初恋と無頼漢
「お姐さん、服見繕って!」
「おやレノじゃないか、どうしたんだい」
「ちょっとね、ティア、この店は知り合いのお店だから“普通”の服を選んで貰って」
「う、うん、宜しくお願いします?」
「え、ああ! 任せなさいよ。しかしレノがこんな美人を連れて来るなんて感慨深いねえ、院長も喜ぶだろうに」
レノが入った店は馴染みの店であるのは確かだったが、それは隠れ蓑であって、この頃のレノはまだ知らなかったが、諜報機関の拠点の一つだった。なので“お姐さん”も普通の人ではなく、ティアを見た瞬間に直ぐに誰であるか理解した、が、それでも何も無いように振舞ったのは流石と言えるだろう。
「違うって、今日はこの子に雇われてるんだ」
「まあいいよ、いいよ、ウフフ。普通の格好ね……まあなんとかするわよ」
――お、いやお姐さん……完全に誤解してるよ! でも……
そう思いながらも、こうした扱いは常であり、レノも余り気にはしなかった。
「さあ、これでどう?」
自信満々でティアに普通の服装をさせたお姐さんだった。そう普通なのだが……
「ど、どうかしら」
如何してか照れるティアの格好はそう、普通の格好をしてなお輝いていた。
「似合ってるんだけど……似合い過ぎ? というか一般人に見せるのって苦労するなあ……」
思ったまま素直に感想を述べる。レノもまだそういう話には疎い部分があった。そもそも普通に買い物をしている訳でもなく、身分を隠す為の行動であるから間違いではない。故に気持ちを正直に告げたのだが。
「まあ仕方ないさ……うーん、主義には反するけど、これで髪を隠せばどうだい?」
「元が良すぎだね、うんそれでいいや」
「……ッ」
レノの率直な意見はティアを一言で追い込んでいた。
「あらあら、レノ坊もホント隅に置けないねえ」
「え、いや、事実を言っただけじゃないかっ」
しまったと思ったけれど既に言葉は口から出た後で、ティアは顔をを真っ赤にしていた。ソレを見たレノも当然そんなセリフの心算では無いにしろ女の子にそうしたセリフを言った事は家族や親しい人以外に居なかった。
「フフフ、じゃあ勘定は院長に請求するから“デート”を楽しんでおいで」
「ちょ、姐さん!?」
「デ、デート!?」
考えようによっては確かにデートだった。
そんな事を考えもしていなかった二人にこの言葉は十二分に強烈だった。
「じゃ、じゃあ!」
と挨拶するとレノはティアの手を引いて店を急ぎ足で出る。
「ほら、全く手を確り離しちゃだめよ、ウフフ」
見事なまでに最後まで弄られ通しだった。と言っても手を離すのも危険である。意識して二人の顔がドンドン赤くなるのを見て微笑んだ後、“お姐さん”は即座に護衛を手配すべきだと判断して店の裏手で座っていた青年に声を掛ける。
「“竜殺し”に連絡しな、大至急だ、“レノ様”に護衛をつけろってね、アタシも直ぐに動くよ」
直ぐに男が消え去り、そして“お姐さん”は店を閉じる間も惜しいと大急ぎで走りだした。
レノはせっかく変装に近い事をしたんだからと色々な店を回る事にした、そうすれば実際に暮らしで必要な事も知れるだろうと思ったからだ。但し、相手がそう受け取る筈もない。
ティアの心は先ほどの洋服店からずっとドキドキとしてばかりだった。
なので手を引く青年と照れながら手を引かれるという何とも微笑ましく、そして絶好のカモのように見えるカップルが出来上がった。
まさかここまで初心で悪い結果を引っ張るとは“お姐さん”も思わなかった。事がもう5分遅く起これば何も無かったように処理されただろう。
だが、間に合わなかった。
「オーオー、日も高いってのに、見せ付けてくれるなあ、オイ」
「アー、全くだな。お陰でこっちは見てられなくて余所見しなきゃいけねえなぁ」
「こりゃあれじゃね、お裾分け貰わないとなあ」
「ウヒャヒャ! 全くだぜ、そうだなぁ有り金全部とその女で許してやるぜ?」
「そうそう、俺たちってば物凄く優しいからなぁ」
ゾロゾロと無数に沸く虫のように路地から出てくる無頼の輩達がレノとティアを取り囲もうとした。
【Full Name】
カルロッテ・フラーケ
【Looks】
赤茶色の髪の毛
黒目
未だに現役を続けるだけあり姿勢がいい。
人当たりのよさそうな優しい顔つき。
オシャレ!
男装ではないがパンツにシャツと動きやすい格好。
身長167cm




