第六四話:妹犬の兄はバカ兄
第六四話:妹犬の兄はバカ兄
オレは次の日から、サークルのメンバーの女性陣全員に「ごめんなさい」の返事
をする為に行動を始めた。
まずは、皆川さん、佳山さん、安西さん、森中さん。
昼休みにみんなを呼び出し、告白の返答をした。
オレ:「色々考えたんです。
オレは、人を自分から好きになった事がないんです。
それでも、昔、オレを好きになってくれた人を好きにはなりました。
でも、結果的には振られました。
オレという存在は、あの頃と変わってません。
そして、友達として関わる事ができても、恋愛で関わる事は、
オレには恐怖でしかないんです。
だから......ごめんなさい。オレは誰とも付き合うことはできません。」
オレの言葉を聞いた彼女達は、顔を伏せていた。
多分、泣かせてしまうだろう。でも、オレにはこの答えしか出せなかった。
オレ:「みんな素敵な人です。それぞれに個性があって、魅力的です。
だからこそ、オレには自分が好かれた理由が分からない。
オレみたいなヤツより、もっとみんなにふさわしい人が居る。
オレにはそう考えられてしまうんです。」
みんな、涙を目に溜めながらオレの顔を見た。
オレ:「詰まる話、自分に自信がないんだと思います。
誰かと付き合っても、その人を幸せにする自信がオレには無いんです。」
そこで、みんなが、目に涙を溜めながらも笑顔でオレにこう答えた。
沙耶:「信也君はいい人だよ! 私達が好きになった相手なんだもん!」
由紀:「信也さんは......自分の魅力に......気付いてないだけ......」
佳苗:「そうだよ〜 もっと自分に自信を持ちなよ〜」
詩織:「わっ......私達はっ! しっ......信也君の魅力を沢山知ってますっ!」
ホントにみんなの気持ちはありがたい。ホントに嬉しい。
素敵な人達だからこそ、失いたくない人達だからこそ、幸せになって欲しい。
オレ:「......ありがとうございます。
オレはまだまだです。
もっといい答えが出せたら良かったんだけれども、今のオレにはこれが精一杯
のみなさんへの気持ちです。
ホントに......ごめんなさい......です。」
みんな、納得して「うん」と頷いてくれた。
オレは、心の中で再びみんなに向かって「ごめんなさい」と話し、
みんなの元を去った。
更に次の日、浅生さん、白泉さん、法泉さんを昼休みに呼び出し、
告白の返答をした。
基本的には昨日みんなに言った事と同じ事。
でも、彼女達は違った。
昨日の事もあり泣かせてしまうだろうと思っていたが、そうはならなかった。
かと言って、怒る事もなかった。
それでも、空気が沈んでいるのは確かだろう。
弥生:「ん〜...... 今までの反応を見ていたら、そうなるんじゃないかな......
とは思ってたんだ〜......」
奈菜:「そうですね...... 信也さんは、みんなの事を思う余り、
誰も選ぶ事ができなかったのでしょう。」
理香:「それでこそ、私達の選んだ相手......と言えなくもないのですが、
まさかこんなにも早く返答をされるとは思いもしませんでした.....」
オレ:「決して答えを焦った訳ではないです。
でも、このままズルズルと返答を出さないのもみんなに失礼だと思いました。
もっといい相手が近くにいるのに、そのチャンスを潰してしまうのは、
更にみんなへの迷惑だとも思いますから。」
弥生:「信也君は優し過ぎるんだよ。もっと我が侭でいいって私は思うな〜......」
奈菜:「そして、自分に自信がないのですね。もっと自分に自信を持ってください。」
理香:「私達が選んだ人なのですもの、信也さんが素敵な人である事は確かな事ですわ。」
オレ:「......ありがとうございます。
オレはまだ精神的に未熟で、誰かを幸せにする自信がないんだと思います。
みんな幸せになって欲しいから、オレはこんな道を選ぶ事しかできませんでした。
本当に......ごめんなさい......です。」
弥生:「うん、しょうがないよね。」
奈菜:「そうですわね。信也さん、成長していってくださいね。」
理香:「私達が好きになった事、誇りに思ってくださいな。
私達も、信也さんを好きになった事、誇りに思っておりますわ。」
オレ:「ありがとうございます。」
そしてオレはみんなの元を去った。
帰宅後、メールでサークルを抜ける事を連絡し、オレはサークルを抜けた。
勿論、みんな引き止めようとしたが、これに関しては、「オレが精神的に未熟だから。」
という事で納得してもらった。
その2日後、再び掲示板に新聞部の記事が載る。
見出し:「唖然! 藤崎信也はサークルのメンバー全員を振った!」
この事に関しては賛否両論あったらしく、それから1ヶ月くらいは話題に上った。
その事もあり、オレとリルのファンクラブも消えた。
......別にファンクラブが消える事を狙った訳では無かったけれども、
副次的にオレとしては良かったって思う。
省吾や達郎さん、幸助さんには、
省吾:「お前はバカだよなぁ......こういう事に関しては......」
達郎:「大バカだよ、キミは。まぁ、キミのそんな所も魅力なのだろうが......」
幸助:「ん〜...... 自分に自信がないってのは大変だねぇ〜......」
と言われた。
それでも、最終的には「しょうがない」と納得してくれたのが救いかもしれない。