第三八話:妹犬達の姉達と兄バカ(その2)
第三八話:妹犬達の姉達と兄バカ(その2)
一旦会話が止まった所で、法泉さんがオレの手を握る。
オレ:「......法泉さん?」
そんな法泉さんの姿を見て、みんなが法泉さんとオレを注目する。
理香:「信也さんは......特定の方はおられますの?」
オレ:「特定の方ですか? それはどういう......」
理香:「つまりは.......恋人の事ですわ〜」
オレ:「いや、特には...... オレって基本的に怖がられてましたからね。」
理香:「あら......どうしてですの?」
オレ:「基本的にオレは目つきが鋭すぎたみたいで、高校時代は不良と思われてて、
女性の友達も少なかったんですよ。」
理香:「そうでしたの...... でも、私達とは普通ですのね。」
オレ:「やっ、浅生さんは今日会った時、ちょっと怖がってましたよね。」
弥生:「そっ......それは流石にあの目は怖かったわよ......」
浅生さんは少し頬を掻いて、目線を上に向けて朝のオレの目つきを思い出しながら
そう話した。
オレ:「でしょう? オレは基本的にはあんな感じなんですよ。
リルと一緒だとあんな風にはあまりならないですけどね。
素の時は話し掛け辛いかもですよ、実際の所。」
理香:「それでは、私達は運が良かったのですわね。」
オレ:「そうなんでしょうか.......」
オレの手は未だに法泉さんに手を握られたままで、そこで法泉さんはさっきよりも
オレの手を握る手に力を入れてきた。
オレ:「あの〜......法泉さん?」
理香:「あら......嫌ですの?」
法泉さんは少し小首を傾げながらオレにそんな事を聞いてきた。
オレ:「やっ、別に嫌という訳ではないですが.......」
嫌とは言わないけれども、何故手を握られているのかが分からんから、
どう反応したらいいのか分からん訳で......
オレが少し困惑した顔を向けてると、法泉さんはおっとりと、
優しい口調で笑顔になりながら、オレにこう言ってきた。
理香:「なら......よろしいではないですか。」
オレ:「はぁ......まぁ......」
そんなオレと法泉さんの姿を見ていたその他の女性陣は、
弥生:「何気に......理香さんって積極的......」
沙耶:「私にはあんな事はできないよぉ......」
奈菜:「少し、羨ましいです......」
由紀:「負けて......いられない......」
佳苗:「でも、怖気付いてしまうかなぁ......やっぱり......」
詩織:「どっ.......どうしたらいいでしょうかっ.......」
という会話をしていた。
そこで、法泉さんはオレの手を更に強く握り、オレの方に身体を向けてオレを見た。
理香:「信也さん......」
オレ:「はい?」
理香:「信也さん......私と......お付き合いしていただけませんでしょうか?」
オレ:「......は?」
オレは驚きの余り、目が点になる。
更に、他の女性陣も
女性陣:「「「「「「......はっ!」」」」」」
と驚きを隠せない。
理香:「ダメ......でしょうか......」
オレ:「やっ.....ダメとかそういう問題ではなくてですね、
今日初めて会ったばかりですし......」
オレの言葉を聞きながらも、法泉さんはオレの言葉を力強く否定し、
更に熱の篭った視線を向けてきた。
理香:「そんな事は関係ないですわ。
この出会いを私は大切にいたします。
この機会こそ、この時こそが大切なのです。」
法泉さんのその言葉も、その思いを真剣である事は良く分かった。
オレ:「......」
何と答えたらいいのだろう.......真剣に考えるにしても、
出会ったばかりでどうすればいいのか分からない。
理香:「やっぱり......ダメ......でしょうか......」
オレ:「やっ、そういう訳ではなくて......
オレはこういうのに慣れてないんです......」
オレのその言葉を聞いた法泉さんは、今度はオレに身体を近付けてきた。
理香:「私も......いきなりこんな事を言ってしまってごめんなさい。
会ったばかりでこんな事を言うなんて、私もどうかしてると思います。
ですが......それでも、私は信也さんが好きです。」
オレ:「......ありがとうございます。」
法泉さんは真剣だった。 オレも真剣に考えないといけない。
......法泉さんは素敵な人だと思う。でも、まだ今日会ったばかりだ。
どんな人かも分からない。それに、法泉さんもオレの事をまだ知らない。
この状況でその思いに答えることはできない。
オレ:「法泉さん、法泉さんの思いは正直嬉しいです。
でも、オレは法泉さんをまだあまりよく知りません。
そして、法泉さんもオレをまだあまりよく知りません。
だから......今はまだ.......ごめんなさいです。」
オレがそう答えると、法泉さんは笑顔を向け、そしてこう答えた。
理香:「信也さん、あなたはやはり素敵な方ですわ。
私は、今の言葉で更にあなたを好きになりました。
私は諦めません。 信也さん、覚悟してくださいましね。」
そう言いながら、法泉さんはオレの首に手を回してオレの頬にキスした。
そして、法泉さんはオレから離れ、椅子をさらにオレに寄せてオレの手
を優しく握ってきた。
そんな法泉さんの行動にオレは少し呆けながらも、法泉さんを見た。
それを見ていた女性陣も呆けたまま、何も言えずに法泉さんを見ていた。
法泉さんは、オレと目が合うと小首を傾げて笑顔を向けた。