雨に濡れた果実
僕は彼女に恋をした。
不思議な雰囲気を漂わせ、綺麗で艶のある黒い髪と、その透き通るような白い肌。
耳を震わせるその声に、何度僕は心奪われただろう。
……でも、彼女には好きな男がいた。
彼女は、僕の親友の事が好きだった。
そしてある日、僕に相談を持ち掛けてきた。
話を聞くたびに、頬を赤らめて恥ずかしそうにする彼女。
僕は嫉妬と哀しみで狂いそうだった。
でも、笑顔で僕は応援するよと。
そう言う事しか出来なかった。
梅雨の季節に入り、毎日誰かが涙を流すように雨が降り続けていた。
僕は、相変わらず彼女の話を聞いて、ただひたすらうなずくだけの日々を送っていた。
その日常が、僕にとって少しだけ幸せなモノだった。
「好きです」
でも、そんな日常はすぐに崩れた。
僕の目の前で、彼女は親友に告白をした。
顔を真っ赤にして、手をギュっと握りしめて。
放課後、晴れていた空は一転。
雨が降った。
教室で一人、彼女の帰りを待っていた。
そして、彼女は帰ってきた。
「……ダメだったよ」
悲しそうに笑う彼女を見て、僕はただ一言。
「帰ろう」
と言った。
激しい雨の中、傘を差して帰った。
靴は水に浸り、シャツは少し透けていた。
少しだけ公園に寄ろう、と彼女は言った。
そして。
公園の真ん中で、彼女は傘を投げ捨てた。
叫びながら涙を流して、膝から崩れ落ちる。
僕はその姿を見て、自分の傘を投げ捨て、彼女を抱きしめた。
そして一緒に、泣いた。
僕はその時、残酷にも一番幸せだった。




