第七三話:妹犬は寂しがり屋
第七三話:妹犬は寂しがり屋
リルがうちに来て7年が過ぎていた。
会社で仕事をするようになって、あまりリルに構ってあげられない日が増えて、
仕事の疲れから散歩もお袋に任せるようになってしまった。
......もっと構ってあげたいとは思うんだが、やっぱり疲れには勝てない。
オレ「ただいま〜」
会社から帰ってくると、リルが玄関に走ってやってきて「ワン!」と吠えて
お帰りの挨拶をした。
オレ「ただいま、リル」
オレはリルの頭を撫でてただいまの挨拶をした。
リルは更にオレの顔を舐めてお帰りの挨拶をしてきた。
オレ「よしよし、リル、寂しかったのか?
お袋が居るんだからそんなに寂しがらなくてもいいだろうに......」
やっぱり、最近はオレにあまり構ってもらえていないのが不満なんだろうなぁ......
オレはリルを抱きかかえて居間に向かった。
オレ「ただいま〜」
お袋「お帰り......リルもやっぱりお兄ちゃんが一番大好きみたいねぇ......
お前が帰ってくるチョット前にはもうパタパタして落ち着かないんだから......」
オレ「へぇ....... でも、それは親父や兄キでも同じなんじゃないんか?」
お袋「全然違うわよ。 玄関に迎えに行くのだってお前だけなんだからね。」
オレ「そっかぁ......」
オレってリルに愛されてるんだなぁ......って改めて思ったよ。
オレ「ありがとうな、リル」
オレはそう言いながら抱きかかえているリルの頭を撫でて頭にキスをした。
その後、居間でテレビを見ている時も、リルはずっとオレの傍から離れず、
ずっとオレの隣にくっ付いていた。
ただくっ付いているだけじゃなく、撫でてないと「ヴゥ......」と怒ったり、
手を動かして「撫でて〜!」とオレの顔を見ながら催促してくる。
オレ「リルは相変わらず甘えん坊だなぁ......」
オレはリルに催促されるままにリルを撫で続けた。
オレが部屋に戻ると、リルも部屋に入ってきた。
そして、オレがのんびりしている横に来て、「構って〜!」オレの膝に手を置いたりする。
オレ「ん〜......リル......お兄ちゃんはチョット疲れてるから、
のんびり休ませてくれよ......」
そう言いながら、無視して寛いでいると、リルは「クゥン......」と泣いて部屋から出ていった。
......ん〜......何と言うか......甘えたいのも分かるけれども、
最近は忙しいのもあって、中々なぁ......
家に帰ったら疲れを取りたいからなぁ......
どうしたモンかなぁ......
オレはそのままベットに寝転んで、少し眠ることにした。
リノ「お兄ちゃん......リルちゃんがかわいそうだよ......」
オレ「ん〜......分かるんだけどさ......仕事が大変でなぁ......」
リノ「......お兄ちゃん、リルちゃんはお兄ちゃんの妹だけれども、
でも、お兄ちゃんよりも早く死んじゃうんだよ?
もう7年だよね? もうすぐ8年だよね?
リルちゃんのこと、もっと構ってあげて......」
オレ「......そうだなぁ...... でもなぁ......」
リノ「約束だよ? ちゃんと構ってあげてね?」
オレ「......うん、分かったよ。」
お袋「信也〜 夕飯だよ......って寝てたのかい?」
お袋が夕食の準備が出来たらしく、オレを呼びに来た。
オレ「あぁ、ちょっと眠くてね......
分かった......今行くよ......あぁ......眠い......
オレが起きようとすると、リルがオレの横で寝ていたのに気付いた。
オレ「あれ? リル......いつの間に......」
オレはそう言いながらリルの頭を撫でた。
リルは、オレの顔を舐めて挨拶してきた。
オレ「ごめんなぁ......構ってあげられなくて......」
オレがリルにそう言うと、リルは更に愛おしそうにオレの顔を舐めてきた。
......ホント、もっとリルを構ってあげないとなぁ......
もう7年かぁ...... あと少しで8年なんだよなぁ......
オレ「リル、今週末何処かに出掛けようか。」
リノの言う通り......リルはあと何年生きるか分からないんだよな......
もっと、リルとの思い出を作っておかないとなぁ......
そんな事を考えながら、リルの頭を撫でた。