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魔導師レイシス、神と悪  作者: tommy
1章 一人前になるという事
24/29

戦闘配備!

訓練所屋外演習場、続々と出撃要員が集まる。


「待たせたな。」

剣聖ハシムが二メートル近い身長と負けぬ程の剣の柄を背中に見せながら現れた。


「あれが剣聖…」

レイシスが弓をグッと握り込む。

僕まだEランクどぁぞ〜ギルドの創設者がこんなにたた、近くにぃー!

心の中でしゃべっているだけで噛んでしまうレイシス。


「ハシムの旦那、今回は帝国の侵攻なんですかねぇ。」

腰にソリのついた(つるぎ)を持つ男がハシムに話かけた。ギリーの使っていた剣よりもだいぶ大きさも厚みも少ない剣だ。


「さてな…俺らも確証は得られんからな。」

腕組みして上になった右手の指であごを撫でるハシム。右斜め上に視線が彷徨う。

どうしたら帝国に仕掛けられるか…

そんな事を考えているとはまだ皆気づいていない。


「キメラにしたって帝国の仕業なのは明らかでしょう?今回も西から。状況証拠は完璧ですけどね。」

また別の冒険者が言う。レンジャー、ハンターと見受けられる様子のその男のセリフは自身を誇るような雰囲気がある


「ああ、俺もそう思う。ひねり潰したい…。」

一瞬にして広い空間にひどく重い殺気がのしかかる。

全ての者がこちらを向いたろうが反応しない者が数名。


「総司令殿?そーゆー事を平気で言っては…。」

理知的な感じの冒険者がコホンと咳払いの後に言う。ハシムが連れてきた部下数名も各々と控えて下さい〜というような事を述べている。


「ハハハハ、冗談だ。」

声を出して笑っている間に殺気が一瞬引いたが冗談だと言った瞬間、口角がグネリと天を向いた時に冷たい笑顔には殺気がこもる。凍てつくようなピリピリした殺気だ。


「でた、殺意の天使(キリングスマイル)。」


「ハハハハハハハ!」


凄い殺気だったけどけっこう面白い人なんだなぁ…ハハハ〜…


「ハシムさん。」


「ギリー、訓練中だったらしいな。面倒をかけるが頼むぞ。今回は本部付きの参謀補佐だったか?」


「ええ、はい。あの…彼凄いんです。ちゃんと見といてあげて下さい。」


えっ!僕?やめてくれ…


「ほう…名は?」


「レッ!ゴホッ!レイシスですっ!」


「ハハハハ!緊張か?いい心構えだ、そのまま気を抜くな。」

ズドンと肩を叩く。

しまった、昂ったまま手を置いてしまったが…ん?中々手応えありそうだな…


「はいっ!」

不意に表情が消えたのを感じ取ったが、噛まずに返事出来たレイシス。


あ、強化魔法かけたままだった…なんか不愉快だったのかな…


「ギリーの推薦だ、期待する。」

なかなか面白そうなやつだ。


「はいっ!」


「全員聞けえぇーーー!!!!」

振り返り叫ぶハシム。


凄い声だ、音響魔法(スピーカー)使ってないよな…?


ーーーーーーーーーー

警報後の三大冒険者達…


「襲撃じゃと!」


「とにかく参謀本部にいこう。」


「そうじゃな。」


「掴まって!」

シェリーがブレスレッドにぶら下がるたくさんの小さな青みがかった球状の装飾のなかの一つを掴む。


三人は一気に別室へと転移する。


「状況は?」

転移してきたロシュトゥムが声を発する。視線でロシュトゥムの復活を歓喜する者もいるが皆キチンと作業を続ける。


「異種族モンスターが徒党を組んで空と地上に侵攻してきています。数はまだ把握出来ていません。これから増える可能性があります。」


「どこまで来てる。」

ハシムが机の上の資料を適当に手に取りながら尋ねる。


「第一防衛ラインで小競り合いが始まっています。」


「随分近寄られたのう。」

魔王の手の者では無さそうだな…


チラと顔見合わせ、頷く三人。


「第三防衛ラインを飛行型モンスターが陸戦要員と思われるモンスターを掴む形でおそらく高高度で通過。本部のレーダーの範囲外だったために戦闘なく通過されたと思われます。第二防衛ラインにて本部レーダーによる捕捉を確認、通達後第二防衛線砦所属の魔導師部隊が広範囲殲滅魔法にて敵を多数撃墜、数は視認できるレベルの内のカウントなので総数が不明のため今後も断続的に現れるという判断をしています。敵後続部隊が第二防衛ライン手前で飛行型モンスターが陸戦部隊を投下、小型の合成獣(キメラ)と思しきモノが混じった混成陸戦部隊と守備隊はまもなく戦闘に入っています。現状はここが主戦場です。砦の第三防衛線側で敵を抑えています。」


