第九三話:妹犬の幸せ
第九三話:妹犬の幸せ
リルの老いを感じてから、リルは今幸せか、リルの幸せなのはどんな時なのか、
そんな事を考えるようになった。
ソファーに座るオレの横に、オレに寄りかかるように座ってオレに撫でられているリル
はとても嬉しそうな顔をしている。
......少なくとも、今は幸せ......なのかな......
オレ「リル、リルは今幸せか?」
オレはリルを抱っこしてリルの頭にキスをし、頭を撫でながらリルに聞いてみた。
すると、リルは目を細め、耳を後ろに畳んでオレの顔を舐めた。
オレ「お兄ちゃんはリルが大好きだぞ? リルが幸せだといいなって思ってるからな〜」
そう言いながら、オレは更にリルの頭を撫でた。
その日の夜、久し振りにリノの夢を見た。
リノは、胡坐をかいて座るオレの前にお座りしてオレに話しかけてきた。
リノ「お兄ちゃん......リルちゃん、弱ってきてるね......」
オレ「うん......病院でも聞いたんだけれども、歳だってさ......」
リノ「お兄ちゃんは、もっともっと、リルちゃんと一緒に居たい?」
オレ「それは勿論だよ。だって、リルはオレの大切な妹だもの。」
リノ「そっか〜......」
リノはそこで俯いた。
オレ「勿論、リノだってオレの大切な妹だぞ?」
リノ「うん......」
リノも何だか元気がない。
オレ「......どうした?」
オレがそう聞くと、リノはオレにこう答えた。
リノ「お兄ちゃん.......リルちゃんはもうそんなに長くないみたい......」
オレ「......えっ?」
リノ「お兄ちゃんも気付いているんでしょ?」
オレ「......」
確かに、リルは最近元気がない。でも、病院に行っても特に問題はないって言われている。
オレ「でもさ、リルは特に病気になってるとか、そんな感じはないぞ?」
リノ「うん。でもね、リルちゃんは心臓が弱くなってるのも事実だよね?」
オレ「それは......」
病院でも、リルの心臓が弱っているとは聞いていたが、歳相応だという話だった。
リノ「お兄ちゃん......リルちゃんの心臓は、もうそんなに長く持たないんだよ。」
オレ「......そうなのか?」
オレがそう聞くと、リノは俯きながら、
リノ「......うん......」
と答えた。
リルがもうあまり長くはない。
その現実を突きつけられてオレは少し放心していた。
......リルが......死ぬ......
その事を考えないといけない時期なんだな......
リノ「お兄ちゃん、リルちゃんとできるだけ一緒に居てあげてね。」
オレ「......うん、分かった。」
リルの死を考える時、最近考えていた事を思い出し、リノに聞いてみた。
オレ「なぁ、リノ......」
リノ「なに?」
オレ「リルは......幸せ......かな......」
リノ「それは勿論だよ! リルちゃんは、お兄ちゃん達と出会って
幸せだって感じてるよ!」
オレ「そっか......そう感じているならオレも嬉しく思うよ。」
リノ「お兄ちゃん、私だってお兄ちゃんと出会えて幸せだよ?」
オレ「ありがとうな、リノ。オレも、リルやリノと出会えて幸せだよ。」
オレはそう答えてリノを抱っこし、リノの頭にキスをして撫でた。
リノ「私もリルちゃんも、お兄ちゃんが大好きだよっ!
だから......だから、最後の最後まで、リルちゃんの傍にいてあげてね。」
オレ「うん、それは勿論だよ。最後の最後まで、リルの傍に居るよ。
大切な家族だし、、大好きな大好きな妹だからね。」
リノ「元気出してね、お兄ちゃん。
リルちゃんだって、元気なお兄ちゃんが大好きなんだからね!」
オレ「うん、ありがとうな、リノ。大好きだぞ。」
リノ「私も大好き!」
そう言いながら、リノはオレの顔を思いっきり舐めてきた。
目が覚めると、リルはオレの横でぐっすり寝ていた。
ふと、まさか......と思いリルに触れてみるが、息をしているので大丈夫だと安心した。
オレ「リル......もっともっと、楽しい思い出作ろうな......」
そう言いながら、オレは寝ているリルの頭を撫でた。