第三十話:幕間(高校生活の終了)
第三十話:幕間(高校生活の終了)
高校を卒業して2週間が経った。
オレは大学の入学がそろそろ近いという事で、高校時代の荷物整理をしながら、
高校生活のことを考えていた。
......あれから色々な事があった。
高校3年になると、リルの写真が1年〜3年の女子と女性の若い先生にも渡る
ようになっていて、週末になると、オレの家の前に名前も知らない女子
が5〜6人現れて、リルの散歩の時について来るなんて事が普通になっていた。
まぁ、相沢さんは殆ど毎週末現れたかな......
ホントに相沢さんはリルの事が大好きみたいだった。
そして、リルの写真と共にオレの写真まで1年〜3年の女子と女性の若い先生にも渡る
ようになっていて、オレが廊下を歩いていると当たり前のように声を掛けて
は手を振って走り去る......という訳の分からない事を繰り返されていた。
......リルの写真だけならまだしも、何でオレの写真まで......
まぁ、理由は狭山さんがバラ撒いた写真の影響である事は言うまでもないんだけどね。
でも、まさかこんな事になるとは狭山さんも考えていなかったらしく、
「バラ撒いたのは大失敗だよ......」とぼやいていた。
一番ビックリしたのは、高3の3学期頃に、勇次がカメラマンを目指す
と言い出した事だ。
確かに......リルの写真を撮っているカメラマンの方を興味深く見てたな......
とは思っていたのだが、まさかプロのカメラマンを目指すようになる
とは思いもしなかった。
勇次曰く、「昔、オヤジが撮った写真を眺めるのが好きだったのを思い出してな。
真剣にやってみようかって考え始めたんだよ。」......という事らしい。
水沢さんは、あの頃のまま勇次と付き合っている。
進学は全く考えてなくて、「勇次が貰ってくれるから全然大丈夫よ〜!」
とニカッと笑いながらピースサインを出していたのを思い出す。
勇次はと言えば、少し苦い顔をしながらも、「惚れた女だからな。
できる限りそうしたいよ。」と水沢さんを見つめながら言っていた。
何だかんだ言って、水沢さんと勇次はラブラブなんだよな。
まぁ......間違いなく、勇次は水沢さんの尻に敷かれるとは思うが......
狭山さんは......卒業式の日、狭山さんに告白された。
これにはかなり動揺した。
オレは狭山さんの事を友達としてしか見ることができなかったのと、
オレ自身、「人を好きになる事」ってどういう事なのか分からなくて、
狭山さんの思いに答えることができなかった。
高校を卒業すると、狭山さんや水沢さんや勇次とも今までのように気軽に会う事
もなくなって疎遠になるから......という思いもあったんだと思う。
狭山さんの気持ちを考えると、思いに答えてあげるべきだったんだと思う。
でも、狭山さんは真剣だったから、安易に受け入れる事もできなかった。
相沢さんは、海外の大学へ進学するという事で、1週間前にパリへ行ってしまった。
浮島さんも一緒だ。
パリに行く前日、相沢さんは日本での思い出に、リルと遊ばせて欲しい
と頼みに来たので、相沢さんとオレとリルを含めて、いつもの公園で存分
に遊ばせてあげた。
家に帰る頃になると、相沢さんはリルを抱きしめてわんわん泣いていた。
リルも、相沢さんのそんな姿を見て感じる事があったのか、とても悲しそうに、
「クンクン......」と泣きながら相沢さんの顔を舐めていた。
浮島さんは......その日に「好きでした。素敵な思い出をありがとうございました。」
と言われた。
狭山さんに続き、浮島さんにまで言われるとは思ってもみなかったので、
正直かなりビックリしたが、浮島さんは相沢さんとパリに行く為、
オレと付き合いたいとかそういう事ではなく、自分の思いを伝えて踏ん切り
を付けたかったらしい。
オレは、浮島さんへ「お元気で。」と言って握手をしたが、浮島さんは泣きながら
オレを抱きしめて頬にキスして走り去ってしまった。
......鈍感なのも罪だよな.......とか今更ながらに罪悪感を感じている。
とりあえず、1週間後からオレは大学だ。
国立の程度は中クラスの大学だが、オレはここでやりたい事の勉強
をしようと思っている。
えっ? 何をやるかって?
それは......まぁ大学に入ってから追々説明するという事で......
とりあえず、これで第一部が完了となります。
実際の所、もっと高校時代を続けるのも良かったのですが、
それだと何話になるか、ホントに先が見えなくなるので、
とりあえずここで高校時代を完了させて、
次に進めたいと思った次第です。
次回から大学生活と妹犬を書いていきます。
もう少し、妹犬中心に書いていきたいな......
とは考えてますが、物言わない動物を中心にしていくのは、
中々に難しいですな......と今更ながらに考えておりまするよ。