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第四七話:妹犬達の写真撮影会(その1)

第四七話:妹犬達の写真撮影会(その1)



オレ達が庭に向かうと、庭の家側には法泉さんの家のように、テーブルと椅子とパラソル

があり、その逆側には法泉さんの家に匹敵するであろう庭があった。

そして、更に、少し離れた場所で、達郎さんが写真撮影の為の準備をしていた。

そして......テーブルと椅子のある場所には......一人の男性が......

......もしかしなくても、佳山さんの親父さん......だよなぁ......

そして......そこに、紅茶やらクッキーやらを並べている女性が......

......もしかしなくても、佳山さんのお袋さん......だよなぁ......

そして、佳山さん自身が、親父さんの横に座っていた。

理香:「おじ様、おば様、おはようございます。

    おじ様、今日はお仕事は......」

父親:「うん、休んだ。

    みんな、今日は妻が腕を揮うので楽しんでいってくれ。」

あっけらかんと親父さんは答えた。

......何気に軽い人だな、この人......

奈菜:「おじ様、おば様、今日はよろしくお願いいたします。

    おば様、今日はお仕事は......」

母親:「勿論、お休みですわよ?

    みなさん、今日はゆっくり寛いでいってくださいな。」

お袋さん......あなたもですか......似たもの夫婦ってヤツですか......

......でも子供が似てないのはこれ如何に?

まぁ......達郎さんは似てるかもだなぁ......ノリが......

法泉さんと白泉さんは、何気に出鼻を挫かれたようで、少々意気消沈している。

ちなみに、他のメンバーは......唖然としていた......

そりゃまぁ......そうだろうさ......

しっかし......佳山さん......小さな子供のように俯いて顔を赤くしてだんまりだ......

かなりレアだ......写真に撮っておきたいかも......



......という訳で、写真撮影が始まる。

妹犬達はみんな達郎さんに懐いていた。

やっぱり......懐かれ方の年季が違うなぁ......

リルも、シェリーちゃんやカリンちゃんと一緒になって、少し警戒しながらも

近づいていっているから、すぐに懐くかもだな、あれは......

ちぃ〜とばっかり寂しいなぁ、兄としては......

オレがリルの方に向かおうとすると、そこで右隣に座っていた白泉さん

に手を掴まれて止められた。

奈菜:「信也さん、このケーキ、とても美味しいです。

    信也さんも食べてみてください。」

オレ:「あっ、そうですね。オレも一口......」

そこで、左隣に座っていた法泉さんに、フォークに刺されたケーキがオレの口に向けられる。

理香:「はい、どうぞ〜、あ〜ん......」

オレ:「やっ......あの......」

そこで、右隣に座っていた白泉さんに、フォークに刺されたケーキがオレの口に向けられる。

奈菜:「あ〜ん......」

オレ:「やっ、あのですね......?」

そこで、向かいに座っていた佳山さんが立ち上がり、フォークに刺されたケーキを向けられる。

由紀:「......あ〜ん......」

後ろを見ると、リルは達郎さんと妹犬達と、楽しそうに遊んでいる。

なんと言うか......四面楚歌とはこの事ではないだろうか......

オレは、意を決して、まず法泉さん、次に白泉さん、最後に佳山さんの向けたフォーク

に刺されたケーキを食べた。

父親:「はっはっは〜、噂通り、モテモテだねぇ〜」

そんなオレ達のやり取りを見て、親父さんは全く以って普通に笑う。

......ここってそんなに普通に笑っていられる場面なんでしょうか......

むしろ、こんな状況で優柔不断なオレが怒られる所では......

母親:「あなたには私は居るではありませんか。」

お袋さんは親父さんにそう言いながら、親父さんの横に立ち、親父さんのケーキの皿を持つと、

少し切って、「あ〜ん」と親父さんに食べさせた。

父親:「うん、うまい! お前の作るケーキは実に美味い!」

......と、微笑ましい光景をオレ達に見せた。

......何ていうか......やっぱり似たもの夫婦?

