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筆記試験終了 そして対人戦闘試験開始

久しぶりに更新して、『この小説は未完結のまま約〜ヶ月以上の間、更新されていません。』の表示が出されていない事に安堵を覚える、今日この頃。

凍らせた食堂に置き去りにしてしまった事を華音に謝罪したのは一昨日。

英語科の試験テスト終了の鐘が鳴った時に、隣の席の速瀬アホが「ぃよっしゃぁー!」と雄叫びをあげて、小宮先生の鉄拳を落とされたのが昨日。

2日間に及ぶ筆記試験が終了した。

…1日目は中学校で学び終えた範囲だったので(国語を除けば)問題はなかったが、2日目は高校で学ぶ範囲だったのでさすがに疲れた。





すぐさま返された筆記試験の結果と成績順位に一喜一憂する間もなく、今日_5月25日から、対人戦闘試験が始まる。


対人戦闘試験はトーナメント式で、5日間のうち1〜3日目は各学年を1ブロック約40人の4ブロックに分け予選を行い、学年の代表者を4人選出し、4〜5日目で16人の学年の代表者による本選が行われる。

1試合の制限時間は、予選は15分で本選は60分である。

午前9時から午後5時まで行われる試験のうち、予選では4試合毎に本選では1試合毎に10分間の休憩が挟まれ、12〜1時の1時間を昼食休憩としている。


対戦相手は初回はランダムだが、2回目以降は変動する『得点ポイント』によって相手が決まる。

得点ポイント』は相手に勝つと+10ポイント貰え、それに加えて『時間タイム』によって加算されていく。

予選では各学年で、本選では出場者全員で各々の得点を順位化ランキングする。

なので、二回戦以降の対戦相手はポイントの所持数が自分とほぼ同じ者=実力が拮抗している者が選ばれる…筈である。



対人戦闘試験に於けるルールは

1、対戦相手を戦闘不能状態もしくは降参させた方の勝利

2、対戦相手に不要な暴力を行った場合、反則負けとする

3、武器の持ち込みを禁ずる

の3つである。



対人順位は5日間にわたる試験の終了時の総得点で決まる。

チートに勝つには全速力で全勝するしかあるまい。

まだ0を表示する手首の計測器カウンター見て、改めて決意を固める





各して対人戦闘試験が始まった。

第1学年予選が行われる武道場へ、事前に配られたトーナメント表を眺めつつ華音とともに向かう。

私はCブロックで華音はAブロックなので、予選で戦うことはない。

「対人戦闘か…。」

「美月の1回戦の相手は誰ですか?」

「1のBの桑崎俊一郎くわさきしゅんいちろうっていう人。知ってる?」

「あぁ、同じ中学校出身ですわ。」

「へぇ〜、世間は狭いねぇ。華音の相手は?」

田原源一たはらげんいちさんですね。…あ、あの方です。」

華音が指差した先には、同い年とは思えない身長・体格の大男がいた。

…身長155㎝の華音の対戦相手にこの男か。

「…華音、大丈夫?」

柄にもなく心配して、華音に声を掛ける。

「問題ありませんわ。別に取っ組み合いをする訳ではありませんし。」

魔法を使った戦闘で負ける気はしませんわ、と呟く華音が浮かべる柔らかな微笑に戦慄したのは初めてだ。

むしろ、相手が心配になってきた…





「お前が鈴原美月か?」

試合開始まで後10分というところで、不意に声を掛けられる。

「…そうだけど、何?」

戦闘前でピリピリしていた事もあり、何時もより低い声が出る。

「お、俺は桑崎俊一郎、お前の対戦相手だ。」

「へぇ、君が。」

振り返った先に居たのは柔らかそうな茶髪の男。

残念ながら身長で負けているので、見上げる事となる。

「ねぇ桑崎くん。君って強いの?」

見上げながら問うと、彼は少し赤らんだ笑顔で堂々と答えた。

「あぁ、俺は学年7位だ。」

「へぇ…学年7位ね。」

周りが騒めく。

「うわっ成績順位が学年7位!?相手の子かわいそ〜」

「俺の相手じゃなくて良かった…」

微妙な順位ではあるが、学年7位ということは学年で7番目に多く魔力を有するという事だ。

しかも、私は(当たり前だが)体力スタミナ筋力パワー速度スピードで劣る。

魔力と運動能力を兼ね備える強敵…かもしれない。

私が一般的で非力な女子だったら。




「お手柔らかにお願いするね、桑崎くん。」

「あ、ああ、よろしく、鈴原。」

「…名字で呼ぶの辞めてくれる?美月って呼んで。」

兄と同じ名字で呼ばれると、背中を百足に這いまわられる気分だ。

「え”っ……よ、よろしく、…美月。」

「よろしく、桑崎くん。」

私が微笑むと、彼は気分を害したのか顔を紅潮させて、武道場へ去っていった。

