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第九六話:妹犬と思い出作り(その3)

第九六話:妹犬と思い出作り(その3)



それから、オレ達はリルを連れて別荘の外を歩き回ったりして過ごした。

美幸「お嬢様、お茶の準備が整いました。」

香織「分かりました...... 信也さん、リルちゃん、お茶にいたしましょう。」

オレ「ん......了解...... リル、少し休憩しようか。」

オレ達は浮島さんの居る場所まで一緒に向かった。


香織「それにしても......」

相沢さんは紅茶を一口飲み、ティーカップをテーブルに置いてオレの方を見た。

香織「リルちゃん......少し元気が無いように思われますわね......

   どこか具合が悪いのですか?」

リルの方を見ると、日陰の浮島さんが用意してくれた場所で寝ている。

オレ「ん......まぁ......至って健康と言えなくもないし、問題を抱えている

   と言えなくもない......という感じかな......」

香織「はっきりしませんのね......どういう事かしら?」

オレは紅茶を一口飲み、ティーカップをテーブルに置いてから相沢さんの質問に答えた。

オレ「もう、リルも歳なんだよ。 歳相応に弱ってる。

   特に、元々心臓が弱かったらしくてね......

   それが影響して、最近はあまり走らなくなったんだよ。」

香織「......そうでしたの......」

オレ「うん......その関係で......リルは......もう長くはないらしいんだ。

   だから、今回は2人きりで思い出を作りたかったんだよね。」

香織「そういう事だったのですね......でしたら、私が誘ったのは......」

相沢さんは申し訳無さそうに両手を自分の膝の上に置いて、俯いた。

オレ「やっ、これはこれで良かったんだよ。

   久し振りにはしゃぐリルの姿も見れたし、リルも相沢さんや浮島さん

   と久し振りに会えて嬉しかったと思うからね。」

香織「そう言っていただけると嬉しいですわ。

   でも......リルちゃんが......」

相沢さんはリルの方を見ながら悲しそうな顔をした。

香織「久し振りに会った私でさえこんな風に悲しくて涙が出そうなのに、

   信也さんは.......」

オレ「うん......何と言うか......実感がないよ。

   リルが居なくなるって事自体が未だに考えられないというか......ね......」

相沢さんはオレに寂しげな笑顔を向け、

香織「それだけ、信也さんがリルちゃんの事を愛しているという事なのでしょうね。」

と答えた。

オレ「そうなのかな......まだ分からないよ。」


そこで、オレは紅茶を一気に飲み干し、椅子から立ち上がってリルの方に向かった。

オレが動いた事に気付き、リルが目を覚ましてオレの方を見た。

オレ「リル、一緒に昼寝しようか......」

そう言って、オレはリルの横に座ってリルの頭を撫でた。

リルは、嬉しそうな顔をオレに向けて、オレの横に座り直してオレに寄りかかってきた。

そのまま、オレはリルを抱きしめて頭を撫でて、リルの頭にキスをした

すると、リルも耳を畳んで目を細めてオレの顔を舐めた。



少ししてオレとリルが寝ていると、相沢さんと浮島さんはこんな事を話していた。

香織「ホント......リルちゃんは信也さんが大好きなのですわね......」

美幸「そして、信也様もリルちゃんが大好きなのですね。」

香織「そうですわね......少し......妬けてしまいますわ。」

そこで浮島さんが少し目を見開いて相沢さんを見た。

相沢さんは浮島さんの顔を見て、何か誤解している事に気付き、慌ててこう答えた。

香織「うっ.....浮島さんっ!? 私が妬けると言っているのは、

   信也さんにではなく、リルちゃんに......」

そこで相沢さんは口を噤む。

美幸「やはり......お嬢様も信也様の事を......」

香織「あの頃は気付きませんでしたが......

   確かに......淡い恋心はあったのだと思いますわ。

   でも、別に今も好きとかそういう事では.......」

浮島さんは相沢さんの言葉に微笑しながらこう答えた。

美幸「お嬢様、私はもう信也様に対する恋愛感情はありません。

   私に気兼ねする事はないですよ?」

香織「だっ......だから私はっ!」

相沢さんは少し顔を赤くしてそう答えたが言葉が続かなかった。

美幸「その反応そのものが、お嬢様の気持ちを表していますわ。

   お嬢様、自分の気持ちに素直になってくださいね。」

香織「......」

相沢さんは顔を赤くしたまま俯き、そのまま顔を横に向けてオレとリルが寝ている姿を眺めた。

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