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魔導師レイシス、神と悪  作者: tommy
1章 一人前になるという事
25/29

出陣!

「くっ、素早い!」

「複数であたれ!孤立させろ!」


体長三メートル程の二頭を持つやせ細ったオオカミ。それぞれの目は焦点が合っていなく方向はバラバラに向いている。頭のサイズに合わないツノが生えている。体表は薄汚れている。どこか苦痛を訴えるようにもみえる。同情でも買おうかという作者(サイエンティスト)の作為かは知れず、守備隊の反攻は一進一退のまま。


「くるぞっ!」

ツノが淡く光るのを確認した兵士の掛け声で大盾を持つ兵が前へ出ると同時に前衛がそれに隠れるように下がる。


「なかなかの圧力(プレッシャー)…」

魔法銀が練られた大盾で稲妻が四散する。と同時に二頭狼の横から何かが飛んで来るのを数名の守備隊員が視認する。気づけば転がる二つの頭。反応できた二名の兵士が剣で頭を突き刺し、片割れが槌でもう一方の頭を叩き潰す。

首が無くなった胴体が逃げようかと後方に引き返す様な動作をみせると四足が崩れ落ちる。


「ドルフさん助かりました…」

「まだ終わってない。おそらく感知的な魔法を使っている。雷撃の前後の間にわずかにその魔法が途切れるようだ。そこを狙え。」

「流石ですね…」

「俺も数体戦って気付いた。自爆する事は無いようだが首が無くてもかけて行く、取り逃がすな。」

「了解!」


[援軍到着!戦線を維持しろ!]


「来たか。」


ーーーーーー

転移直前…

「あなたすごく出力が下手くそ。」


「まあそりゃ全力全開する訓練しかしてなかったからねーハハ…」


「笑い事じゃないわ。魔力もまともに扱えないものが英雄の力を扱えるようにはならない。魔力の訓練は力のコントロールの訓練にもなる。」


「なるほど…」


「なるほどじゃないわよ、あなたかなり消耗してるでしょ。」


「確かにけっこう疲れた…」と苦笑いのレイシス


「背中向けて。」

フィーネがレイシスの背中に手を当てる。


「うわ…すごい…」

魔力が湧き立つ感覚を覚えるレイシス。


「私が魔力を生み出すエンジンにもなれるの。」


「エンジン?」


「あーもう…動力源?分かるかしら?」


「あーうんうん。」


「ただあなたバカバカ使うと流石に消費に追いつかないわ、安心はしないで。奥の手だと思ってちょうだい。」


「分かった。」


「ダイブ状態だと効果は増すわ。」


「そうなんだ。」


「奥の手よ。」


「はい…さっきはそんな感じじゃなかったのにどうしたのさ…」


「これからは戦闘よ。敵は命を奪う気でくる。」


「そうだね…」


「レイシス!行くぞ!」


「はっはい!」

ーーーーーーーーー

「総司令自らの援軍恐縮です。醜態を晒し申し訳ありません。」


「構わん、憂さ晴らしだ。」


「え?」


ハシムら援軍の先行部隊が第二防衛線の襲撃を受けた砦の裏手に到着する。人には対抗し得ない悪魔の話をしていてやや苛立ちがあるハシム。そんな事とは知らずに呆けた声の守備隊員。


「状況はどうじゃ?」


「ハッ!投下されたモンスター、敵陸戦群との戦闘は膠着状態でしたがドルフ三佐ご助力で好転してきています。陸戦群を投下した飛行型を二、三割取りこぼしています視認による内の割合なので性格な総数は不明です。」


「よし、半分兵を休ませろ。」


「半数ですか?流石に…」


「俺が行く。」


「了解ッ!」


剣聖が出るって言ったら半分下げるの平気なんだ…

レイシスの驚愕と興味が渦巻く。


「遠距離攻撃、魔法で攻撃できる者は問題ない程度で飛行型の駆除に回れ。守備隊からも今来た俺らからもだ。」


「それについてですがご報告がございます。」


「なんだ。」


「気になることがありまして。飛行型に関してですが異様に脆いのです。合成獣(キメラ)を運んで来た飛行型の中にワイバーンがいたのですがそれですら下級の魔法が当たると消えてしまうのです、こう…煙にようにというか。爆発した個体などは確認されていませんが、お気をつけて。」


羽付きトカゲ(ワイバーン)か…素手でもひねりつぶせるがそこまで脆弱でも無いだろう?」


「確かにな、制御するために性能を犠牲にしたのかもな、恐ろしい事をする…警戒するに越した事はないな。」


ワイバーンか…C級だったよな?下級魔法で消えてしまう…?

