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青年と悪友

「ハハ、相変わらず大変だねえ」

「ヨアヒム、そう思うなら、会話に少し割って入るとか、態度で示して欲しいな」

 話しかけて来た同級生に対して軽く返すレノ。まあ無理は承知の上でと言ってみただけだ。

「え? アハハハ、無理に決まってるだろう。それにだ、残念な事にこれでも貴族の端くれだからね」


 この明るく振舞う青年はヨアヒム・ペルレ・ベールケ。レノの親友をやっていて、この振る舞いなのに一応は士爵家ペルレの長男だった。士爵と言えば崖っぷち貴族とも言われるのだが、彼が大らかで居られるのには秘密がある。そもそもがベールケ家は先祖代々豪商の家系で新興貴族に数えられる。しかも政治的な理由で無理やりに貴族にさせられた面がある。よって貴族らしく振舞う必要は()()、つまりヨアヒムが貴族の端くれというのは口先だけ。


「アハハ、ヨアヒム面白い事を言うな、貴族としてか」

「え、だって無理に決まってるじゃないか、それに僕が言って止まる位なら当の昔に止まってるさ」

 実際にレノはヨアヒムが声をかけた場合を冷静に想像してみた。結果は無残な結末しか想像出来ない。いや寧ろ本当に照れ隠しでヨアヒムが斬られる事もありえ……


「あー、まあ、投げられようが、斬り捨てられようが、お前は俺の親友だろ、ハハ、期待してるよ!」

 先の想像を踏まえて肩を叩きながらレノは努めて明るく喋った。

「それ親友なら願わないよね?」

「え?」

「え?」

 まあこれだけ仲が良いと云う事であるのだが、ヨアヒムも伊達にレノの親友などやっていない。そのぽっちゃりした人懐こい容姿とは違い、魔術の成績も良く何よりも裏のレノを知る相棒でもあった。



「いいよ、もうこの扱いは諦めてるから。ところで百合は動くの?」

 校門へと移動する途中に周囲を確認した上でヨアヒムはレノに尋ねた。件の不正に関する事だ。

「さあな、今頃会議でもしてるだろうな。若干名、直線しか走れない馬鹿がいるのが心配だけど、まあ、なんとかなるだろう――」

「あーうん、あの子は突っ走りそうだけど、まだ正式な騎士じゃないし大丈夫と思いたい――」

 二人が同時に思い浮かべたのは背の低い少女であったが、もう一人の笑顔が浮かび上がってくる。


 ――微妙に王女も危ないかもなと。


 溜息を重ねた二人の会話は当然声が沈む事になる。


 校門付近まで辿り着くとそこで二人は別の方向へと別れる。ヨアヒムは寮の方に、そしてレノは学校の外へと。

「言うまでも無いとは思うけどさ、一応“あの子”は突拍子が無いから気をつけたほうがいいよ?」

 寮へと向かうヨアヒムは笑顔でそう告げた。その一言にレノは苦笑と手振りで返事をし足早にその場を去った。



 そして数十分後……

 白百合令嬢学院騎士団の詰め所の天井に“義賊グレイ”の姿が見られた。


 ――甘いと分かっていても仕方が無いじゃないか、俺はそういう性分だから。


 屋根裏に潜みつつレノはそう自分に言い訳をしていた、それは、まるで『心配する事さえも罪である』かのように。




 真実を知る前にレノがティアに出会ってしまっていたのは運命の悪戯だろうか。

 今は無きシュミット侯爵家(ザフィーア)の取り潰された真相は様々な思惑が重なって複雑だが、彼女の親族が深く係わっていると知った今であろうとも、二人の出会いは消し去る事など誰にも出来ない。


 レノアール・ザフィーア・シュミットとして考えるならば――


 ティアナフィア・ツェツィリエ・ディアマント・バルツァーは仇の一族の血を受け継いでいる。其れだけでなく、実際に裁きを下した王族の血までも。


 ただそれだけに過ぎない。

 彼女が仇の血は引こうとも本人ではないのだから。

 だが、こうも思わずにいられなかった。


――もし知っていれば、出会いなど避けていたのに。


 例え全ての真実に辿り着く為に始めた“義賊アッシェ”として対峙しても、こんな風に気にしたりもしなかったのではないかと、そう悩む。だが、幾ら考え続けても過去を変えることなど出来はしない。呪いのように――が染み込んでくる。


 レノは一旦思考を打ち切り、下での会議内容に注意する。まさか屋根裏で盗み聞く者がいるなど思いもせずに会議は続いていた。

【Full Name】

ヨアヒム・ペルレ・ベールケ

【Looks】

シルバーゴールドの髪

濃い灰色の瞳

ちょっとぽっちゃり系

人懐こい顔で目がくりくりしてる。

やせたらもてそうとは本人も思うが気にしてない。

身長170cm

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