表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/103

第十二話:妹犬との約束(その1)

第十二話:妹犬との約束、その1



その日の夜、オレはまた不思議な夢を見た。


小さい頃のオレ、そしてあの時の犬

その犬は、オレの傍にチョコンと座り、真剣な眼差しでオレに話しかけた。

 犬:「お兄ちゃん、私からのお願いがあるの。」

オレ:「うん? 何かな?」

 犬:「私の一生は10〜15年くらいしかないの。

    だから、ほんのわずかな時間でも貴方と離れていることは辛いの。

    私のことを思うなら、その事を忘れないでいて欲しいの。」

オレ:「......」

そうなんだよな......運命的に言えば、オレに突然の不幸が訪れない限り、

オレよりも早く死んでしまう運命なんだよな......

犬は、オレが思案する姿を見て、少しおどけて、

 犬:「そんなに真剣に考えないで。

    例え10〜15年だとしても、その時間はまだまだ長いもの。

    ただ、その事を忘れないでいてね。」

オレ:「うん、分かったよ。約束する。その事を忘れないで、心に留めておくよ。」

 犬:「うん! お兄ちゃん大好き!」

犬は、オレの足の上にのり、オレの顔を舐めた。



......と、そこでホントに顔が舐められている感覚があり、目が覚める。

......なんだか昨日と同じだな......とか考えながら、目を開けると、

リルが昨日と同じように、オレの顔を一生懸命に舐めて起こそうとしていた。

オレ:「......リル......おはよう......どうした......?」

リルは、「ウァウ......ウァウ......」と小さく吠えた。

オレが「トイレか?」と聞くと、リルはベットから降りて、部屋の戸の前に行き、

オレの顔を見た。

どうやらトイレらしい......

しょうがないなぁ......今何時だ......?

5時......か......しょうがない、起きるしかないな......

オレ:「リル......分かったよ......今着替えるから待ってな」

オレがベットから起き上がると、リルはオレに催促するように足をバタバタさせた。



今日も昨日と同じように公園に向かいながら散歩をする。

こんな時間でも、やはり犬の散歩に起きている人は結構居る。

今日は老人がチワワを連れて歩いていた。

老人:「おはようございます。」

オレ:「おはようございます。」

老人:「初めて見かけますね。なかなか可愛い子だ。お名前は?」

オレ:「リルって言います。女の子です。2日前に保健所から連れてきたんですよ。」

老人:「そうですか......」

老人は、リルの頭を撫でながら、

老人:「リルちゃん、よろしくね〜。うちの子はハチって言うんだ。男の子だよ。」

チワワのハチとリルは挨拶を交わしてお互いの顔の匂いを嗅いでいた。

オレ:「ハチ君ですか〜......ハチ君も可愛いですね。何歳ですか?」

老人:「うちのハチは8歳になりますよ。」

オレ:「そうですか......じゃぁ、うちの子よりもだいぶ年上ですね。

    うちはまだ1年経ってないみたいなんで。」

老人:「そうですか......でも、ハチはこれ以上大きくならないから、

    やっぱりリルちゃんの方が大きいね。」

リルは中型犬だから、小型犬と比べるとやはり大きい。

オレ:「そうですね〜......でも、ハチ君は年齢なりに堂々としてますね。」

老人:「そうですね。小さい体なのに、大きな犬にも動じないからねぇ.......」

そんな会話をして、オレと老人は「それじゃぁまた」と歩き出した。

犬を飼うと、色々な人に出会い、その飼っている子との出会いもある。

何気に世界は広がっていくんじゃないだろうか.......

そんなことをオレは考えていた。


そして、公園で昨日のようにリルを見守りながら、ブランコの柵に腰を降ろす。

昨日に引き続き、今日の夢......リルなのかな......リルじゃないのかな......

よく分からないよ。

でも......そうなんだよな......リルはオレの妹であるけれども、

オレよりも先に逝く運命にあるんだよな......

リルが死ぬ時......か......まだ実感ないよな......昨日の今日だし......

オレはそんな事を考えながらリルを見ていた。

オレ:「リル〜っ、おいで〜」

リルはオレが呼ぶと直ぐに走ってオレの元に来た。

オレ:「リルはオレの妹だぞ〜。大好きな、大切な妹だからな〜」

オレはリルの頭を撫でながら、そんな風に話しかけた。

リルはオレの言葉に答えるように、オレの顔を舐めた。


なに、まだ先のことだ。リルとの時間を大切にする事は忘れない。

今はそれだけを考えていよう。

そんな風に考え、オレはリルの頭を撫でた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