梨
「ゆーちゃんただいまー」
彼は玄関を開けて彼女だろう名前を呼ぶ。そして「ちょっと待っててね。」と言って先に入っていった。数分たって戻ってきた時には「ユーチャン」も一緒だった。ユーチャンは綺麗な人だった。
きっと先程の数分で理由を話してくれたのだろう、彼女も笑顔で迎え入れてくれた。
「座ってて。」
彼女は私をリビングに通したあと、席を外した。リビング、というより居間、といったほうがしくっくりきた。
テーブルを挟んで彼と二人きりになると、さっきまではなかった気まずさを感じた。
「やっぱり…彼女さん嫌ですよね…。」
顔を上げられずに呟く私に「んー、どうだろね?」と彼は茶化した。
「おまたせぇ。」
戻ってきた彼女がもっていたのはガラスの器だった。気まずそうに顔を上げる私に、彼女は微笑んだ。
「梨、食べれる?」
「はい!」
彼は「いいねー」といいながらフォークを取り、一つを私に渡してくれた。
一口食べたら口いっぱいに優しい甘さが広がった。そういえば今日何にも飲み食いしていなかったと思いだし、急にお腹がすいてきた。
「甘…。」
「どう?美味しい?」
「はい!すごく!今まで食べた中で一番甘いかも…。」
「それはよかった!」
と彼女は喜んだ。
「この梨ね、うちで作ったんだよね。」
と彼は喜んでいる彼女を指差して言う。
「梨って作れるんですか!?」
「そうなの、これ!」
ベランダのドアを開け彼女が指さす先には大きな木があった。そしてその周りにも沢山の植物が生きていた。