俺が辞めた途端に勇者パーティーが全滅したんだが。
「君には今日限りでこのパーティーを離脱してもらう。」
「は?」
今日の冒険を終え、夕飯を食べ終わった直後、それは唐突に語られた。
当然最初は受け入れることができなかったが、それと同時に納得している自分もいた。
(最近はほぼ荷物持ちだったしな…)
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勇者。それは世界を救うもの。また、変えていくもの。そしてそれを支え、共に戦うものが4人選ばれる。
その方法は代々、勇者が勇者として活動を開始する3日前に王都で行われる大きな祭りの最後に上がる大花火で決められる。
色とりどりに打ち上げられたそれは、最後に大爆発を起こし、3色に分裂する。そして4人の人間に降り注ぐのだ。
基本的に勇者のパーティーメンバーには同年代が多い。それは恐らく花火に組み込まれた勇者の供選定の魔道具による、勇者より先に寿命を迎えないように、また弱すぎたりしないようにと言うことなのだろう。
光が降り注ぐ。その幻想的な風景には1つオリジナルスキルを付与するという特別なものがある。そして職業もそこで決定されるのだ。
青い光は当時駆け出し冒険者だった俺、ソーヤの元へ。
黄色い光は兵士なりたてのでたさあった少年、ファルクの元へ。
赤い光は魔道学校の生徒会長をしていた少女、レンカの元へ。
白い光は協会の見習い巫女をしていた少女、セイレの元へ。
それぞれ職業はサポーター、重戦士、魔法使い、治癒術士であった。
これに勇者を加えると、かなりバランスのいいパーティーであったと言えよう。
俺のスキルは[分配&収束]+[超成長促進]
俺が元々持っていたスキルは
[分配&収束]だがそれはパッシブスキルらしく、操作すら出来ないし、いまいち使い方が分からない。そして新しく授かったのが、[超成長促進]である。
これは使いやすそうだ。
ファルクは[硬化]+[移動補助]
硬化は文字のとおりで、移動補助は思い装備を着てても関係なく動けるらしい。
レンカは[全魔法適性]+[高速詠唱]
まぁ、文字の通りだが、元々生徒会長だっただけあって、元々それなりに強かった。
セイレは[治癒魔法]+[治癒力上昇]
治癒魔法はその通りで、治癒力上昇はそれがあると普通の治癒魔法の効力が1段階あがる。
つまりファストヒールを唱えるとヒールの効力になる。彼女ならかなり酷い怪我でも難なく直せてしまうのだ。
そして勇者であるシューティは
[超光魔法]と[高速移動]と[勇者]
光魔法の威力が凄い。凄く早い。
そして[勇者]のスキルは、全ステータスが2倍になる。
スキがなさすぎる。
こんなメンバーで魔王が復活したこの世界を旅立ったのだった。
このパーティー戦闘スタイルは、勇者と重戦士の2人が前衛、魔法使いと治癒術師の2人が後衛の非常にバランスのとれた戦い方だ。
そして僕は何もしていない。
そう、何もすることがないのだ。
一応サポーターという職種故、ファストヒールや、初級魔法位なら使えるし、近接戦も少しくらいなら出来るが、上位互換がいるので、ほぼいる意味がないのだ。
それでも最初の頃はよかった。遊撃のような立ち回りで、まだ魔物との戦いに慣れない勇者達の手助けが出来たから。
だが段々と時が経つにつれ、皆戦闘になれ、半ば守られている様な感じで見ているだけになってきた。
当然皆何もしない俺に少しづつ不満を持ちはじめる。
しかし俺は超成長促進もあるのだし、そのうち追いつけるだろうと思っていた。が、何故か差は開く一方だった…
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「今は大丈夫だが、これからの戦いはきっと今以上に厳しくなる。これ以上君を守りながら戦うのは、君も、そして僕達も危険に晒されてしまうだろう。だから、すまないが理解してくれ。」
本音はきっと自分達の為だろう。だが、それが俺にも最良に思えた。
「わかった。俺はここでリタイアするよ」
「本当にすまない。ではこれは破棄させてもらうよ。」
そう言ってシューティは俺達の名前が書かれた懐かしい紙を取り出した。
それはパーティー申請書。
それに名前を書いて魔力を込める事で初めてパーティーとして認められるのだ。
そしてそれをシューティは破く。
途端に体が軽くなった気がした。
知らぬ間に気持ちが滅入っていたのだろうか…
そして次の日、勇者は戦場に旅立っていった。
1人になった俺は冒険者ギルドに向
かい、軽く依頼を受ける。たまには初心に帰って森でゴブリン退治だ。
ドーン!!
「は?」
俺の剣が当たった瞬間、いや当たる前にゴブリンは弾けとんだ。
その後にあったものも軒並み抉られている。意味不明な事態にその後もとりあえずゴブリンなどを蹂躙し、依頼を済ませてから街に戻った俺に届いたのはまたもや信じられない情報だった。
〝勇者パーティーが全滅した!!〟
このニュースが今街中、いや国中を駆け巡っているらしい。
俺は不思議でならなかった。昨日までは全然戦えていた。むしろ俺を守りながら戦うなど、余裕があったくらいだ。
そして今日向かった先も今までなら別に負けるようなところではない。
なんなら負って擦り傷位のはずだ。
俺は自分の持っていたスキルの凄さ、恐ろしさに全く気付かなかった。
その後、なんとか生き残っていた勇者パーティーが謎の弱体化をしたという噂を度々聞きながら、謎の超強化された肉体とともにのんびりと 、冒険者生活を続けつつ暮らしていくのだった。
その数年後前人未到のSSランクになるとはその時の俺は分かるはずもなかった。