表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/103

第十一話:妹犬と夕食

第十一話:妹犬と夕食



オレとリルが帰宅した頃、丁度夕食の時間となっていたようで、

居間には既に夕食が用意されていた。

お袋:「リーちゃん、リーちゃんのご飯はこれね。」

お袋がそう言いながらドックフードをリルに見せる。

.......が、リルは見向きもしない。

オレ:「リル、リルのご飯はこっちだぞ。」

そうオレが言っても見向きもしない。

お袋は、リルの様子に折れたようで、オレ達の食べている肉の味付けしていないもの

をリルにあげた。

すると、リルは美味しそうにそれを.......食べなかった。

大きいまま渡すと、口には咥えるものの、食べないのだ。

そこで、少しずつ小さくしてリルに与えてやると、やっと食べ始めた。

......何ていうか.......甘えん坊な.......

小さくしてやらないと食べないなんてなぁ.......


リルは自分の分を食べ終わると、オレの右に来てお座わりし、右手でオレの腕をチョンチョンと突いた。

オレがリルの方を見ると、「ハッハッ!」としながら物欲しそうにオレの顔を見る。

.......可愛い......が、あげたらオレの食い物がなくなる......

オレ:「リル、ダメだぞ? もう食べただろ?」

オレがそう言うと、姿勢を整えてお座りし、「ワン!」と吠える。

オレ:「だ〜め、お兄ちゃんはあげないよ〜」

それでもリルは諦めず、今度は小首を傾げて上目遣いでこちらを見る。

やっ......リル......それは反則だろう.......

オレがじっとリルを見ていると、リルは「クゥーン......」と泣いた。

あぁ、もう可愛いなっ!

オレはできる限り薄味になるように、オレが噛み砕いたものを自分の手に出し、

リルに食べさせる。

リルはそれを美味しそうに食べた。

......が、リルは段々と「もっともっと!」と言わんばかりに催促してきて、

最終的にはオレから口移しで食べた。

オレ:「はいっ!ごちそうさまっ!もうないぞっ!」

ご飯を食べ終えた後、リルの頭を撫でてやると、嬉しそうにオレの顔を舐め、

そしてオレの横に寝そべった。



夜、オレが宿題をしていると、オレの部屋の外から「ワン」と言う声が聞こえた。

オレ:「......ん?」

オレが戸を開けると、リルがオレの部屋に入ってきて、オレのベットの下側

に寝そべってオレの方を見た。

オレ:「リル、なんだ?そろそろ眠いのか?」

オレがリルの頭を撫でると、リルは目を細めて耳を後ろに畳み、嬉しそうな顔をした。

オレ:「お兄ちゃんはまた宿題があるからな、先に寝てな。」

オレがそう言うと、リルは顔を自分の腕で支えるようにして眠りに就いた。



その頃......香織の家......

香織は浮島を呼び、膝に猫を置いて撫でながら、今日の放課後の話を聞いた。

香織:「......で? 藤崎信也の家の前で何があったのですか?」

浮島:「あの......何と申しましょうか......

    お嬢様に電話していた時に信也様が出ていらつしゃって......

    その時の笑顔が.......何とも......あの......素敵で......」

浮島は手を胸の辺りでもじもじさせながらそんな事を話した。

香織は浮島のそんな行動を見て、「この方はこんな方だったかしら......」

と疑問に思いながらも、彼の今日の朝の顔を思い出した。

......確かに、彼の初めて見る笑顔は......素敵......だったかも......

そんなお嬢様の姿を見た浮島は、怒られる覚悟をしていたのに、

何故かぽわ〜んとした雰囲気に......

浮島:「......あの......お嬢様?」

香織は、浮島の声で我に返る。

香織は一つ咳払いをした後、少し焦りながらこう答えた。

香織:「なっ......何でも......ありませんわ......

    それより、浮島さん? その笑顔を見せた原因らしきものは分かりますか?」

浮島:「はい......そう言えば、初めて見ましたが、彼は犬を飼い始めたようです。」

香織:「犬......ですか...... なるほど、そういう事でしたのね......」

どうやら、保健所から犬を連れてきたと.......それを妹だと......

香織は今日の朝の事を思い出し、「フフっ」と嬉しそうに笑った。

浮島:「......お嬢様?」

香織:「はっ......なっ、何でもありませんわっ!

    今日はもう下がってよろしいですわよ!」

少し焦りながら、香織は浮島を部屋から退出させた。


その後、今朝の藤崎信也の姿を思い出しながら、香織は

香織:「ふふっ......あんな彼でも人の子なのですね......

    これなら彼を更正させられる筈ですわね......」

と、嬉しそうに、部屋から出た浮島は、

浮島:「あぁ......信也様......あの笑顔をもう一度見たいです......」

......と夢見心地に放課後の彼の笑顔を思い出していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