦果だ!!」
ファンタムがオペレータに通信する。
「補給基地の魔導士は魔具が使えない、降伏勧告を頼む。」
『デネブ帝国に告ぐ、現時点より本補給基地はアルファ国占領下となる。武力の如何に関わらず、占領を受け入れる者には投降の権利を与える!!』