第二九話:妹犬と相沢さん
第二九話:妹犬と相沢さん
オレ達が別荘のリビングでそんな事を話していた時、
リルと相沢さんは外を優雅に散歩をし、景色のいい場所で座っていた。
香織:「リルちゃん、楽しい?」
香織は横に座っているリルの頭を撫でながらリルに聞いた。
リルは嬉しそうな顔をして香織の言葉に答えていた。
はぁ......リルちゃんはやっぱり可愛いですわ......
何でこんなに可愛いのかしら......
元々は、私は犬よりも猫の方が好きでしたのに、それが覆る程の可愛さ......
香織:「リルちゃん可愛い〜!」
香織はそう言いながらリルを抱きしめた。
リルは香織が自分を好きでいてくれる事が嬉しかったのか、香織の顔を舐め始めた。
香織:「リルちゃんも私のことが大好きですのね〜......
私もリルちゃんのことが大好きですわよ〜......」
そう言いながら、香織はリルの頭を撫でた。
再び、リルの姿を見る。
そう言えば、信也さんが言ってましたわね。
「リルは妹。もう犬には見えない。」って。
ホント、私もリルちゃんの事はもう犬なんて思えないですわ......
何処が違うのかしら......
確かに、リルちゃんはとても可愛らしいですが、普通に見たらやっぱり犬ですわね。
でも......そう、表情がとても豊かなのですわ。
昨日、信也さんに抱きついた美紀さんや浮島さんの姿を見て、思いっきり嫉妬して
「ウゥ〜......」って唸ってましたものね......
あの時のリルちゃんは、ホントに大好きなお兄ちゃんを取られたくないって感じ
がとても伝わってきましたわ......
そんな事を考えながら、リルの頭を撫でた。
香織:「リルちゃんは信也さんが大好きなのですか?」
そう聞くと、リルは立ち上がり、別荘に戻るように香織を促した。
香織:「......やっぱり信也さんが一番なのですね......」
少し寂しいですが、やっぱり信也さんには敵わないのでしょうね......
そうして、リルと香織は立ち上がり、別荘へと向かって歩き始めた。
香織が横を歩くリルを見ると、リルは香織の方を見ながら歩いていた。
嬉しそうな顔を浮かべるリルちゃん......可愛いですわ......
こうしてリルちゃんを見ながら歩いていると、リルちゃんが人間の女の子
に見えてくるから不思議ですわね......
そう、横を歩くのは、犬の姿ではなく、人間の姿のリルちゃん。
可愛らしい白のワンピースを着て、私と手を繋ぎながら歩く小さな女の子......
......私って子供好きなのかしら......
確かに、可愛い女の子は好きかもしれませんわね......
香織:「リルちゃん......」
香織がリルに言葉を掛けると、リルは香織の方を見て立ち止まった。
香織はリルの傍にしゃがんでリルの頭を撫でながら、
香織:「リルちゃんは、ホント、ワンちゃんではなく、可愛い人間の女の子ですわ。
私は、リルちゃんとこうして知り合えた事を幸せに思いますわよ。」
とリルに言った。
リルは、その言葉が嬉しかったのか、香織の顔を舐めた。
そうこうしているうちに、朝食の用意ができたようで、浮島さんが
美幸:「そろそろ朝食の時間となります。
私はお嬢様を呼びにいきますね。」
と言ってきた。
オレ:「あっ、それならオレが行きますよ。
リルを頼んだのはオレですからね。」
美幸:「そうですか......
それではお願いいたしますね。」
オレは、相沢さんの返答を待ってから、リルと相沢さんを呼びに外に出た。
オレが外に出ると、相沢さんとリルが丁度戻ってきた所のようで、
少し離れた場所からこちらに歩いてくるのが見えた。
オレが相沢さんに手を振ると、相沢さんもオレに手を振ってきた。
オレが相沢さんとリルのいる方向に歩きだすと、リルがオレに向かって走ってきた。
香織:「......やっぱり、リルちゃんには信也さんが一番なのですね......
少し......嫉妬してしまいますわ......」
リルがオレに向かって走って行ったのを見ながら、相沢さんはそんな事を呟いていた。