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王女と親友

「この、この!」

 八つ当たりされる机には全くもって罪はないのだが、ティアの怒りは収まらない。

「あーもぅ、ムカッとするぅ! 何よ将来騎士になればその……もしかしたら認められて……フフ」

 イライラとして八つ当たりしているかと思えば、何やら急に妄想に耽りニヤケる彼女を、詰め所の同僚は静かに見守るしかない。


「またやってるよ、アレは完全に――」

「そうそう、ハッキリ告白すればいいのに」

「でもでも、流石に拙くない? 相手は――」

 この様に好き勝手な意見を交換する所などは、貴族の子女と言えども、まだ彼女達が学生であり、そして正規の騎士団ではないからだろう。白百合令嬢学院騎士団の詰め所ではこうした風景もまた日常であった。




 だがそうでもない者というのは何処にでもいるものだ。

「団長、宜しいですか昨晩の件についての反省会をお願いします」

 明らかに空気を読まない一人の少女がティアに話しかける。一切の怯みもなく告げる姿は凛々しくもあるが、他の騎士(女生徒)からすれば『そこは見て楽しむべきでしょう』と心の声が漏れ聞こえてくるような雰囲気が漂った。


「――それでお父上とお母上に挨拶をしてぇ、エヘ」

 が、しかし、そんな呼びかけなど何処吹く風と、未だにティアは妄想の中にどっぷりと浸っている。

「団長!」

 その態度に痺れを切らした少女は机を叩いて一喝した。


「うひゃい!? えっと、何かなぁクリスちゃん?」

 妄想から強制的に引き戻されたティアは背筋を伸ばし、真顔を取り繕いながら答えるのだが、其処には威厳など欠片さえも見当たらなかった。

「団長なのですから、もっと確りとして下さい、昨夜の『義賊アッシュ』に関しての反省会ですよ!」


 プリプリと怒りを抑えながら少女がそう述べるのだが、これがまた可愛らしい故になんとも締まらない。背丈も140cmに満たなく、知らない人が見れば何故高等部に初等部の子供がと、首を傾げ思わず微笑む程の容姿に威厳を求めるのは間違っている。

 しかし、その姿からは信じられないが実力はティアに次ぎ騎士団で序列二位。ティアと同じく第一学年にも係わらず学院騎士団に正式に入るや否や実力でその地位を手に入れている。


 彼女の名はクリスティーネ・スマラクト・ベッツ。ベッツ上級伯爵(スマラクト)家の長女であり、ティアの幼馴染。見た目はかなり――特に背丈に関して、違うが親友同士。本人でさえ背の高ささえと悔やむ程に他は部位は完璧な少女である、周囲も口には出さないが背さえあればと思われている。


 だが、その背丈の低さだからこその素早い立ち回りで騎士としての実力を発揮している事もあるので乙女心は微妙だった。一部にはその姿形が受けているのも微妙な心境になる原因だがそれはまた別の話である。


 容姿は以上だが、性格は兎に角も真面目、そして短気、更に先ほどの様に空気を読めない。残念美少女と言われているが当の本人は何故に残念と言われているのか、その自覚が無いのでそこに救いなどなかった。


「また妄想の世界に浸るから駄目なんでしょ」

 周囲からの『それが好いのに』とか『指摘してどうするの』という目線が突き刺さるがやはり気がつかない。

「べ、別に妄想じゃないわよ。私は彼の実力を、って、は、反省会するんでしょ」

 これを聞いて『ああ、誤魔化して可愛いなあ姫様』と心で皆が思う事が、若干一名を除いて騎士団の総意となっていた。


「では追い詰めた義賊アッシュを捕縛出来なかった件ですが」

「あれは、態とよ」

 何をもってそう言い切るのかとクリスが怪訝な顔で質問を返した。

「そう思われる証拠でも?」



 クリスの問いかけに対して昨夜の書類を取り出して広げるティア。それを確認ていくクリスの顔が驚愕に変わっていく。手も多少震えているが、ティアも昨夜の自分を思い出して、そうなるわねと納得している。

「こ、これ!」

「そう、驚くでしょ……」

 少し自分でも呆れてるのよと言いたげな返事をティアもした。それだけの書類なのだ。

「なんでこんな不正取引の書類(証拠)なんて物を姫様が持ってるんですかっ」

「はぁ、姫様ではなく団長って言いなさい。まあいいけど、ソレが義賊アッシュが態と追い詰められた振りをしてまで寄越した物よ」


 書類の中身は侯爵家と上級市民である商人の癒着に関する取引記録で、昨晩追い詰めたティアが“義賊アッシュ”から受け取ったものだ。これが真実本物の書類であるならば、大変な騒動になる事は明らかだった。これもアッシュが盗賊ではなく義賊と言われる由縁の一つ。


 曰く、義賊アッシュは己の為に盗みはしない。

 曰く、忍び込む屋敷の主は確実に罪を犯しいる。

 曰く、金品は圧政や不正によって追いやられた罪なき人々に配られる。

 曰く、人目につくのは態とである。

 曰く、騎士団と対決するの不正を暴けない騎士団の無能を嘲笑っている。


 こうした噂がまことしやかに庶民の間に広まっており、貴族にも一部擁護する動きさえ出ている。この学院でも義賊アッシュについては英雄説と偽善説とで論争が行われる程。そして実際の問題として、義賊アッシュ出没後には必ず不正の証拠などが匿名で届けられ、盗みに入られた事を訴えでなかった場合も含めて全て明るみに出てしまう事になり、多くの貴族や犯罪者が処罰されていた。


「姫、いえ団長、これをどうされるのですか」

 そう、問題はこの書類が本物だとして、正規の騎士団ではない学院騎士団でどう扱うか。それを“義賊アッシュ”から突きつけられていたのだった。

 ――レノが居てくれれば相談したかったのに。

 ティアはそう思いながらも先ほどの言い合いを思い出し頬を膨らませるのだった。

【Full Name】

クリスティーネ・スマラクト・ベッツ

【Looks】

ピンクゴールド、ツインテール

ブラウンアイ

母親の趣味でゴスっぽい格好

背の高ささえあればと自分でも思うほどに他は素晴らしい。

所謂ロリだがナイスバディである。

139.8cm(実寸)

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