表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

0. プロローグ

 地球から、遠く遠く離れた星メイヴェリン。その星の王の部屋に、一匹の少年と少女が呼び出されていた。

 なぜ、「人」ではなく「匹」なのかと問われると――メイヴェリンの住人は、猫や兎の姿をしているからだ。王は兎の姿をしていて、少年と少女は、猫の姿をしていた。

 人の姿になることも出来るのだが、二匹はそれを使おうとも思わなかったので、生まれてから数えるくらいしか人の姿になった事はない。

 庶民の自分達が王の部屋に呼ばれるなんて……。何事かと思い身構えていると、何の前触れもなく王に名前を呼ばれた。


「クルーガ・レイフォン、ルナ・レイフォン」

「「は、はいっ!!」」


 低い声で名前を呼ばれ、しかも突然の事だったので少しドキッとしてしまう。

 王の部屋になど、生きているうちに入れるかどうか分からない。もし入れたとしても、それは相当運がよかったか、王に信頼されているのどちらかだろう。

 しかし、クルーガもルナも、特別運がよいというわけでもないし、王もいきなり国民を疑ったりはしないが、初対面の王に信頼されているはずもなかった。

 ルナは自分達が部屋に呼び出されたことを疑問に思い、その理由を王に訊いてみる事にした。


「あっ、あの……なぜ私達をここに呼び出したのですか?」

「汝らは、『地球』という星を知っておるか?」

「はい。名前は聞いたことがあります」

「では、その星で夢魔達が悪さをしておるという事は――聞いたことがあるか?」

「……それは聞いたことがありません。今初めて聞きました」

「なぁ、その話を聞かせるためだけに俺らをここに呼んだのか?」


 王とルナの会話に、クルーガが口を挟んだ。いきなりタメ口で話す彼に、小声で注意するルナ。

 しかし、彼女の注意など最初から聞いていなかったかのようにクルーガは話を続けた。


「話を聞かせるだけならよ、他の奴でもいいじゃねーか……。俺はこれから彼女とのデートの約束があったんだぞ? なのに、急にここに呼び出されたせいでその約束は無しになるし……。あーあ、今頃あの子はきっと他の男と一緒に……いてぇ!!」


 このままだとクルーガは永遠に喋り続けていそうなので、ルナは自慢の爪で彼を引っかいてやった。


「静かにしなさい、バカクーガ。あんた彼女なんて最初っからいないじゃない。そしてここは王の前。悪い言葉づかいは改めるように」

「はぁーい。すいませんでぇーしたー」


 謝っておかなければ、部屋を出たあとルナに何をされるか分からない……。

 危機感を感じたクルーガは、謝罪の言葉を述べた。ただし、口先だけで。


「クルーガ。汝は話を聞かせるためだけに呼ばれたと思っておるようだが、それは違う。突然で悪いと思っておるのだが――ルナと一緒に地球へ行って、夢魔を退治してきてほしい」

「おいおいおい!! なんだよ……じゃなくて、なんですかそれ!? 俺らだけで!?」

「いや、誰も汝らだけとは言っておらん。地球人二人と共に『ナイトメアバスターズ』を結成し、夢魔達を地球人の夢から追い出す。そして二度と悪さをしないよう封印。ただそれだけの事だ」

「ところで王、これは何ですか?」


 クルーガとルナの前には、縦の長さが五メートルほどある筒状の物体が二つ置かれていた。

 興味を持って近づくルナ。すると、突然扉が開いた。どうやら、近づくと扉が開く仕組みになっているらしい。

 

「まだ公にはなっておらぬから知らないと思うが、これは最近開発された『瞬間移動装置』というものらしい。あと三、四ヶ月もすればメイヴェリン全体に存在が知れ渡るはずだろう」

「なるほど……。でも、なぜそれがここに?」

「まさか、その装置で俺らを地球に送ろうっていう魂胆じゃないだろうな?」

「汝らのため、開発者から特別に取り寄せたのだ。そしてクルーガ。その『まさか』だ」


 王の言葉の最後の方で、近づいてもいないのに扉が開いた。

 同時に部屋の扉も開き、人の姿に変身した王の護衛達が入ってくる。

 二匹も人に変身して抵抗するが、所詮はただの子供。普段王を守るため鍛えている護衛達に勝てるはずもなかった。

 そして軽々と抱きかかえられ、瞬間移動装置の中に入れられてしまった。

 

「いくら王だからって、やっていい事と悪い事があるわ!!」

「おい! 出せよ!! これじゃ俺達、まるで犯罪者みたいだろうが!」


 瞬間移動装置の扉に向かって、何度も体当たりした。鍵を開けようとも試みたが、外から鍵がかかっていて開けることができない。

 猫の姿に戻って、引っかいてみたりもした。大体予想はついていたが、やっぱり傷一つ付けることすらできなかった。そして、最後の抵抗も空しく装置の作動を知らせるアナウンスが鳴った。その後装置は激しく揺れ始めたが、その揺れも二十秒ほどで治まった。

 王はクルーガとルナの様子を確認するため、鍵のかかった装置の扉を開けたが、そこにはもうさっきまでいたはずの彼らの姿はどこにもなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