第八三話:妹犬とコンクール(その4)
第八三話:妹犬とコンクール(その4)
......という訳で、佐橋さんとオレとリルは壇の上に上がった。
そして、佐橋さんとオレは今回のコンクールの主催者から記念品と楯を受け取った。
......まさか.....オレとリルまで表彰される事になるとは......
でもまぁ、オレとリルが、誰から見ても兄妹であるという事が分かった事
はホントに嬉しいな......
早速、佐橋さんは司会者と握手をし、インタビューを受ける。
司会「佐橋さん、おめでとうございます。」
謙造「ありがとうございます。」
司会「今回の佐橋さんの作品は、今までにないものでしたが。」
謙造「そうですね。僕自身、人物を中心にして写真を撮る事になるなんて、
思ってみた事も無かったんです。」
司会「では、今回の作品は、佐橋さんも思っても無かった作品という事でしょうか?」
謙造「はい。ここに居る、彼と妹さんに会う事が無かったら、
きっと僕はこのような写真を撮る事は無かったと思います。」
司会「という事は、この写真と彼等との出会いは、佐橋さんの大きな転機
となったと解釈してよろしいのでしょうか?」
謙造「はい、実際、その通りだと思います。」
司会「ありがとうございました。
何か一言ございますでしょうか?」
謙造「僕の写真を気に入ってくれた方々に感謝いたします。
そして、僕に新しい世界を見せてくれた、信也君とリルちゃんに、
心より感謝の言葉を贈りたいと思います。」
そして、佐橋さんはオレとリルの方を見て、
謙造「ありがとう。君達に出会った事が、僕の最大の幸運です。」
と言って、オレと握手を交わした。
司会「佐橋さんへ、今一度、盛大な拍手を!」
司会の声によって、会場は割れんばかりの拍手の音がこだました。
司会「次に、モデルの藤崎さんとリルちゃん。
この作品は、どのような時に撮られたものだったのでしょう?」
オレ「これは、オレとリルが久し振りに2人きりでのんびりと週末を過ごした時に、
偶然佐橋さんと出会い、佐橋さんが撮ったものです。」
司会「なるほど、佐橋さんとはその時が初めてだったのですね。
この題名の通り、藤崎さんとリルちゃんはとても仲の良い兄妹に見えますね。」
オレ「ありがとうございます。
オレにとって、リルは何者にも替えがたい、大切な大切な妹です。
この写真を見た方々が、オレとリルを兄妹と自然に感じてもらえたなら、
オレとリルにとって、これ以上の幸せはないと思います。」
司会「ありがとうございました。
何か一言ございますでしょうか?」
オレ「オレとリルが誰から見ても兄妹である事を感じさせる写真
を撮ってくれた佐橋さんへ、心より感謝の言葉を贈ります。」
そして、オレは佐橋さんを見て、、
オレ「ありがとう。君達に出会った事が、僕の最大の幸運です。」
と言って、佐橋さんと握手を交わした。
司会「今一度、佐橋さんと藤崎さん、そしてリルちゃんへ、盛大な拍手を!」
司会の声によって、再び会場は割れんばかりの拍手の音がこだました。
佐橋さんとオレは、深々とお辞儀をし、壇上から降りた。
その後、グランプリ作品も発表されたが、勇次の写真が選ばれる事はなかった。
それでも、入選を果たしていたので勇次は大喜びではあった。
話によると、入選するだけでもかなり敷居の高い写真コンクールだったらしい。
勇次「今後は、オレを指名した仕事もだいぶ来るようになるぞ!」
オレ「そうなんか?」
勇次「おうさ! このコンクールで入選する事が、プロとして認められる第一歩
でもあるんだよ!
佐橋さんだって、最初にこのコンクールで入選して有名になっていったんだぜ?」
謙造「そうだよ? だからこそ、僕は毎年このコンクールには写真を出す事にしているんだ。」
オレ「へぇ〜......」
その後、みんなと他愛も無い話をしながら、会場を後にした。
その後、勇次は水沢さんを家まで送り、家の前で水沢さんと向き直り、
勇次「玲子」
と、少し緊張気味に切り出した。
玲子「ん? 何?」
水沢さんはいつもの如く変わらない。
勇次「玲子......あのな......」
緊張しまくる勇次。
勇次のそんな状態がおかしくて、水沢さんはクスクスと笑う。
玲子「どうしたのよ〜 勇次らしくないな〜......」
そこで、勇次は意を決してこう話した。
勇次「玲子! 結婚してくれ!」
水沢さんは、勇次の言葉を聞いて固まる。
が、直ぐに言葉の意味を理解した。
水沢さんは目に涙を溜めて笑顔になり
玲子「はいっ!」
と答えた。