第八七話:妹犬の兄と狭山さんの買い物(その2)
ここからチョットの間シリアスになるかもです。
第八七話:妹犬の兄と狭山さんの買い物(その2)
とりあえず、品物が決まったので店員さんを呼ぼうと思い、
店員さんを探していると、狭山さんがオレに話しかけてきた。
美紀「ねぇ......もう買っちゃうの?」
オレ「えっ? 決まったんだから買っていいんじゃないかなって思うんだけど.....」
狭山さんは少しむくれながらこう答えた。
美紀「まだ来たばっかりだもん、他のお店も回って色んなのを見ようよ〜」
......まぁ、それもそうだな......
オレ「それはまぁそうだよね...... それじゃぁ、他のお店にも行きますか。」
オレがそう答えると、狭山さんは嬉しそうに「うん!」と答え、
オレの腕に更に強く抱きついた。
......え? 反応しないのかって?
......そりゃまぁ......当たってますよ?
でも、別に反応しても意味ないし......
狭山さんがいいならいいんじゃない? みたいな......
そうして他の百貨店に入ってお店を回った結果、外国製のいい製品があったので、
それを購入する事となった。
美紀「すいませ〜ん!」
狭山さんが店員さんを呼ぶ。
店員「はい、何でしょう?」
美紀「この鍋のセットを下さい。」
あっ、結婚祝いの品なので、包装をお願いします。」
店員「分かりました。それではこちらにどうぞ。」
オレと狭山さんは店員さんの後ろについて行った。
店員さんは倉庫に行って品物を持ってくると、包装を始めながらオレ達にこう聞いてきた。
店員「お二人は恋人さんですか? それとも夫婦ですか?」
オレ「やっ......別にそうい.....」
オレが「そういう訳ではないです。」と答えようとしたら、狭山さんがそこで
美紀「恋人ですっ!」
と答えた。
オレが狭山さんを見ると、狭山さんは小さな声で
美紀『こういう時くらいいいでしょ? 私の気持ちは知ってるんだもん、ね?』
とオレに言ってきた。
......まぁ......腕を組んで歩いている訳だし、これで「別にそういう訳ではないです。」
って答えるのも変だとは思うが......
オレ「......とりあえず今だけな......」
と答えた。
狭山さんはオレの答えに少しムッとしたが、すぐに少し悲しそうな顔をした。
店員「ありがとうございました〜!」
包装が終わって代金を払い、店を出て歩いていると、狭山さんがこう聞いてきた。
美紀「信也くん......やっぱり法泉さんの事......」
狭山さんを見ると、オレの腕に抱きつきながらも俯いていた。
オレ「別にそういう訳じゃないよ。」
美紀「じゃぁ......佳山さん?」
オレ「それも違う。」
美紀「じゃぁ......誰?」
狭山さんはオレの方を見た。少し不安そうな顔をしている。
オレは、前を見ながら、
オレ「......まだ......誰が好きとも、誰かが好きとも分からないんだ......」
と答えた。
美紀「ずっと気になってたんだけれども.......
......どうして、信也くんは誰とも付き合わないの?」
オレは狭山さんの質問にどう答えたらいいのか迷い、立ち止まった。
オレ「......ん〜......立ち話も何だから、何処か喫茶店にでも入ろうか。」
オレがそう答えると、狭山さんは小さく「うん」と答えた。
喫茶店の中で向かいに座り、オレは狭山さんの質問にどう答えるか考え始めた。
......狭山さんは、オレにずっと好意を向けてくれていた人だからな......
ちゃんと答えないとな......
オレ「さっきの質問に答えるよ。」
オレは狭山さんの目を見て話した。
狭山さんは「うん。」と頷いてオレの目を見た。
オレ「オレは、昔大きな病気をしたんだよ。
そして......死にかけたんだ。」
美紀「......えっ?」
狭山さんは目を見開いてビックリした。