「…美月は天然タラシですね。」

「え?私何かした?」

「美月はそのままでいて下さい。」

…なんのこっちゃ。





広い武道場を4つに区切ったうちの1つに桑崎くんと向かい合って立つ。

審判の先生がストップウォッチを片手に結界の外に立つ。

「それでは対人戦闘試験、第1学年の部1回戦を始めます!」

高らかな宣言と共に9時を告げるチャイムが鳴る。

試合開始だ。




「来れ炎獅子えんじし、我が敵を焼き尽くせ!」

桑崎くんの右手から緋色の炎の獅子が顕在化する。

…詠唱有りとはいえ、中位魔法を一瞬で発動するのか。

学年7位は伊達じゃないな。

などと悠長に考えていたら、襲い来る獅子が眼前まで迫っていた。

「ちょ、おい!」

「美月!」

焦ったような桑崎くんの声と悲鳴のような華音の叫び声が聞こえる。

いや、別に自殺志願者(死にたがり)ではないので、ちゃんと迎撃するから安心してほしい。


「『凍結フリーズ』」



ピキッ

発動した炎魔法ごと、桑崎くんは凍りついた(・・・・・)

言葉の綾とかではなく、文字通り凍りついたのだ。

今の桑崎くんを端的に表現するなら、『氷像』である。

「ごめんね、桑崎くん。」

私が今回使った氷魔法は下位魔法の『凍結フリーズ』なのだが、一般的に使う魔力量の約50倍を込めた超強化版『凍結フリーズ』だ。

意外と応用が利くのでお気に入りの魔法の一つである。

…ただ、以前食堂の床を凍らした時は単純だったので無詠唱で十分だったが、今回の様に不定形な物や複雑な形の物を対象とする時は、想像イメージだけでは弱いので詠唱が必要になるのが課題だ。



「桑崎俊一郎、戦闘不能!」

審判の先生の宣言で試合が終了する。

試合時間、約3秒。

この調子で試合をしていけば、『電光石火』の称号_対人戦闘試験で試合時間が最も短かった者に送られる称号_を貰えるかもしれないな、等と考えていた私は華音の声で我に帰る。

「美月!早く氷魔法を解除しないと、桑崎さんが!」

「あ…。」

忘れていた。

ちなみにそのまま放置すると、全身が壊死して死ぬ。







「…あ”〜凍死するかと思った…」

「…解除が遅れて本当に申し訳ない。」

武道場外のベンチで毛布に包まる桑崎君と彼に謝罪する私。

氷漬けにしたことは反省しているが、後悔はしていない。

これから先の試合も全て同じ手法で行こうと思っていたりする。

「いや、試合だからな。謝る必要は無い。」

懐広いな、私だったら絶対ネチネチ言うぞ。

「桑崎くんは優しいんだね。」

「いっいやそんな事はないっ!」

そんな顔を真っ赤にして否定しなくても…



のんびりした会話の合間にふと時計を見たら、いつの間にか10時近くなっていた。

「あ、もう10時だ。ごめん、桑崎くん。私華音の応援に行くからもう行くね。」

「あ、あぁ…」

桑崎くんに背を向けて歩き出す。


が、すぐに声を掛けられる。

「す、鈴原!」

「下の名前で!」

名字で呼ぶなと言ったろうが!

興奮の所為かほんのりと赤らんだ顔で叫ぶ、桑崎くんの話の腰を圧し折る。

「みっ美月!今回は俺の負けだが、次は勝つ!覚悟しておけ!」

…人はこれを好敵手ライバルと呼ぶのだろうか?

「…そう、覚悟しておくよ。」

そう言って微笑むと、さらに赤面した桑崎くんが怒鳴る。

「お、お前が何位なのかは知らないが、そんな余裕でいられない様にしてやる!」

「楽しみに待ってるよ。…ちなみに、私の成績順位知りたい?」

「えっ…おぉ。」


ニタリと口角を上げて囁く。

「7位、…校内順位がね。」

「…はっ?」

学年順位は2位、と小さく付け足す。

悪戯が綺麗に決まった子供の様な気分だ。



「嘘だろ…格上だったのかよ。」

呆然と呟く桑崎くんは、しかしすぐに元の自信に満ち溢れた表情へ戻る。

「それでも、俺のやる事は変わらない!…首を洗って待っていろ!」

「そういう情熱的なの嫌いじゃないよ。」

初めて受けた、まっすぐでとても気持ちの良い宣戦布告に対しての私の返答は、桑崎くんのお気に召さなかったらしい。

血圧が心配になる程真っ赤になった顔のまま、桑崎くんが凍りついた。

_今回はもちろん、言葉の綾だ。




「じゃあ、またね。桑崎くん。」

華音の試合に遅れてしまう、と今度こそ武道場へ歩き始めた。

生まれて初めて出来た好敵手ライバルという存在が齎した胸のときめきを抱きながら。

凍りついた桑崎少年はその後、5月下旬の微妙に寒い風に吹き付けられ最終的に風邪を引く。


「くそっ、鈴は…美月の所為だ。…へっくし!」

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