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第九九話:妹犬の最後(その2)

第九九話:妹犬の最後(その2)



亡くなった翌日。

リルが死んだ時はちゃんとお葬式をしよう。

そう考えていたので、車の運転は兄キに任せて、オレが抱いて車に乗せ、

ペット用の斎場へ連れて行った。

斎場の人にリルを渡し、リルの葬式の準備をしてもらっている間にみんなが到着した。

美紀「信也くん!」

狭山さんが目に涙を溜めながらオレの前に現れた。

オレ「狭山さん......ありがとうね。」

狭山さんは首を横に振りながら、

美紀「ううん......だって、リルちゃんは私の妹でもあるもの......」

香織「美紀さん、それは違いますわ、私達の妹ですわよ。」

更に、相沢さんと浮島さん、勇次と水沢さん、法泉さんと佳山さん、

そして佐橋さんが来てくれた。

オレ「みんな......ありがとうな......

   今......リルの最後の準備をしている所なんだ。」

勇次「大丈夫か?信也......」

勇次は心配そうにオレの顔を見た。

オレ「あぁ......ありがとうな、大丈夫だよ。」

勇次「そうか......」

玲子「リルちゃん......」

香織「リルちゃんが亡くなったなんて.......まだ信じられませんわ......」

理香「そうですわね......まだまだ元気だと思っていたのに......」

由紀「信也さん.......元気を......出して......下さい......」

水沢さん、相沢さん、法泉さん、佳山さんはハンカチを手に持ち、涙を流しながら呟いた。


謙造「信也君......これを......」

佐橋さんは、オレに大きな風呂敷に包まれたものを渡した。

開けると、それはリルの写真の入った額縁だった。

写真の中のリルは、胡坐をかいて座るオレに寄りかかって座り、嬉しそうな顔をしていた。

その写真を見たみんなが、涙を流しながらも笑顔になる。

理香「あらぁ〜......素敵ですわ〜......」

香織「やっぱり、信也さんの傍に居るリルちゃんが一番可愛いですわね。」

由紀「可愛くて......素敵な......笑顔......」

玲子「ホント、いい笑顔だわ。」

美紀「この写真を見ると、リルちゃんも、信也くんの事がホントに大好き

   だったんだって感じるわね。」

オレ「佐橋さん、ありがとうございます......

   ......この写真のように、リルはずっと幸せだったかな......」

オレのその言葉を聞いて、浮島さんは微笑み、オレにこう言ってくれた。

美幸「信也様、この写真を見たままだと思います。

   間違いなく、リルちゃんは幸せだったと私は思います。」

謙造「うん。僕もそう思う。

   信也君、君はリルちゃんに沢山の愛情を注いだんだ。

   だからこそ、こんな素敵な笑顔でリルちゃんは写っているんだよ。」

佐橋さんはそう言い、更にこう付け加えた。

謙造「僕が人物写真を撮りたいって思うような姿だよ?幸せに決まってるさ。」

そして、勇次はオレの肩を叩きながら、こう言ってくれた。

勇次「信也、リルちゃんは間違いなく幸せだったさ。

   電話でも言ったけどさ、お前はホントにリルちゃんを妹として愛情を注いでた。

   それはみんなが理解してるよ。

   そんな愛情を受けていたリルちゃんが幸せじゃない筈がないだろ?」

オレ「......ありがとうな、みんな......」

そこで、斎場で仕事をする女性から声が掛かった。

女性「お葬式の準備が整いました。みなさん、こちらへどうぞ。」

オレ達は女性の後に付いて行った。



オレ「......リル......」

リルは、綺麗な花で飾られた中に静かに眠っていた。

自然と涙が溢れてきた。

女性「みなさん、リルちゃんへの最後のご挨拶と焼香をお願いいたします。」

みんなは2列に並び、焼香をした。

女性陣はみんな泣いていた。勇次や佐橋さんも目に涙を浮かべていた。

リルは、ここに居る皆に愛された。

......きっと幸せだったよな? リル?

オレは最後に焼香をし、リルの頭を撫で、リルの口にキスをした。

オレ「リル、リルは大切な大切な妹だぞ。

   また会おうな。きっと、また会えるよな。」


女性「それでは、火葬いたしますので、みなさん、リルちゃんの最後を見送って

   あげてください。」

リルの乗った台車が係員によって運ばれていく。

......リル......リル.......リルが.......行ってしまう......

オレが一歩前に出た所で勇次に止められた。

勇次は、オレの顔をじっと見ていた。

オレ「......」

オレは、リルが消えるまで最後までそこに立ち止まり見ていた。

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