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通学定期はもう不要です  作者: 久河世 真夕乃
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私が夢に見たネタものを気楽に書いたものなので、内容は薄いと思われます。暇つぶしにでも、それこそお気軽にどうぞ。


 高校入学後から、私はずっとバス通学をしていました。

 私が通う高校は、徒歩でも約二時間以上は掛かる場所にあるのです。

 地元は豪雪地域。冬は自転車通学は危険なので、交通手段は汽車かバスになります。

 誰かに車で送って貰える人、グループを作ってタクシーで通う人もいるけれど、私には一緒に通ってくれる人がいません。

 汽車通学の人達は顔見知りになって知人が増えるみたいだけれど、学校が終わっても汽車が通るまでの待ち時間があったり、大雪になって汽車が遅れます。

 汽車を選択しても、乗換の待ち時間や降りた駅から私の家までの距離を考えるとかなり面倒なので、私にはバスの方が向いていると思いました。

 徒歩約20分でバス停だし、そのまま高校近くのバス停まで座っていれば良いのだから。

 でも、バス代は汽車代よりも約二倍以上掛かり、毎月、学割定期を買う度にその万単位の金額に親への罪悪感を味わいます。

 しかし、バスは夏はクーラー、冬は足元からヒーター、混みあっていなければ居眠りも出来て、快適でした。

 それも、数か月後の卒業式で終わりですが。


 今日の学校帰り。

 私が乗る路線のバスより、前に来た他の路線からのバスへの乗客が多く、私が乗ったバスの客はかなり少なかったのです。

 各バス停に寄っても、前方のバスにばかり客が乗り、こちらのバスには誰も乗りません。

 私よりも先に乗っていた全客は中心地のバス停で降りてしまい、賑やかな中心地を通り過ぎ、このままバスの営業所へ向かう頃には、私とバスの運転手だけの空間です。

 私一人だけの為に走ってもらっているようで、申し訳ない気分になりましたが、同時に、最後尾の席の真ん中に座っていた私は、「私専属のバスみたい」と楽しみました。

 その楽しい気持ちもすぐに消えてしまいましたが・・・。


 気のせいかと思ったのですが、聞こえてきます。

 バスの運転手のブツブツとした独り言が。

 一瞬、不気味さに恐怖を感じましたが、具合でも悪くなったという可能性も考え、信号待ちの時に私は運転手の後ろの席へ移動しました。

 運転手席の後側の仕切りに貼っている彼の名札を確認します。


 宵国、さん。

 たまに見掛ける若い運転手さん。

 とりたてて印象に残る顔ではないのですが、降りる乗客達にいつも優しい笑顔で、「ありがとうございました」とか「気を付けて降りて下さい」とか、声を掛けてくれる人です。

 彼の真後ろに座ると何を言っているのか、聞き取れるようになりました。


「いやだ。いやだ。最後なんていやだ。いやだ。いやだ」


 「いやだ」を呟いていたんだ・・・。


 車内正面にあるミラーを見上げて見ると、いつもの彼ではない異常な表情になっていたのです。

 目が怖い。切羽詰まった青白い顔。


「宵国さん?どこか具合が悪いのですか?」


 私は思わず、運転手席に顔を出して声を掛けましたが、彼は気づかなかったようで、再び運転しながら同じ事と呟いています。

 ちゃんとバス停には寄るんですよ。でも、バス停に人はいません。

 運転手がこの調子だと、文句を言ってくる客もいるでしょう。

 客がいなくて安心している自分がいます。


 もうすぐ、私が降りるバス停です。

 定期を鞄から取り出し、次に降りる事を伝えるボタンを押しました。

 ボタンの音に反応して、彼はようやく口を閉じたようです。

 バス停が見える頃、信号でバスが止まりました。

 ここの信号は結構待ちが長いので、もう一度私は彼に声を掛けました。


「顔色が悪そうですが、どこか具合でも?開けてない水のペットボトルがあるので、飲みませんか?」

「君は・・・」

 私の事を覚えていたみたいで、どうしてここにいるのか、と彼は不思議そうな顔になりました。

「君。あ・・・あぁ、君。君」


 まるで、どこかの詩の朗読ですよ、それ。


 そんな私の心のツッコミを知らず。彼は、何か良い事を思いついた表情に変わっていきました。


 でも、その思いつきは私にとって不吉な思いつきでは?


 ゾクリと背筋に悪寒が走りました。


「あ、信号が青になりますよ」


 私の言葉で正面を向いた彼は、もう呪文のような呟きをせずに運転に取り掛かります。

 一安心です。


 ・・・と思っていたのに。


「あの!私が降りるバス停、通り過ぎましたよ。ここでいいので、降ろして下さい」


 彼はバス停に寄る事もなく通り過ぎたのです。


「君と今日、会えるなんてね。こんな日に会うなんて」

「え?」

「ねぇ、僕は今、このバスから降りたくないんだ。降りたら最後なんだ。降りたら、もう乗れない。僕はこの仕事を続けたいのに。あいつ等がこの仕事を辞めろって言うんだ。何で?何であいつ等が決めるんだ?嫌だ。嫌だ。嫌だ!・・・だから、逃げる。ねえ、このまま一緒に逃げよう?僕、君となら逃げられそう」

「ええっ?!」


 この人、精神不安定になってる!

 すでにバス停何か所か通り過ぎて、私の家からだいぶ離れてしまってるよ。

 何で私を道連れにしてんの?

 今日に限って、宿題が各教科大量に出てて時間かかるのに。


「私は早く家に帰りたいのですが?」

「嫌だ!」

「即答?!」


 この人の「嫌だ」をもう何回聞いたのやら。


「嫌だ、じゃないですっ。暴走するなら、私を降ろしてからにして。大体、私、関係ないですよね?迷惑なんですけれど!」


 私の大声にビクリと彼が反応しました。

 心持ち涙を浮かべているような・・・?

 

 え、え~?!私が泣かした事になるの?


「関係あります!僕は以前から君を気になっていました!」

「な・・・」

 私の大声に大声で返してきた彼。


 気になっていたって、え?好きって事?

 私、告白されているの?告白、初体験なんだけれど。


 動揺した私に彼は、早々に冷静となる言葉を吐いてきた。


「僕は、君の制服姿を見るのが楽しみだったんです!」

「はあ?!」



誤字・脱字・不快な表現がありましてもお許し下さい。 予定では、あと1~2話で終わりです。予定では、ね。

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