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シオン  作者: 東海林 コウ
2/5

金木犀(2)

どれぐらいたったのだろう、目が覚めた私は辺りを見渡す。


ふわりと金木犀の香りがする。思い出して、もう一度辺りを見渡して青ざめた。


「ここ、どこ。」


そこは一面の野原だった。

そうだ、私はあの家から逃げようとしてベランダから飛び降りたんだ。そんなに高くないはずなのに。





もしかして、死んだ?




わたしの家の前は味気のない住宅街で、野原ではなくコンクリートだ。


そうか、いくら高くないと言ってもコンクリートだったら………。



頭をかかえて泣きそうになる。なんて馬鹿なことをしたのだろう、と後悔が押し寄せる。



「なにしてるの?」



声がする方を見上げると、1人の青年がいた。



「ここらへんの子じゃないよね、その制服見たことない。どこから来たの?そこ、立ち入り禁止だよ。」



私は意外にも人がいたことに安心し、縋るように青年に近寄る。


「ねえ!!あなたはここの人なの?ここはどこ??私、気づいたらここにいて、もしかしてここって天国??私死んだの??」


彼はきょとんとしてから吹き出した。


「寝ぼけてるの?君おもしろいね。ここは静岡の天竜市だよ、天国じゃないよ、大丈夫。」


肩を震わせながらも優しく説明をしてくれた。



「この辺、夜になると街頭ないから明るいうちに帰った方がいいよ。そこにバス停あるから送っていこうか?」


なにも答えない私に、彼はハッとして言葉を続ける。


「ごめん、正体不明の男にそんなこと言われても怪しいよね。俺は正義まさよし。ここに住んで22年。血液型はA型。趣味はカメラ。好きな食べ物は…………ってなに?変なこと言った?」


顔をしかめた私に不思議そうに尋ねる。


「いや、父親と同じ名前。」


「…仲悪いの?」


「仲悪いとかじゃなくて、嫌い。あいつのせいでお母さん出てったから。」


会ったばかりの人になに話してるんだろう、とハッとして誤魔化す言葉をさがすが見つからない。しかし彼は「そうなんだ。」と優しく笑っただけで何も聞いてこなかった。



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