リベルブルクで
自由都市リベルブルク。
ここに冒険者ギルドの本部がある。
街はギルドの重鎮から一兵卒、王家に所縁ある貴族、商人、職人、スラムには物乞い…。
あらゆる階級のあらゆる身分の者がいる。
世界のあらゆる物事がここへ集まる。
人、モノ、情報…。
「とりあえず今日は寝たいな。」
「うんうん。」
街に着いた時には日がくれてから数時間経っていた。
宿を探して街の中を進む。
リベルブルクの宿屋が全て満室になることはまずない。
冒険者が困らないよう、ギルドから宿屋には補助金がおりる。
ベッドがあるだけの所もあれば、飯を出すところもあれば、超一流冒険者たちが宿泊する超高級ホテルもある。
「ここ良さそうだ。」
看板を読むレイシスがつぶやく。
飯は出ないが、共用のキッチンがあるらしい。
魔柱石を使った、冷蔵室もあるらしい。
食材は自分持ち。
「安いし、あたしご飯つくるよー。」
「うん、ありがとう。僕も作るから交代で作ろう。」
宿屋に入ると、主人らしき男がカウンターでうたたねしている。
レイシス達が近づくとハッとして起きて立ち上がる。
「すまんすまん。」
「いえ。」
「二人でいいのかい?」
「お願いします。」
「これ鍵な。」
何故か主人はニヤニヤしている。
レイシスは気にならなかったというか渡された鍵に気を取られた。
真っ直ぐに加工された魔柱石の鍵。
「はい、すごいなこの鍵、魔柱石使ってる。」
「何それ〜。」
と言いながら、部屋へと移動し始める。
「ふむふむ、ん…。」
部屋に入ると、テーブルと椅子のセット、窓が二つ、照明が天井に一つ一応ロウソクもある…とベッドが一つ。
ー気にしないでおこうー
「僕、森でどれくらい寝てたんだろう?」
荷物を適当な場所におろして、たずねる。
「わかんない、日が少し傾くくらい。二時間くらいかな…。」
「そっか…。」
「体は大丈夫なの?」
「うん、逆にスッキリしてる。」
「そっか…その…。」
「ん?」
「人間じゃないの?」
「…。」
「ごめん…なんて聞いたらいいか、わかんない。」
「気にしないでよ。多分人間だと思うんだけど。」
「目が青く光ってて、翼が生えてた。」
「本当に…?」
「翼っていうか、背中から光がね…こう…フワって。」
「人間じゃないのかもね…。」
「…。」
「この力を使ったのは多分、初めてじゃないんだ。」
「え?」
「僕の故郷を自分で壊したかも知れないんだ。」
「どういう事?」
「その時は全然記憶が無くて、全て焼け野原になった中に自分だけ座り込んでたんだ。」
「そんな…。」
「そんな状況だった、その時はまだ小さくって考えられなかったけど、今考えれば僕がやったのかもってのが…一番納得行く気がするんだ。」
「レイシス…。」
「僕が全部壊したんだ、みんな殺したんだ。家族も、友達も…村のみんなも…。」
「何のために…こんな力…。」
「今回だってローラを巻き込んだかも知れない…。」
「レイシス、あたしは…。」
「今までパーティ組んでこなかったのは、僕のレベルが低いのもあるけど、怖かった…また無意味に人を殺すかもって…。」
「レイシス、もう寝よう。」
荷物に腰掛けていたレイシスの頭をぐっと抱きしめるローラ。
「ごめん、そうしよう…。」
ローラの肩を片手で押して離すレイシス。
「こっちこっち。」
レイシスの押して来た手を掴んでベッドまで引っ張っていくローラ。
「あ、ローラあのさ…。」
部屋にたった一つのベッドを思い出して戸惑うレイシス。
「もういいからレイシス寝よ。」
装備を外すとベッドにレイシスを引き込みながら言う。
「う、うん。」
レイシスが冷静を装う。
「狭いかな?」
「ていうかさ…。」
ーシャワー浴びてからじゃないと…って違う違う!ー
「もういいから寝よ。」
「うん…。」
ーこういう子なんだな…僕は何を考えてるんだろうー
目を閉じるレイシス。
「おやすみ。」
「うん、おやすみ。」