第九五話:妹犬と思い出作り(その2)
第九五話:妹犬と思い出作り(その2)
まさか相沢さんと会う事になるとは......
まぁ、確かに前にここに来たのは相沢さんに連れてきてもらったからというのもあるが、
それでも今回来た場所は相沢さんの別荘ではなく、その近くの高原だ。
香織「それにしてもビックリですわね......
リルちゃんにまた会えるなんて、とても素敵ですわ。」
オレ「オレもビックリだよ。相沢さんが日本に帰ってきてるって話
も特に聞いてないからね。」
香織「あら......そうでしたかしら......
確かに......玲子さんや美紀さんと連絡を取り合う事もありませんでしたわね......」
相沢さんはリルの頭を撫でながらもこちらに顔を向けて答えた。
オレ「なるほど......それじゃぁ分からないな......」
香織「信也さんは今日のご予定は?」
オレ「ん〜......今日はリルと一緒に旅館に泊まる予定だよ。
食事も近くのペット同伴可能なレストランに予約を取ってるし。」
香織「あら......でしたら今日は私の別荘にいらっしゃらない?」
相沢さんは笑顔で提案してきた。勿論、リルと一緒に居たいからだろう。
......でもなぁ......今回はリルと2人きりでの思い出作りの為に来てるからなぁ......
オレ「えっと......提案は嬉しいんだけれども、今回は、オレはリルと2人きり
の思い出作りに来たんで......」
すると、相沢さんは少しムッとしてこう答えた。
香織「......それは、私はお邪魔虫という事かしら?」
オレ「やっ......そういう意味じゃないけれども、
オレがリルをもてなさないと意味が無いと言うか......」
香織「それでしたら、泊まる場所として私の別荘を使用するのには構わないでしょう?
それに、昼食のレストランはこれから行くのでしょうから、信也さんがもてなす事
は変わらないと思いますわよ?」
オレ「まぁ......確かにそれはあるかな......」
そこで、相沢さんは笑顔になり、
香織「なら宜しいではないですか。」
と答えた。
......まぁ、いいか......宿代が浮くのは正直助かるからな......
オレ「ん〜......それじゃぁ、お言葉に甘えて、宿泊場所として相沢さんの別荘
を使わせてもらうよ。」
香織「えぇ、是非そうしてくださいな。」
......という訳で、その後、予約していたレストランに到着。
勿論......というか、当たり前のように相沢さんも付いて来た。
オレ「言っておくけど......オレが出せるのはリルと自分の分だけだよ?」
香織「信也さんに奢ってもらうなんてことはしませんわよ!
私だってリルちゃんと一緒にいたいですもの、付いて来たっていいではないですか!」
少々、相沢さんは怒っている。
でも、そんな相沢さんを見てリルが、「クゥン......」と泣いて相沢さんの顔を舐めると、
相沢さんは直ぐに機嫌を良くして、
香織「あらぁ......リルちゃんは私の事を気にしてくれるのね〜......
やっぱり相変わらず可愛いですわ〜......」
と答えた。
食事は、オレや相沢さんの人間用の食事と、リルのような犬用の食事とで分かれて出てきた。
オレ「リル、美味しいか?」
オレがリルにそう聞くと、オレに嬉しそうな顔を向けた。
オレ「そうか、良かったな〜」
オレはリルにそう答えながら、リルの頭を撫でた。
その後、オレ達は相沢さんの別荘に向かった。
リルを車から降ろすと、リルは草の匂いや風の匂いを嗅ぐような仕草を見せた。
オレ「リル、ここは分かるか? だいぶ前に来た事があるよな?」
オレがそう聞くと、リルは嬉しそうな顔をオレに向けた。
香織「リルちゃんも分かるのかしらね〜......」
オレ「うん、分かるみたいだね。」
それから、別荘の入り口に向かってリルと共に歩いて行った。
別荘の中に入ると、久し振りの顔がオレ達を迎えた。
美幸「お帰りなさいませ、お嬢様......」
そして、浮島さんはオレの方を向くと、満面の笑みを向けて、
美幸「信也様、お久し振りでございます。
リルちゃん、お久し振りです。」
と答えた。
香織「ただいまですわ。」
オレ「お久し振りです。」
リルも、浮島さんの事が分かったらしく、浮島さんの方に寄って行った。
美幸「リルちゃんも相変わらず可愛いですね。」
......まぁ......なんと言うか......2人きりの思い出作りにはならなかったけれども、
これはこれでいいんだろな......
相沢さんと浮島さんにリルも会う事が出来た訳だし......な......




