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第九話:妹犬の居る兄バカの日常(4)

第九話:妹犬の居る兄バカの日常(4)



その日の午後、学校が終わり、信也は帰宅の途に着こうとしていた。

そんな信也の姿を見た香織が、何処かに電話を始める。


香織:「もしもし? 藤崎信也、彼を追いなさい。」

 声:『はい。分かりました...... しかしお嬢様、彼は特に何か悪い事をしている

    と言う感は......』

香織:「そんな筈はありませんわ! きっと彼は陰で何かをしているに違いありません!

    もしやとは思いますが、浮島さん、あなたも彼の毒牙に.......」

 声:『いえ、決してそのような事は......』

香織:「......とにかく、彼を追いなさい。そして、何かありましたら私に連絡しなさい。」

 声:『......分かりました。』

......お嬢様はどうしてあんなにも彼を嫌っているのだろうか.......

浮島(うきしま 美幸(みゆきは溜め息を吐きながら学校の校門でターゲットである

藤崎信也の姿を待っていた。

本来ならば、私はお嬢様の送り迎えをする役目の筈.......

しかし、お嬢様は彼を尾行する事を優先させる。

高校2年になって2ヶ月ちょっとだが、ほぼ毎日、彼を尾けること命令され、

そうしているうちに、車では自転車を尾行することができず、バイクで尾行するようになった。

この2ヶ月、彼が何か悪い事をしている姿を見た事はない。

確かに......目つきは鋭く、只者ではない雰囲気はあるが、ただそれだけの事だ。

そんな風に思案しているうちに、彼が学校から外に出てきた。

美幸:「さぁ......気合を入れて尾けましょうか......」

私は、バイクのエンジンをかけ、彼に悟られないように距離を取ってバイクを走らせ始めた。



......結局、今日も彼は何事もなく帰宅した。

美幸は、軽く溜め息を吐き、お嬢様(香織)に電話を掛け始めた。

美幸:「もしもし、浮島美幸です。お嬢様、今よろしいでしょうか?」

香織:『えぇ、浮島。藤崎信也の行動で何か不審な点はありましたか?』

美幸:「いえ、至って普通に、いつも通り、藤崎信也は自転車で帰宅いたしました。」

香織:『......そうですか......分かりました、戻ってらしてください。』

美幸:「はい......あっ、ちょっと待ってください.......」

香織:『どうしました? 何か彼が不審な行動を?』

香織の喜々とした声が聞こえる。

しかし、美幸にはそんな香織の声は全く聞こえなかった。

何故なら.......



オレは帰宅してすぐに玄関をくぐり、家の中に入った。

すると、リルがオレの事を待っていたらしく、階段の上からオレを見て、大きく「ワン!」と吠えた。

オレ「リル、ただいま〜。いい子にしてたか?」

オレは階段を登りながら、リルの方を見て聞いた。

リルはオレの顔が目の前に来た所で、オレの顔を舐めて「おかえりなさい」の挨拶をしてくれた。

オレはリルの頭を撫で、再び、「ただいま」と言った。

お袋:「信也、おかえり。」

お袋の声が居間から聞こえる。

オレ:「ただいま、お袋。」

オレはリルを抱きかかえ、居間へと向かう。

お袋は居間で暢気にしている。

オレ:「リルは結局家の中で飼うことに決めたんか?」

お袋:「そうね〜......まぁ、綺麗にしておけばいいという話になって、

    お父さんも渋々了承してくれたわ。」

オレ:「そっか。リル、良かったな、お前は寂しがり屋さんだもんな。」

オレは抱きかかえていたリルを降ろし、部屋に着替えに行こうとした。

リルはそんなオレの後ろを追ってオレの部屋に入ろうとした。

オレ:「リル、お兄ちゃんは着替えるから、お袋と一緒に待ってな。」

オレがそうリルに言うと、リルは大きく「ワン!ワン!」と吠えた。

オレ:「待っててな。」

リルは「クゥーン......」と泣いてオレの部屋の前でお座りした。


オレ:「リル、散歩行くぞ〜?」

リルはオレがリードを持つと、首輪をかける間もなく、オレの持つリードを自分で咥え

て歩きだした。

......首輪、要らないかも.......

オレの持つリードを介して、なんだか手を繋いで歩いているような気分になる。

妹と手を繋いで散歩か.......中々に楽しいかもしれない。

別に妹萌えとかそんな気はオレにはない。

が、何気に自分がリルの事となると人格が変わったようになるのも事実のようだし.....

......そりゃ、あれだけ勇次や水沢さんや狭山さんに言われれば.......

......というか、オレ自身もそれは何となく感じてたしな......

まぁ、いいか......リルはホント可愛くて、自慢の妹だしな......

そんな事を考えながら、オレはリルと一緒に公園に向かって歩いた。

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