表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/40

王都の闇夜で

 多くの市民が暗闇の中で静かな眠りについている、その頭上で男女二人が剣を交えながら疾走する。逃げるように避けるのは青年であり、攻め続けるのは美女の側。しかし、見た目とは違い攻める美女には何故か余裕は無く、避け続ける青年の方が軽く躱していた。

しかし、幾ら余裕があろうとも、屋根の上を逃げ続けるのは難しいのだろうか、青年は一際高い建物へと追い込まれた。如何に魔術が使えようとも、依然として人は空を飛べない。逃げる道を間違えたのかは不明だが、深夜の逃走劇は此処で終焉を迎えたようだ。


「其処までね“アッシェ”、漸く追い詰めたわ、今日こそ貴方が捕まる日よ。覚悟なさい」

 

 剣を男の背中に突きつけながら、勝利を確信する少女。その姿は凛々しく、鎧は着けていないが立派な騎士の装い。夜風にブロンドの髪が舞、月光を反射してきらめいていた。


 そして、背に剣を向けられながらも“アッシェ”と呼ばれる青年の余裕は崩れなかった。彼の姿は明らかに怪しく、自らが盗賊や怪盗の類であると示していた。闇に溶け込むような墨色の外套を纏い、顔も同じ色の布で隠している。


 余裕の表れか其れとも最後の意地か、アッシェは態とらしく毎回の如く“気障”な科白を少女に返した。


「フフ、腕を上げたね。だが済まない、お嬢さん(フロイライン)、残念だがそのお願いは――」


 幾ら態度は平静を装い、そして気障な台詞を紡ごうとも、アッシェにはこれ以上進む事の出来る足場も建物も無かった。


 誰が見てもこれ以上は逃げようが無いと云うのにも関わらず、アッシェはそのまま喋り続けた。


「――聞き入れてあげられないのさ」


と、そう告げながら、手を挙げて緩やかに振り返り、更に少女へと語り掛ける。


「これはお誘いを断るお詫びだと思って欲しい、美しい令嬢には少々似合わない贈り物だけどね」

 手に持っていた紙束をまるで花束のように投げ渡し、振り向き終えると同時に、アッシェはそのまま何も無い――


「えっ! あっ」


 まさに一瞬の出来事で対処に迷った少女。

 投げて寄越された紙を丁寧に受け取った事が()()な隙となった訳ではない。寧ろ最後の詰めといつも以上に慎重だった。


 意識が一瞬向けられたのは事実だが、振り向くアッシェに剣は突きつけたまま警戒はしていた。唯一の誤算があったとするならば、追い詰めたアッシェがまさか身投げという選択肢を選んだ事だ。


 彼女が予想したのは反撃だった、例え剣を突きつけた状態からでもアッシェならば必ず反撃して来ると思っていたのだ。()()()挑み剣術でそして体術で敵わなかった相手だけに必要以上にその両手へ意識が向いていたのだ。


 結果として、少女は完全に不意を突かれて立ち尽くしてしまった訳だが。





「そ、そんなまさか」


 目の前を一陣の風が吹き抜け、彼女だけを優しく撫でた。


 “アッシェ”の自殺、そんな筈は在り得ないと少女は判断する。例え目の前の出来事が紛う事無き現実を突きつけてもだ。つまり、自分がまたもや取り逃がしたであろう事を確信していたのだ。


 宿敵である『義賊アッシェ』が自ら命を絶つ事など在り得ない。

 信頼とも言える感情を捕縛対象に対して持つのも可笑しな話ではあるが、見れば解る事だと、少しだけ緊張しつつも少女は歩を進めた。


 そこから『落下た音』も聞こえなかった、これは『確認の為だ』と自分に言い聞かせて、万が一など起こり得ないと屋根の端から地面を眺めた。


「やっぱりね……」


 そう呟きながら安堵してしまった自分に気付き苦笑してしまう。下の様子を確認するも、騎士達(仲間)が魔術照明で周囲を照らし右往左往としているだけで、地面にはアッシェの痕跡すら見つからなかったのだ。本当に可笑しな話だなと思ってしまう。


 だが、顔を引き締めると手にもった書類を確認する。そして顔を歪めてボソリと呟いた。

「こんな()()で誤魔化されないわ……アッシェ、貴方はこの私が必ず捕まえてやるんだから」


 悔しげだが、どこか安堵したような独白を聞く者は誰も居なかった。



 まるで舞踏会で出会った男女(好敵手)舞踏(剣舞)を踊るかのように、王都を舞台にした夜会(物語)は終わる事無く幾度も繰り広げられ続ける、今までも、そしてこれからも、そう、二人が居る限り永遠に――

 義賊と王女様(騎士)というお話ですが、恋愛要素はある意味乙女転生より大目だと思います。

【Full Name】

レノアール・ザフィーア・シュミット

【Looks】

プラチナブロンドで肩付近までのウェーブヘア。

瞳はシルバーで鋭いが普段は眼鏡で誤魔化している

魔力を込めると濃くなる。

唇は薄め、血色はいい。

鼻筋は通っており汚れていなければ美男子。

細いが筋肉質。

身長180cm程で世間的に見て高め。

普段着は生成りっぽかったシャツに黒い革のズボン。

3本の紐で出来たベルトをしている。

唯一の形見である水晶を大切に身につけている。


【Full Name】

ティアナフィア・ツェツィリエ・ディアマント・バルツァー

【Looks】

ブロンドヘア ストレート、普段は結い上げている。

瞳は色彩が変わる虹色。感情や魔力の高まりで色を変える。

睫が長く奥二重でくっきりしている。

唇はぽっちゃり。

肌は訓練の為に少し日に焼けているが健康的。

身長は170cmで世間的に高く気にしていた。


【Profile】は内容バレが多いので省略……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