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1学期中間試験 そして邂逅

10月19日 生徒会役員の名前を一部変更しました。

12月21日 一部改稿しました。

休み時間が残り5分となった時点で、教室は再び静寂に包まれた。

小宮先生が黙々と社会科の問題用紙と回答用紙を配る。

クラスに緊張が走る。



(…まさか、このテストも…?)



先刻さっきの国語科での衝撃はまだ薄れていない。

無いと思うが、もし社会科の問題用紙までショッキングピンク(ラメ入り)だったなら、この学園に入学した事を見直さなくてはならなくなる。

入学試験の時は、いたって普通だったというのに何故だ。

騙された気分だ。





試験再開(試合再開)のチャイムと共に、問題用紙の表紙をめくる。

(頼む…私のよく知る白い問題用紙であってくれ…!)

問題用紙の表紙をめくり、目に飛び込んできた物_それは。

今まで何度も見てきた、普通の問題用紙だった。



見飽きるほど見て、いつもなら疎ましいと思っていた普通の問題用紙が、今や愛おしく見える。

苦手な社会科の筈なのに、何故かとても嬉しい。












私は学んだ。

人は失ってから、その大切さに気づくのだと。

『当たり前』のことは『当たり前』に用意されたものでは無かったのだと。

…白い問題用紙、バンザーイ‼︎











…何かレベル高くないか、これ…?







こうして順調(?)に国語科・社会科・数学科・理科の試験テストをこなして行く。

社会科の問題のレベルが中3にしては高かったり、数学が1問1点で100問解かされたり、理科で大嫌いなカエルの精密なスケッチを求められられたりしたが、それらは些細な問題だ。

…でも、カエルのスケッチは嫌だった。




残すは英語科のテストのみで迎える昼食。

私は入学してからほぼ毎日している様に、華音カノンと2人で食堂へ向かう。





私立東雲学園は、3学年分の普通教室と幾つかの特別教室がある北校舎と、職員室を始めとする多くの特別教室がある南校舎、この2つの校舎と体育館などで構成されている。

食堂は南校舎1階にあり、外に面した部分の7割がガラス張りなので、とても明るくて綺麗である。






食事中に気になった事をふと聞いてみる。

「ねぇ、華音。…国語科のさ、問題…凄くなかった?」

「…えぇ、まぁ。凄いというか濃ゆいというか…」

2人揃って遠い目をする羽目になった。


「あの問題って誰が作ったんだろうね?」

うち(1のA)の担任の小宮先生は国語科担当だが、あれ(・・)は小宮先生の趣味ではないと思う。

…あの先生は、ラメとかキラキラよりレースとかフワフワが好きなタイプである。

「あ〜あの、2年生担任の桜田先生さくらだせんせいが作ったんじゃないかな?」

桜田先生は2のB担任で国語科の先生だ。

日本人離れした美貌とスタイルの持ち主で、確かにあの先生ならショッキングピンク(ラメ入り)の問題用紙でも似合わなくはない。

けど、国語科の教師として「源氏物語」を印刷する紙にショッキングピンク(ラメ入り)を選ぶのは如何なものか。

願わくば明日の国語科の問題用紙が白であります様に。






もぐもぐと持参した弁当を食べていると、何だか騒がしくなってきた。

「何…?」

華音と2人で騒がしさの元_すなわち食堂の入り口付近に目を凝らしてみた。

そこには…



「あっ‼︎侑李ゆうりくんよ‼︎」

「あぁ、玲央レオ様。冷たい視線がたまらないわ…」

柚月ゆずきさーん!こっち向いてー!」

石榴(ざくろ先輩…かっこいいなぁ。」



無駄にキラキラしい集団とそいつらに向かって黄色い歓声(一部野太い)を送る集団が居た。

「出た〜生徒会…」





東雲学園(ウチの学校)の生徒会は、選挙ではなく総合順位で決まる。

簡単に言うと総合順位の上位6名が学年、性別関係なく生徒会所属となる。

まぁ断る事も出来なくは無いのだが、この学園の生徒会役員=優秀、という図式があるので断られることはほぼ無いのだとか。






だが、入学式で生徒会を見た時からずっと思っていた。

絶対容姿も審査基準に入ってる…と。

もしくは知識量(魔力量)と容姿は比例するのだろうか…?

いやでも、もしそうならぐるぐるメガネのガリ勉はこの世に存在しないことになる。




「美月、私ちょっとお手洗いに行ってきますね。」

「うん。…う〜ん。」

華音の言葉を聞きつつ、思考の渦にどっぷりと浸かっていると、一際大きな歓声が聞こえた。





「生徒会長のりょう先輩よ!」

「文武両道でイケメンで、しかもそれを鼻にかけないなんて最高よね〜」

「私も生徒会入りたいな…」






「げっ…」

そう、何を隠そう我が兄、鈴原涼は私立東雲学園高等部第98代生徒会長なのだ。

さすがチート。

真面目に滅びて欲しい。







「生徒会の皆さん…相変わらず、凄い人気ね…」

苦笑しながら呟く華音に全力で同意する。

「ホント、下手なアイドルより人気あるんじゃない…?」

「あり得る…」



華音が行ってしまって、にわかボッチになった私は黙々と昼食を食べる。





「美月!」

と、食堂の喧騒を物ともせずに、張りのある声が私を呼ぶ。

「…何、兄さん。」

心の中で舌打ちしながら、嫌々振り返る。

嫌味なくらい爽やかに微笑む兄と、それを取り囲む美形集団。

…美形ってセルフでキラキラが出せるのだろうか。









「美月、初めての試験テストはどうだった?」

嫌味か?

嫌味か。

「別に。」

「そうか、大丈夫だったなら良かった。」

こっちの気も知らないでニコニコしている兄に対して殺気が湧く。

そして、仕返しにちょっと悪戯してやろうと思った。




「兄さんはもちろん、総合1位なんでしょ?」

「いや、まだ分からないよ。」

「ふ〜ん、でも1位になって貰わないと困るなぁ。」

「ん?何でだ?」

「…だって、1位の兄さんを超えなきゃ意味が無いじゃない。」

そう言って微笑みながら魔法を発動させる。

キーーーン

耳が痛くなるような高音が鳴ると共に、一瞬で食堂の床が凍る。

即席スケートリンクだ。

「なっ…」

「うわっ!」

生徒会役員(美形集団)が何か言っているが、知ったことでは無い。




「じゃあね兄さん。…試験テスト頑張って。」

捨て台詞っぽい台詞を吐いて、悪役っぽい微笑みを浮かべながら食堂を去る。

足元を氷漬けにされて動けない人々を後目にしながら。













「……あ、やっべ。」

氷漬けにした食堂に華音を置き去りにしてしまった事を、謝罪するまであと15分。

主人公、厨二病炸裂。


ちなみに

2月に美月が家出してから4月に入学してくるまでの間、涼は家に帰っていないので、涼は美月が絶縁状を叩きつけて家出した事を知りません。

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