何の為にここに居るんだろ......この人達......

もしかしたら、佳山さんの好きな相手の品定めだと思っていたのだが、

何となくそんな雰囲気では無い事に安堵したオレだった。

......が、それはやはり甘かった。



父親:「ところで......信也君だったね?」

と親父さんはオレに声をかけてきた。

オレ:「? はい。」

父親:「信也君は......ここにいる全員に告白されたと聞き及んでいるが......

    勿論、うちの娘も含めてだが......それは事実かね?」

オレ:「はい......そうですね......」

父親:「しかも、全員の告白を断ったのだとか......

    その理由を聞かせてもらえないだろうか?」

オレ:「......はい......」

オレは意を決して、オレの心中を説明する事にした。

オレ:「まず......告白されたのは先週の事です。

    その前に面識があったのは、オレをこのサークルに誘ってくれた、

    浅生さんと皆川さんくらいで......それでも、ホント面識がある程度で......

    その他の人達は先週会ったのが初めてです。」

そこでオレが一度話すのを止め、親父さんを見る。

親父さんは、頷き、「うん、それで?」と続きを促した。

オレ:「出会ったばかりで告白されたオレは、正直言って、戸惑いました。

    みんなオレの事を良く知らない、オレもみんなの事を良く知らない。

    こんな状態で告白なんて......しかも、全員からなんて......

    言葉は悪いかも知れませんが......ある意味......正気じゃない......」

オレは、そこで法泉さんの顔を見た。

法泉さんは真剣な顔をしてオレの言葉を聞き、オレの顔を見ていた。

オレ:「勿論、最初にオレに告白してきた法泉さんの思いが真剣である事は理解しています。

    真剣だからこそ、法泉さんには簡単に返答はできない。

    そして......」

そこで白泉さんと佳山さんを見た。

オレ:「法泉さん以外のその他の人達に対しては......

    法泉さんからの意外な言葉によって、焦りで突き動かされて、

    正常な判断ができていないかもしれない......

    オレはそう考えました。」

そこで、親父さんを見た。親父さんは、「うん」と頷き、真剣な顔でオレを見た。

オレ:「勿論、淡い恋心はあるかもしれない。

    でも、それが恋愛感情として、オレと付き合いたいと思うまでには、

    まだまだ時間が必要なんじゃないでしょうか?

    そしてそれは、ある意味では法泉さんも同じ事です。」

そこで、オレは一度目を伏せて、再度親父さんを見た。

オレ:「だから、少なくとも今は、オレは誰一人として、

    いい返事を返す事ができません。」

オレがそう答えると、親父さんは目を伏せ、そして、

父親:「......気に入った! 由紀、信也君を絶対に諦めてはいかんぞ?」

と佳山さんに向かって言った。

佳山さんは親父さんを見た後、オレを見て、

由紀:「......信也さん......諦めません......」

とほんの少し嬉しそうな顔をして、ほんの少し頬を赤らめて言った。

......なんか......気に入られてしまったらしい.......

......なんでだろうか.......

理香:「私も......更に惚れ直しました......」

奈菜:「やはり、私達の目に狂いはなかったようです。」

法泉さんは微笑を浮かべ、白泉さんも嬉しそうな顔をしてそうオレに向かって話した。

更に、いつの間にかそれを聞いていたらしい、その他の女性陣も、

沙耶:「う〜ん! 負けられないよ〜!」

佳苗:「うん! 諦めたらダメだよね!」

詩織:「しっ......信也さんっ! やっ......やっぱり私もっ!」

弥生:「信也君、覚悟しておきなさい!」

......とオレに向かって言ってきた。

......オレは何気に酷い事を言ったような気もするんだが......

......むしろ、嫌われそうな事を言ったんじゃないかって思ってたんだが......

と、いつまで経っても唐変木なオレだった。


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