第十三話:妹犬、兄のクラスメイトの評判になる(1)
第十三話:妹犬、兄のクラスメイトの評判になる(1)
その日の学校、昼休み、昼食の準備をしようと、オレがリュックから弁当
を取り出そうとしていると、美紀が玲子と一緒にオレの所に来た。
美紀:「ねぇ、信也君、可愛いワンちゃんがうちに来たんだってね?
写真あるんでしょ? 私見た事ないから見せて欲しいな〜」
オレ:「ん? いいけど......」
美紀:「玲子は見た事あるんだよね? 写真」
玲子:「うん!結構可愛い子だよ〜!」
オレは携帯電話を取り出し、リルの写真を画面に表示して美紀に見せる......
......前に、一言だけお断りの言葉を言っておこう......
オレ:「とりあえず、今後はワンちゃんとか犬とか言うなよ?
オレの妹だからな。」
美紀:「そっか〜、信也君の妹か〜」
オレ:「うむ。可愛い、大切なオレの妹だ。」
そう言って、オレは狭山さんにリルの写真が画面に出ている携帯電話を渡した。
オレ:「どうだ? オレの妹は可愛いだろ?
同意したら、もう犬なんて言わせないぞ?」
美紀はオレの携帯電話を受け取り、画面を見た途端、
美紀:「......可愛い〜!! ホント、物凄く可愛いね〜!!」
オレ:「だろ〜? もう、可愛くって可愛くって、頭なでて抱きしめて
キスしたくなるくらい可愛いんだよ〜」
妹が可愛いと言われるのは正直嬉しい。
何しろ、オレの自慢の妹だからな。
美紀:「可愛いな〜......名前は何て言うの?」
玲子:「あっ、私も名前聞いてなかった......」
オレ:「リルって言うんだ。オレがつけたんだよ。
オレの付けた名前を直ぐに気に入ってくれてさ、オレが『リルってどうかな』
ってお袋に言った時に、リルが直ぐに耳をピクっと反応させて、嬉しそうな顔
してくれたんだよ。」
美紀:「へぇ〜......そうなんだ〜......
信也君、何気に名前付けるセンスいいね!」
玲子:「うん、いい名前だよね。
リルちゃんか〜......中々に合ってるよね、雰囲気にも。」
褒められた。何気に嬉しい。
美紀と玲子はリルの写真を見ながら、
美紀:「こんな妹なら私も欲しいかも〜......」
玲子:「そうね〜......可愛くって私も抱きしめてみたいかも......」
オレ:「そのうち見にくればいいさ。」
美紀:「うん! 今度の日曜日、信也君が暇なら会わせて欲しいな〜!」
玲子:「あっ! それいいかも〜......私も行っていい?」
オレ:「構わないよ。勇次はどうする? その後ついでにどっか行くか?」
勇次は玲子と美紀がオレの傍に来た時点でオレの左後ろに居たが、ずっとオレ達の会話
を聞いていただけなので、オレは勇次にも声を掛けてみた。
勇次:「ん? あぁ......そうだな......そうするか!
みんなで揃って出かける事もあんまりないしな!
いい機会だよな、確かに!」
オレ:「よし! んじゃ、今週の日曜日、うちの妹に会った後にでも、
そのまま街まで行くべし!」
美紀:「オッケ〜! 日曜日が楽しみになっちゃった!」
玲子:「そうね〜、色々と楽しみね〜......」
......という訳で、今週の日曜日はみんなにリルを会わせる事になった。
......と、そこで美紀と玲子の後ろから女子の声が掛かる。
声:「あの〜...... もしもし?」
その声に美紀と玲子が振り返る。
オレもその声の主を見ると、そこに居たのは相沢香織だった。
相沢さんがオレ等に話しかけるなんて珍しい事もあるもんだ......
玲子:「何?」
香織:「チョット聞こえたんですが.......藤崎さん......の妹さん?
......の写真を......私も見ても......いいでしょうか......?」
香織は少々オドオドしながら?緊張しながら?オレに聞いてきた。
オレ:「ん? どうぞ? 狭山さん、相沢さんにも見せてあげて?」
美紀:「は〜いっ! 香織ちゃん、信也君の妹ちゃん、ホンット可愛いから!
可愛い過ぎて卒倒しちゃダメよぉ〜?」
香織は、美紀が向けたオレの携帯の写真を見る。
香織:「(犬......やっぱり犬でしたのね......でも......)
かっ......可愛い〜ぃ!! 何て可愛いのかしら!!」
香織はリルの写真を見て思いっきり声を上げた。
オレ:「だろ〜?! ホント、可愛くて可愛くてさ〜!
それに入ってる写真なんか、オレが『可愛い顔して〜?』って言った時
に撮った写真でさ〜!
小首傾げて上目使いで、『リル、狙ってるだろ?!』って、
頭の中で突っ込み入れながら撮ってたよ、オレ!」
オレのそんな言葉や仕草を見ながら、少し唖然とした顔で、香織は
香織:「ホント、可愛いわ〜......
でも......あなた......ホントに藤崎信也ですの?」
とオレに聞いてきた......
オレは相沢さんのそんな言葉に口が開いたまま固まってしまった。
勇次と玲子と美紀は、そんなオレの姿を見ながら、
勇次:「やっぱりそう思うよなぁ......」
玲子:「ホント、妹ちゃんの事になると性格変わるわよね〜.......」
美紀:「私より天然な信也君はっけ〜ん!!」
と、笑いながら言ってきた。
オレはみんなの言葉を聞きながら固まったままで居るしかなかった。