第四八話:妹犬達の写真撮影会(その2)
第四八話:妹犬達の写真撮影会(その2)
そんな会話の後は、何故か終始和やかな雰囲気だった。
みんなあれで納得してくれたのか......
勿論、あれは嘘偽りの無い本心だが、怒る人とか反論する人が出てもおかしくないし、
オレ自身が嫌われてもおかしくなかったと思う。
なのに、誰一人として不満を漏らさず、むしろ、オレに惚れ直したとまで言ってくれた。
......この人達は......オレという人間を見てくれている。
そう思えた事が正直嬉しかった。
そして、この人達に出会えた事が素直に嬉しかった。
オレがそんな事を考えていると、佳山さんがオレの顔を見ながら呆けている事に気付く。
オレが佳山さんの顔を見ていると、佳山さんはオレの視線に気付き、俯いてしまった。
......? ......何だろうか......
オレ:「佳山さん? どうしたんですか?」
オレに声を掛けられ、俯いた佳山さんがハッとした感じで顔を上げる。
佳山さんの顔は、目を見開き、思いっきり真っ赤になっていた。
オレ:「あの......」
由紀:「......あ......」
再び、佳山さんは俯いてしまった。
弥生:「あらぁ〜? 由紀ちゃん、純情〜......」
沙耶:「こんな由紀ちゃんを見たのは初めてですよ。」
佳苗:「ホントホント! 由紀ちゃんもこんな風になるんだ〜!」
詩織:「ゆっ......由紀ちゃん...... かっ......可愛いです......」
そんな周囲の言葉で更に俯いてしまった。
理香:「由紀さんは、やっぱり信也さんにゾッコンなのですわね〜......」
と言いながら、法泉さんはオレの左腕を抱きしめる。
奈菜:「でも、私達も負けませんから。」
と言いながら、白泉さんはオレの右腕を抱きしめる。
それを見ていた佳山さん以外の他のメンバーは、
女性陣:「「「「あぁ〜!」」」」
とオレ達を指差して大きな声をあげた。
その声でオレの方を見た佳山さんは、顔を真っ赤にしながらも無表情で立ち上がり、
オレの後ろに立つと、後ろからオレの首に手を回し、右からオレの頬にキスをし......
ようとした所で、更に後ろから「ヴゥ〜.......」と低い唸り声が聞こえた。
その唸り声を聞いた全員がその声の方向を見ると、リルが怒って唸っていた。
どうやら、先程のみんなの驚きの声でリルがこちらの状態に気付いたらしい。
リルが唸っているので、法泉さん、白泉さん、佳山さんの3人はオレから離れ、
姿勢を正して席に着き、それを見ていた他のメンバーも席に着いた。
それで安心したのか、リルはオレの膝の上に前足を置いて、抱っこを催促してきた。
オレ:「リル〜、やっぱりお前は甘えん坊だなぁ〜......」
そう言いながら、オレはリルを抱きかかえ、オレの膝の上に乗せた。
すると、リルは耳を後ろに畳んだ状態でオレの顔を舐めてきた。
そんなオレとリルの状態を見ながら、佳山さんの両親は
母親:「あらぁ......リルちゃんが一番のライバルみたいですわねぇ......」
父親:「ふむ、どうやらそのようだなぁ〜、はっはっは〜!」
と言い、それを聞いていた佳山さんは少し憮然としながら、
由紀:「......笑い事じゃ......ない......」
と言った。
白泉さんと法泉さんは、オレとリルの姿をうっとりとしながら眺めて
奈菜:「リルちゃんは、やはり信也さんラブなのですね。」
理香:「リルちゃんともっと仲良くなって、リルちゃんに認めてもらう
のが先決なのかしら〜......」
と呟いた。
そして、浅生さん、皆川さん、安西さん、森中さん達は、
4人:「「「「リルちゃんナイス!」」」」
と小さく呟いた。
それを遠くから見ていた達郎さんは、
達郎:「ん〜、ナイスな絵だ。」
と言いながらそんなオレ達の姿を写真に収めていた。
それから、オレはリルを連れて妹犬達と遊び始めた。
そんなオレと妹犬達の姿を達郎さんは写真に撮り始めたが、
撮り始めてすぐに唖然とし始める。
何故なら......まぁ、状態は第三六話参照という事で......
そして、達郎さんは佳山さん達の方に向かい、
達郎:「......信也君って、妹犬達とはいつもあんな感じなのか?」
と聞いた。
女性陣は楽しそうにオレ達を見ながら、
由紀:「前回と......同じ......
マユミ......飛び掛った......」
詩織:「しっ......信也さんは あっ......あれが普通だとっ!
モっ......モモも信也さんに飛び掛ってますっ!」
弥生:「信じられないけど、何気にみんなと楽しそうに遊んでるから、
私達もあれでいいのかな〜......なんて......
あっ、リリコが袖噛んで引っ張ってる......」
沙耶:「自分が男だからって謙遜してたけれども、
あれが真似できる人は少ないよね、やっぱり。
カリンも楽しそうだなぁ......いいなぁ......」
佳苗:「私も混ざってみようかな〜......とか考えるけれども、
流石にあれは......
ナっ......ナナ〜っ! あんまり無茶な事しないで〜っ! 」
そこで達郎さんはオレと妹犬達の方に視線を向けた。
すると、オレはマユミちゃんとシェリーちゃんに押し倒され、
妹犬達全員に飛び掛られ、顔を舐められたり袖を噛まれたり裾を引っ張られたりしていた。
達郎:「......あれが普通って...... あれは流石に怖くないのかなぁ......」
奈菜:「でも、笑い声が聞こえてますから、多分、楽しいのだと思います。
ケイも楽しそうに走り回ってます。」
理香:「妹達とあんなに仲良く遊べる信也さん、尊敬いたしますわ〜。
シェリーもリルちゃんと一緒になってはしゃいでますわ。」
再び達郎さんがオレと妹犬達の方に視線を向けると、オレはみんなから走って逃げていたが、
やはり犬の方が走るのは早いので、オレはみんなに袖やら裾やらを噛まれていた。
オレ:「おいっ! こらっ、ちょっ......引っ張りすぎると流石に服が破れるって!」
と言いながらも、何気に笑っているオレの声が聞こえた。
達郎:「......確かに......楽しんでいるようだね......
あれは僕には絶対に真似できないよ......
僕と妹犬達が遊んでいる時って、大体は座ってお手とか伏せとか、
ボール投げて取ってくるとかだからね......」
由紀:「あれが...... 最初に惚れた......理由......」
達郎:「......なるほどね〜......
あんなに楽しそうに人と遊ぶ妹犬達を見るのは初めてだものなぁ......」
そこで、達郎さんは再びオレ達の方に向かい、オレと妹犬達の遊んでいる写真を撮り始めた。
達郎:「妹犬達もいい表情をしているが、信也君もいい表情しているね〜......
人間を撮ってて楽しいと思ったのは初めてだよ。
......彼女達が惚れる訳だ......」
と呟きながら、達郎さんはシャッターを何度も切った。