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第七七話:妹犬との約束(その7)

第七七話:妹犬との約束(その7)



最近、リルの調子があまり良くない。

元気はあるんだが、あまり走り回らなくなってしまった。

散歩の時に公園に行っても、ただゆっくりと歩き回るだけで、

走って遊ぼうとしてもあまり走ろうとしない。

気になったので病院に連れて行ってみたら、

医者「7歳ですか...... 人間の年齢で言うと44歳くらいですから、

   少しづつ老化が始まっているんだと思いますよ。」

との事だった。

なんと言うか......ショックだ。

妹だけれども、オレよりも先に老いて死んでいく運命はやっぱり変わらないのだろうか。


病院から帰ってきて、オレが居間のソファーに座ると、リルもオレの横に座り、

いつものように「構って〜!」とオレの方を見ながら手を動かして催促してくる。

オレ「......いつまで経っても甘えん坊だなぁ.....リルは......」

そう言いながらリルを撫でたり、頭にキスしたりする。

リルは、そんなオレの行動が嬉しかったのか、オレの方を見てオレの顔を舐めてきた。

人間の年齢で言ったら、リルはもうオレよりも歳は上なんだよな.....

でも、リルが妹である事は変わらないし、リル自体が甘えん坊なのも変わらない。

それでも......運命的に言うならば、オレよりも先に死んでしまうんだよな......

まぁ、まだまだ先だとは思うけれども、やっぱり現実を突きつけられるのはショックだ。

......リルが亡くなった時、オレは泣くのかな......分からないな......

実際の所、リルがオレより先に死ぬなんて考えたくない。

......というか、妹が兄よりも先に死ぬなんてあり得ないだろ。

オレ「リル......オレよりも先に死なないでくれよ?」

オレはそんな事をリルに言いながら、リルの頭を撫でてキスをした。



その日の夜、久し振りにリノの夢を見た。

リノは、オレの前にチョコンと座わり、少し寂しそうにこう言った。

リノ「お兄ちゃん......リルちゃんももうそろそろお別れの時が近づいたみたい。」

オレ「......えっ?...... それはどういう事?」

リノ「......お兄ちゃん、分かってるでしょ?」

オレ「......」

リノ「ショックなのは分かるよ? でも、これが現実なの。」

リノは、オレの目を見て、ハッキリとそう答えた。

オレ「でも......リノ......リルはまだ......

   今日、病院に連れて行ったけれども、老いてはいるけれども大丈夫だって......」

リノ「お兄ちゃん、分かっているんでしょ?」

リノは、オレの戸惑っている目を見ながら、優しく諭すように答えた。

オレ「......だけど......」

リノ「お兄ちゃん、先生に言われたよね?

   リルちゃん、あんまり心臓が強くないって......」

オレ「......」

リノ「寿命が近いんだよ。」

オレ「そんな......少し元気が無くなっただけだろ?」

リノ「勿論、今すぐとか、数日後とか数ヵ月後とか言う話じゃないよ?

   でも、寿命は近づいているんだよ。」

オレ「......そうか......」

数日後とか数ヶ月後ではないというリノの言葉で、オレは少し安堵の溜め息を着いた。

リノは、オレのそんな状態を見て、少しおどけて、

リノ「そっか、お兄ちゃんはもうすぐリルちゃんが死んじゃうって思ったんだよね。

   ごめんなさい。そんなに急な事にはならないと思うよ?」

と話した。

オレ「リノ......心臓に悪いぞ......」

リノ「ごめんなさい、お兄ちゃん.......

   でも、そろそろ考えてあげてね。」

オレ「......うん、分かったよ。」

リノは、オレの返事を聞いて満足そうに

リノ「うん!」

と答えた。


リノ「お兄ちゃん、リルちゃんが歳を取っても、ちゃんとお世話をしてあげてね。

   リルちゃんは、お兄ちゃんが大好きなんだからね?」

オレ「うん、分かったよ。リルはオレの妹だもの、ちゃんと世話をするよ。」

リノ「うん!」

リノが元気に答え、満面の笑顔をオレに向けた。

オレ「おいで、リノ」

オレがそうリノに言うと、リノは嬉しそうにオレの膝に乗り、オレの顔を舐めながら

リノ「お兄ちゃん、大好き! 久し振りだから、一杯甘えさせてね!」

と話した。

オレ「うん、思いっきり甘えていいぞ。」

オレがそう答えると、リノは嬉しそうにオレの顔を舐めてきた。



......という訳で、久し振りにリルに顔を舐められて起こされた。

オレ「リル......どうした...... トイレか?

   お袋に連れて行ってもらってないのか?」

リルは、いつものようにトイレらしいのだが、オレが仕事に行くようになってからは、

殆どお袋に任せていた。

リルは、再びオレの顔を舐めながら、「ウァウ......ウァウ......」と遠慮気味に吠え、

散歩に行く事を促した。

......そうだな......最近はリルを連れて散歩をする事も少なくなったし、

久し振りにリルを連れて散歩に行くか......

オレ「リル、分かったよ。チョット待ってな。」

オレがそう答えてベットから起き上がると、リルは嬉しそうにオレの方を見ながら、

行儀良くお座りをした。

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