レイシスが経験を混じえない知識だけで考えてみる。


「あたしどうしようかな?」


「ん…ローラは砦の向こうかな?」


「その方がいい?」


「うん…多分…」

ブーメランにでもして飛んでるやつでも問題なく倒しそうだけど…

レイシスの頭に空想の狩猟民族の絵が浮かぶ。


「大丈夫だ、にーちゃん。しっかり守ってやるよ!」

「おう任せとけ!」


「よろしくお願いします…」


「さっきの戦い見てましたよ?彼女もきっとお強いのでしょう?」


「そうですね…たぶん、はい」

察しがいいとギグの時のように剣に関わる事に触れられそうで苦笑いで答えるレイシス。

見てる人は見てるのか…


「たぶんでなにー?レイシスー!」


「あーいや、ごめんよ!」

慌てるレイシス。実は本音でパーティをろくに組んだ事もないレイシスにはとんと分からないのだ。強さに関しての役立つ物差しを持ち合わせていない。どれほど自分が異常な戦いをしていたのか。先程の訓練はキメラの情報収集で夢中で冒険者達の実力的な側面で観察眼は働かず…


「だいぶ仲良いみてーだな!ははは!」

「戦う前にいちゃつくのやめてもらっていいか?」


「あーもう…」



ーーーーーーーー

「感知魔法の合間縫ってって…ッ!」

「簡単に言ってくれるよなっ!」


ドルフ見つけたキメラ特性が分かれど…言われて容易くできる者は少ない。

愚痴をこぼしながら戦う兵士達が牙むく二つの頭の突進に身構えると、唐突にそれは起こる。


一閃、轟音、土埃。


「感知魔法?ぬるいな。」


「「「総司令ッ!!!」」」


「半分兵を下げるキメラは俺がやる。小物を片付けられる兵だけ残して大勢を整える。」


「「「はいッ!!!」」」

あんな地面抉ってくれて…整地すんの俺らなんだよな…


ーーー


「ふうっ…。」

またキメラを討伐したドルフの背後からチョロチョロと毒々しい蛇がにじり寄る。


トスッ!

投げナイフが蛇を地面に縫い付けた。

「すまねぇ、余計だったかい?」


「いや、手間が省けた。」


「そりゃ失礼。一応援軍できてるんでね。戦わねぇといけないんでね。ギルド軍将校様の気分を害したかなとおもってね。」


「戦場だ、余り気を抜くなよ。」


「へいへい。」


「お前達(冒険者達)の面子でであれを受け持てるか?」


「そうだな…情報はもらった近づけさせないで見せるさ。」


「頼んだ。」


「素直に言われると照れるな、おう。」


ズザアァァーーー!

「やっぱりちょっと重いかな。」

赤い装束に要所に防具に剣を携えた少女が飛び込んで来た。


「おいおいどっから飛んで来たんだよ、ねーちゃん。」


「あっち。」


「ありがとー!」


バラバラのキメラ


「二つ頭あるの倒した方がいいかな?私あっち行ってくる!」


「早い…何者だ…」


「スーパールーキーの彼女だよ。」


「スーパールーキー?」

ーーーーー


「あんた程力あるのにEランクなんてな。今まで何を?」


「細々とした依頼を…」


「あー親切にも細い依頼を沢山受けるタイプか。あーゆー奴らはなんだか売名行為みたいに見えるけどあんたはホントに親切でやってる感じだな。」


「どうも…」


「すまん、やりにくいな。実は俺もマジックシューターでさ!なんかご教授頂こうかななんておもったんだけど…ちっとあざとかったな」


「いや、A級ランカーに教えるなんてっ!」


「謙遜なんて通じねえぞー?あんたも食えない奴だな。」

「それよりどう思いますか?簡単に消えてしまうモンスター。」


「俺も見た事がねぇ。捕まって何かしら改造(いじられてる)んだろな」


「大賢者様はその弊害かなって判断なんですよね…」

なんだ…その代償に何を組み込んだ…空…簡単に消えてしまう…消える…何か間違っているんじゃないか…


望遠(ズーム)

体制が崩れる事無く当たると消えてる…


「かなり高いな…。」

あの高度を飛ぶ理由が観測される事の回避と考えると自然だけど…

違う理由があるとしたら…


「上から見られたくない…とか。」


「それはいい線いっとるかもしれんな。」


「あ、はいっ!ですかね…」

ロシュトゥムのつぶやきに驚き声が上ずるレイシス。


「お主に確認を任せられるか?」


「え、あ〜…」

「大丈夫よ。」

フィーネが唐突に現れ割って入る。


「え、フィーネ…」


「では任せるとしよう。」


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