第九四話:妹犬と思い出作り(その1)
第九四話:妹犬と思い出作り(その1)
リルと、もっともっと、楽しい思い出を作りたい。
そう思ったオレは、次の週末、リルと1泊2日の旅行をする事にした。
オレ「リル、今日はもっと広くて涼しい場所に行こうな〜」
車を運転して、信号待ちで止まった時、リルの頭を撫でながらリルにオレはそう話しかけた。
行く場所は、高校時代に行った、相沢さんの別荘があった付近だ。
あの近辺にはペット同伴可能なレストランや民宿があるのだ。
事前に民宿とレストランの予約も取ってある。
3時間ほど車を走らせると、目的地の高原に到着する事ができた。
オレは高原付近の駐車場に車を止めてリルを抱きかかえて車を降りた。
オレ「リル、ここが何処だか分かるか〜?
だいぶ前に、相沢さん達と来た場所だぞ〜?」
そう言いながらリルの頭を撫でた。
何気にリルも嬉しそうだ。
とりあえず、高原の芝生のある場所までは抱きかかえて向かった。
リルを芝生に降ろすと、リルは芝生の匂いや空気の匂いを嗅ぐような仕草をして、
その後、オレを見て嬉しそうな顔をした。
オレ「リル、嬉しいか?」
オレがそう聞くと、笑顔でのんびり歩き出した。
......嬉しそうだし、連れてきて良かったかな......
そうしているうちに、女の子がリルの方に近づいてきた。
女の子「わんちゃん、わんちゃん〜! 可愛い〜!」
後ろから、この子の両親らしい人が歩いてくる。
父親「こらこら、あまり近づくとビックリするだろ〜」
母親「あらあら、ごめんなさいね〜」
リルは、女の子の前に立ち止まってお座りして女の子の顔を見た。
女の子「触っても大丈夫?」
女の子はオレを見てそう聞いてきたので、オレはリルを後ろから抱きしめて、
オレ「大丈夫だよ」
と女の子に答えた。
女の子は、少し恐々とリルの頭に触れたが、リルが笑顔を向けた事で安心して、
リルの頭をしっかりと撫でた。
女の子「わんちゃん、可愛いね〜」
オレ「リル、可愛いってさ〜」
父親「大人しいんですね。」
母親「ホント、可愛いわ〜」
母親も女の子に習ってリルの頭を撫でた。
オレ「ありがとうございます。オレの自慢の妹ですよ。」
女の子「わんちゃん、お名前は〜?」
オレ「リルって言うんだよ。」
女の子「リルちゃん、可愛いね〜」
女の子は、リルの頭を更に撫でた。
オレ「リルも可愛いって言われて嬉しそうだよ。」
女の子「いいこ、いいこ〜」
リルは女の子に撫でられて嬉しそうにしている。
オレ「リルは可愛いくっていい子だってさ〜
リル、嬉しいか〜?」
オレはそう聞きながらリルの頭を撫でた。
リルは、オレの方に顔を向けて嬉しそうな顔を見せた。
オレ「そうかそうか、リルも嬉しいか〜
リルも嬉しいってさ〜」
女の子「リルちゃん、可愛いね〜」
父親「ホントに嬉しそうですね。」
母親「可愛いわね〜......」
オレ「ありがとうございます。」
その後、その家族と別れ、オレは高原の木陰でリルとのんびり昼寝をした。
そこで、誰かから声がかかる。
女性「あの〜......もし.......」
その声の方を見ると、オレと同じくらいの年齢の女性がオレを見ていた。
オレが動いたので、リルも起きて女性を見た。
オレ「......はい.....何でしょう?」
少し寝ぼけな声を出しながら聞いてみた。
女性「もしかして......信也さん......ですか?」
オレ「......はい......あの.....」
女性「やっぱり信也さんでしたか!
じゃぁ、隣に居るのはリルちゃん?」
オレ「......そうですけど.....えっと......」
女性「あぁ......リルちゃん、会いたかったですわ〜!」
女性は、リルの横に座り、リルを抱きしめた。
オレ「......えっと......誰ですか?」
女性「あら......私のことを忘れてしまいましたの?
リルちゃんは覚えているみたいですわよ?」
リルの方を見ると、リルは嬉しそうに女性の顔を舐めている。
......確かに......
えっと......
女性「この場所に連れてきてあげた事も忘れてますの?」
その言葉でオレもはたと気付いた。
オレ「もしかして......相沢さん?」
香織「もしかしなくてもそうですわ!」
相沢さんは少しムッとしながらも、リルを見て更に嬉しそうにリルを抱きしめ、
香織「あぁ〜、リルちゃん、やっぱり可愛いですわ〜......」
と話した。