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プロローグ

 

「パンパカパーン! おめでとう! 貴方は私が神として担当する記念すべき一人目の転生者に選ばれたから、特別に、何でも好きなチート能力持ちで転生させてあげる事になったわよ! 嬉しいでしょ? はい、拍手。パチパチパチ」


 目の前にケツ丸出しの痴女紛いの格好をした、頭の可笑しい金髪の女が現れた。貴方ならどうする?

 

 A.襲う

 B.襲った後、叱る

 C.通報する


 因みに俺はCだ。


「警察は……っと、あれ?」


 警察に連絡しようと携帯を取り出したは良いが、何故かいくらボタンを押しても電源が入らない。

 それに、今更だけど此処は何処だ? 目の前に知能が全部胸に吸いとられたような痴女が居るだけで、他には何も無い。

 確か俺はバイトに行こうとして、何時もの道を歩いていて、そして……どうしたんだ?


「あ、あれ? 可笑しいわね、人間ってチート能力貰って転生って事になったら、喜ぶ物なんじゃないの?」


 俺が特に反応しないで居ると、痴女は慌てて何処からか本を取り出して、首を傾げながらページを捲り始めた。因みに本のタイトルは『チートで異世界無双~人生負け組だった俺が勝ち組になるまでの365日~』ラノベだ。その格好もラノベの影響を受けてるのだろうか。


「ラノベは創作だからあまり参考にはならないと思うぞ」

「えっ、そうなの!?」


 痴女はガックリといった様子で肩を落とす。

 ……少し彼女の頭の出来に不安を覚えるが、色々と状況を整理する為に、少し質問してみるか。


「ところで、少し聞きたいんだが、お前は誰だ?」

「私? 私はセレニア。まだ新米だけど一応神様よ。って、最初に神って言ったような気がするけど」

「ぶっちゃけ、ほとんど聞い無かったな」

「酷っ!?」


 神様、成る程。

 それなら、この意味不明なロケットおっぱいも納得だ。こんなもの三次元にあって良いものでは無いからな、うむうむ。


「何か、寒気が……」

「気のせいだ。次の質問だが、転生ということは俺は死んだのか? 正直、死の瞬間を良く覚えていないんだが……」

「ええ、確かに死んだわよ。看板が頭に落下しそうになってた子供を突き飛ばして庇った結果、頭上から落ちてきた看板が首に直撃して、こう……」

「いや、それ以上は言わないでくれ。想像しただけで吐き気がしてくる」


 どうやら俺は想像以上に悲惨な死に方をしたようだ。忘れてて良かった。これで記憶がはっきりしてたら絶対に発狂する自信があるぞ。


「もう質問は良い? ちょっと時間が押してるから早く終わらせたいんだけど」

「ん? ああ、後一つだけ。俺が死んだ後、向こうはどうなってる?」

「それなら安心して良いわ。転生する人間は、生きていた証を全部抹消されるから」

「そうか。なら良かった」


 彼女の言葉に安堵の息を漏らす。

 親父とお袋は、一人息子だった俺の事を溺愛していた。その息子が死んだと分かったら、二人とも悲しむだろう。だが、俺が生きた証が消えるというのなら、二人とも悲しい思いをしなずに済む。二人の中から俺の思い出が消えると言うのは少し寂しい気もするが、二人の為にも、俺の存在が抹消されるのは有り難かった。


「じゃあ、早速チートの内容を決めちゃって良いかしら」


 そう言って、彼女が何処からか取り出したのは、何かのスイッチと分厚い本だ。本には転生のマニュアルと書いてある。

 神様がマニュアルを読むってどうなんだろうか。少し、心配になってきた。


「えっと、まず始めに言っておくけど、転生特典のチートは、あまり強力なものを選ばせない為に、ランダムで選ぶ事になってるわ。それと、特典を使えるのは10歳からね。それまでの間は普通の人間として、異世界に慣れる為の期間になってるから」


