第八二話:妹犬とコンクール(その3)
第八二話:妹犬とコンクール(その3)
優秀作品の発表会場には、既に何百人という人が集まっていた。
......よく見ると、何気に犬猫を連れている人が結構いるな......
そりゃまぁ、今回の写真展で犬猫がモデルになってたのって、勇次や佐橋さんだけ
ではなかったもんな......
オレが心配性なだけだな、やっぱり......
オレは、入り口に近い場所で立ち止まり、佐橋さんと勇次と水沢さんに
オレ「オレ達はこの辺りにいるよ。 賞が取れるといいな、勇次。
佐橋さんの作品も応援してます。」
と言った。
謙造「信也君、もう少し前の方に行かないかね?」
勇次「そうだよ。オレ達の友人が遠くから見てても寂しいぜ?」
オレ「そうか...... それじゃぁ、もう少し前の方へ行こうか。」
玲子「そうそう、もっと前に行きましょうよ。」
......という訳で、もっと前と言いながら最前列近くまで行く事になった。
結局の所、勇次と佐橋さんの席の近くな訳だ。
勿論、狭山さんや法泉さんや佳山さんも一緒だ。
ちなみに、リルはオレの膝の上、シェリーちゃんは法泉さんの膝の上、
マユミちゃんは席を一つ占有......
......マユミちゃんは大きいから、流石に膝の上には無理だよな、やっぱり......
みんなが会場の席に着くと、丁度発表が始まるらしく、司会者が壇上に現れた。
美紀「いよいよなのね......勇次が賞を取れるといいけど......」
由紀「佐橋さんは.....間違いなし......」
理香「そうですわね〜 佐橋さんの作品なら〜 何かの賞は取れそうですわ〜」
オレ「佐橋さんの作品を見た人の反応って結構いいもんね。
そして、司会者がマイクに向かい、話し始めた。
司会「それでは、写真コンクールの優秀者発表を行ないます。
まずは......」
......という訳で、コンクールの主催者の挨拶やら来賓の挨拶やらで10分くらい掛かった。
そして、いよいよ優秀作品の発表となった。
司会「それでは、優秀作品の発表を行ないます。
まず、優秀賞の発表となります。
優秀賞の作品は......」
......と、ドラムの音が鳴る。
......ん〜......やっぱりこういうのって何処でも同じなのな......
司会「**さんの「**」です!」
そこで、後ろのスクリーンに写真が大きく出る。
写真は風景写真だった。
玲子「ん〜......あの作品かぁ......やっぱりいい線行ってたもんね〜......」
勇次「だなぁ......」
オレ「確かに......壮大で癒されるなぁ......」
謙造「彼が優秀賞を取ったか......いい写真を撮るようになったね。」
佐橋さんは優秀賞を取った人を知っていたらしく、しきりに関心していた。
司会「続きまして、準グランプリの発表となります。
準グランプリの作品は......」
理香「どの作品になるのかしら〜」
由紀「楽しみ......です......」
美紀「もしかしたら勇次かも?」
オレ「......」
司会「佐橋謙造さんの「兄妹」です!」
スクリーンには佐橋さんの撮ったオレとリルの写真が映し出された。
......が......一同反応なし。
最初に動いたのは勇次だった。
勇次は立ち上がり、佐橋さんに向かって
勇次「先生! おめでとうございます!」
と話した。
佐橋さんはまだ固まっていた。
......事態が飲み込めてない?
玲子「佐橋先生! おめでとうとざいます!」
オレ「佐橋さん、おめでとうございます。」
水沢さんとオレが声を掛けて、やっと気付く。
謙造「あっ......僕? 僕なの?」
佐橋さんは自分を指さしながらオレ達に聞いてきた。
美紀「そうですよ〜! 佐橋さん、おめでとうございます!」
理香「佐橋さん、おめでとうございます。」
由紀「おめでとう.....ございます......」
佐橋さんはそれでやっと立ち上がり、オレ達の差し伸べた手を取りながら、
謙造「ありがとう! みんなありがとう!
さぁ、信也君とリルちゃんも僕と一緒に!」
と答え、壇上に上がっていった。
オレ「えっ? やぁ.....オレ達は......」
謙造「いいんだよ! キミ達も表彰されるんだから!」
理香「信也さん、リルちゃん、おめでとうございます〜」
美紀「さすがは信也君とリルちゃんだよ〜!」
由紀「信也さん.....リルちゃん.....素敵です。」
勇次は、佐橋さんの姿を見ながら、
勇次「佐橋先生の写真はやっぱり良かったもんな〜......」
と、自分の事のように喜びながら話した。