第九八話:妹犬の最後(その1)
第九八話:妹犬の最後(その1)
旅行から帰ってきたその日の夜、リルはいつものようにオレの部屋で
オレとのんびりしていた。
いつものようにオレの横に座わってオレに「撫でて〜」と手を出して甘える。
リルはオレが撫でるといつものようにオレの膝に頭を置いて大人しくなった。
オレはテレビを見ながらリルをずっと撫でていたが、お袋に呼ばれたので
立ち上がろうとした。
そこで、リルの様子がおかしい事に気付いた。
オレ「......リル?」
リルの顔を覗き込むと、リルはとても幸せそうな顔をして寝ている......ように見えた。
オレ「......リル?」
リルを揺すってみるが、反応しない。
オレ「......リル?......リル......リル! リル!」
リルの顔を撫でたり頭を撫でたり、身体を撫でたりしても、リルはまったく反応せず、
ただ、幸せそうな顔で眠っているだけだった。
リルとの別れは突然だった。
お袋も泣いたがオレも泣いた。
もっと一緒に居たかった、その思いが心から溢れ出て涙が出た。
実際の所、今まで
オレ「リルが死んだ時は泣くのかなぁ......泣かないんじゃないかなぁ......」
などと思っていたが、結局は大泣きだった。
悲しくもあったが、その涙の分だけ、オレがリルを本気で妹として愛してきていたんだ
という証拠にも思えて、嬉しくもなった。
オレ「リルが......亡くなったよ......」
オレは、ベットの上で眠るリルの頭を撫でながら、勇次に電話を掛け、
リルが亡くなった事を話した。
勇次『......そうか......」
オレ「うん......
何ていうかさ......大泣きだよ。リルが大切な妹だってオレの思いが本当だ
っていう証拠のように、大泣きしちゃったさ。」
勇次『お前はいつだってリルちゃんを大切な妹としてみてたさ。
そりゃ、お前を好きな人達が嫉妬するくらいだ。
お前の思いが嘘なんて思うヤツは居ないさ。』
オレ「ありがとうな......
明日、リルの葬式をするんだ。来てくれるか?」
勇次『あぁ、勿論だよ。玲子と一緒に行くよ。』
......駄目だ......涙が止まらない......
オレ「うん。ありがとうな......
......それじゃぁ......他の人にも......連絡......しないと......
いけない......から......」
勇次『......おい......大丈夫か?
オレと玲子で代わりに連絡してやるから、お前はリルちゃんの傍にいてやれ。』
......本気でまた大泣きしそうだ......
オレ「......すまない......
本当.....ならば.....オレが......かけないと......」
勇次『いいさ......リルちゃんとの最後なんだから、できるだけ一緒にいてやれ。』
オレ「......あぁ......」
電話を切った後、オレはリルを撫でたりキスしたりしながら泣いた。
もう、勇次と話していても涙が止まらなくて、ホントに限界だった。
その日の夜は、いつものようにリルと一緒に眠りについた。
......これが最後だものな。オレの温もり、忘れないで欲しいな......
そんな事を考えながら、オレはリルを寝かせた。
オレ「リル、お休み......お兄ちゃんはリルの事を愛してるぞ。
大切な大切な、かけがえのない妹だぞ。
それは、これからもずっとずっと変わらないからな。」
オレは静かに、幸せそうに眠るリルの頭を撫でてキスをした。
......リルの姿を見るは今日で最後なんだな......
もっと一緒に居たかった。もっともっと傍に居て欲しかった。
リルの眠る顔を見ていると、自然に涙が出てくる。
オレ「リル......リル......」
オレは再び、リルの頭を撫でてキスをした。
オレ「リルは......お兄ちゃんと一緒で......幸せ......だったか?
お兄ちゃんは......ホントに......幸せ.......だったぞ?」
オレは涙を流しながら、再びリルの頭を撫でてキスをした。
オレ「リル......リル......」
......もっともっと......傍に......いて欲しかったよ......リル......