 その言葉と同時に、彼女の上にパネルが現れる。

 成る程、スイッチを押すとパネルが回転して、もう一度押すと止まる仕組みか。


「次に、転生させたい対象を指定して、スイッチを押すんだけど、もう押しても良いかしら」

「ああ」


 彼女は早く押したくて堪らないのか、子供のように目をキラキラと輝かせながら了承を求めて来たので、俺は頷いてGOサインを出す。 

 正直、二度目の人生を貰えるってだけで有り難いからな。チートとか何でも良い。


「それじゃあ、さっそく回すわよ! ルーレットスタート!」


 彼女が勢いよくボタンを押すとルーレットが回り出す。

 その時、何処からかドラムロールの音が聞こえてきたので、何処から聞こえるのか音源を探ってみたら、彼女の口からだった。

 今更だが、これ迄の言動から、これに転生の全てを任せても良いのか不安になる。


「ダララララララ、ダンッ! と言うわけで、貴方のチートは錬金術に決まりました。はい、拍手」


 広い空間に痴女の乾いた拍手が響く。

 錬金術か。錬金術って創作だと作品によってやれる事が違うからなぁ。生産主体の錬金術か戦闘主体の錬金術、どっちだろうか。


「何で一緒に拍手してくれないのよ! これじゃあ私、可愛そうな子みたいじゃない!」


 一人で虚しく拍手していた彼女が、涙目になりながら、制服の胸元を掴んで揺すってくる。

 仕方ないので、適当に二回だけ手を叩いてやった。


「ところで一つ聞きたいんだが……」

「あれ、私の言葉無視!? いやまあ、拍手してくれたから良いんだけど……それで、何?」

「この錬金術ってどういうものだ?」

「あぁ、それは、えっと……」


 彼女は錬金術がどういうものか覚えて居なかったのか、俺の質問に視線を宙にさ迷わせた後、再びマニュアルを取り出して、読み始めた。

 その姿は何とも情けなく、本当にコイツに転生を任せても良いのか、先ほど感じた不安が更に増すばかりだ。


「あっ、あったわ。えっと、その……簡単に説明すると特殊な魔方陣の上に材料を乗っけて、何か色々やると新しいアイテムが作れるみたいよ! 詳しくは、転生したら勝手に知識が頭に入るみたいだから向こうで確認してちょうだい」


 彼女は、マニュアルに目を通しながらそう言うと、一仕事やりました、みたいな感じで満足気に息を吐いて額の汗を拭う。

 全然説明になってない気もするが……まぁ、コイツから詳細を確認するより転生してから自分で確認する方が正確か。


「さて、それじゃあチートも決まったことだし、早速転生させるわよ」

「まてまて。その前に少しは向こうの世界について説明してくれ」


 流石に、何の情報も無しにいきなり転生させられるのも困るので、何やら聞き慣れない言語で呪文のようなものを唱え始めていた彼女を慌てて止める。

 彼女は頬を膨らませて、多少不満気だったが、それでも呪文を唱えるのを止めてくれた。


「もうっ、我が儘ねぇ。まぁ、でも良いわ。私は神様だし人間のお願いは聞いてあげないとね。で、何が聞きたいの?」

「向こうの世界はどういう世界なんだ?」

「ファンタジーよ!」

「いや、それは何となく分かってるからもっと詳しく」

「詳しく? えっと……凄いファンタジーよ!」

「あ、はい。もういいです。分かりました」


 頭のネジが外れてそうなコイツに詳しい話を聞こうとしたのが間違いだった。

 仕方ない。最後に一つだけ、一番大切な事だけ聞いてとっとと転生するか。


「もういい?」

「待った。最後に一つだけ。転生するときに性別が変わったりなんて事は無いよな?」

「それなら大丈夫よ。基本的には転生しても性別は変わらないわ。まあ、見習いの神様なら時々とんでもない失敗をやらかして、性別が変わっちゃったりなんて事もあるけど、試験に合格して見習いを卒業した私が、そんな間違いするわけないじゃない。安心して良いわよ」


 大きな胸を張りながら、自信満々にそう断言した彼女の言葉に、俺は内心ガッツポーズをする。

 親父とお袋や友人等の、地球に残してきた親しい人達について憂う必要が無くなった今、俺に残された未練はただ一つ。


 それは、童貞を捨てられなかった事だ。


 大学生になり三年。周りの奴らが彼女を作ってズッコンバッコンやったり、風俗に行って童貞を捨てたりしてるなか、そんな相手も風俗に行く勇気も無かった俺は、周りの煽りにもめげず、未だに童貞を貫いていた。

 そして、結局童貞のまま死んでしまった。

 一度男として産まれたからには、童貞は何としても捨てたい。これは、新しい生を送る上での、最大の目標だ。

 その為には、転生して性別が変わってしまうのは何としても避けたかった。


「それじゃあ、始めちゃって良いかしら」

「ああ、やってくれ」

「行くわよ。----」


 そう言って、彼女は再び先ほどの呪文の詠唱を再開する。

 この頭の緩そうな女の言うことだから、少しだけ心配なのだが、神様になる試験は突破してると言ってるのだし、そんな大きな失敗をする事は無いだろう。

 後は、せめて彼女が出来るくらいの容姿になってくれる事を祈るばかりだ。


「----っと。準備完了。それじゃ、貴方の次の人生が良きものであることを祈ってるわ」


 その言葉と同時に俺の意識が遠退いて行く。

 そこで、ふと、この彼女に聞いていなかった事を思い出す。


「なぁ、最後に。あんたの名前は何だ?」


 それは、俺に新たな人生を与えてくれた、この女の名前だ。意識が消える前に思い出せて良かった。


「私の名前は、セレニアよ。気軽にセレニア様って呼んでくれても良いわ」

「ありがとな、セレニア様」

「ふふん、どういたしまして……って、あれ? 私ってもうとっくに自分の名前名乗って無かったっけ?」


 俺は、最後に女神に感謝の言葉を伝え、意識を完全に失った。





 そして、新たな世界で俺の意識は再び覚醒する。




「オギャア、オギャア」

「おめでとうございます。可愛い女の子ですよ」


 その瞬間、俺の目標に、新たにあのクソ女神をぶん殴るという項目が追加された。








 

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