「キメラは対抗出来そうか?」


「あの、それが…。」


「なんだ?。」


「ドルフ三等陸佐が俺を送れと聞かなくて…おそらく問題はないかと…状況が変化し次第連絡しろと伝えているのですが『三等陸佐が敵を蹴散らしている』という報告からその後特に連絡はないので…」


「あやつは階級というモノが分からんのか…。」


「ブハハハハ!上官に命令するか!その意気やよし!帰ったら酒でも奢ってやろう。」


「そうやってつるむから馬鹿は治らないのよ…。」


「まあ、勝てば官軍、じゃ。」


「はぁ…。」


「部隊の編成はどうなっている。」


「訓練中だった魔法殲滅隊三部隊を含む中隊で編成をしています。現在、転移支援部隊(テレポーター)に第一、第ニ防衛ラインそれぞれ三箇所に新たな転移先の陣の作成を急がせています。」


「おりこうじゃのう。」


「転移陣の作成後に部隊の編成が完了する手筈です、速やかに行動に移れます。」


「ノーラス流石の手筈だ。この後も頼むぞ。」


「恐縮です、こんな時役立たずにはいられませんから。」

ノーラスと呼ばれたその男は敬礼した、苦笑いするとそう答える。


「ハシムは第二防衛ラインにいくか?」


「ああ、もちろんそのつもりだ。」


「第二を守れば戦闘終了…?なわけないわね、怪しいわ…」

総司令が出撃…もはや止めもしないシェリー。


「確かにキナ臭い。」


「自分も何か全容を掴めないなと思ったのでリベルブルグより北北東六十キロ程で行軍訓練中のハイネマン王国軍将軍にも事の次第と警戒されたしと伝えてあります。」


「そうか、助かる。ドルフがすでにいるなら部隊の転移先はもう少し練った方がいいかもしれんな。どこで仕掛けてくるか分からん。」


「えーそれとですね、本日訓練所内で集団戦闘訓練が行われていまして、冒険者のギリー殿から助力の打診がありました。ギリー客員訓練官殿が…見繕ったから使ってやってくれと…。」

書類を二、三枚見ながらノーラスが告げる。


「許可しろ、使う。」


「はい。」


「ギリーか、早いのうあやつは。あやつもここに呼べ。参謀補佐で迎えろ。リベルブルグに“委任者”達がいれば彼らに防衛の要員に加えろ。言い値で報酬は払ってやると伝えていい。ロシュトゥムの要請だと伝えろ。断る者は特に粘るな時間が惜しい。」


「彼らを、了解しました。」


「防衛を任せるって事?まさかあなたも出撃する気?!」


「何か問題かのう?」


「ちょっと待ちなさい!」


「シェリーよお前を何のためにギルドの重役に組み込んだのか…分かっていないお前ではないな?」


「分かってるわよ意志を継ぐ者として…。」


「いやーワシはな〜…。」

グダグダと話をして納得させにかかる。


夫婦茶番と呼ばれるロシュトゥムとシェリーの小芝居が始まる。芝居しているのはロシュトゥムで踊らされているのがシェリーだ。兵隊達はあきれつつも仕事を進める。



「ロシュトゥム、お前が俺と手勢を先に送れ。ギリーの冒険者隊と軍の数名連れていく。少人数なら再度の移動もしやすい。」


「ジジイに優しくしないと地獄に落ちるぞい。」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


緊急戦闘配備の放送が流れた後…


「助かった…。」

へたりこむレイシス


「べつにそんな…そもそも死なないって話だったでしょう?」

「凄かったよレイシス!」

フィーネが何言ってるんだかといった様子で、ローラが見た事もない戦いをみて興奮気味に近寄ってきた。


「ありがとう…それにしても、なんか戦闘配備って…。」

ローラの言葉にしか礼は述べていない。


「帰りましょ、もう遊びはおしまいなんでしょう。」


「でもさ、魔王の一団だったりしない?」

少し周りをキョロキョロしながらフィーネに耳打ちするレイシス。


「んーまあその可能性もあり得るけど、今回はありえないわ。」


「どういうこと?」


「ここが消し炭になっていないから。」


「え…。」


「来る可能性はあるわ、もちろんね。ただもし本当に“魔王の一団”が来てたらあんな放送も無くここは消え去ってる。魔王の目的は破壊と殺戮、文明と人を消しに来るのよ。そーゆー戦いになるの、魔王との戦いは。だから今あなたにしたい事して経験積めばいいって話したのよ。」


「あ、ああ…そう…なんだ…。」

英雄やめたいんすけど…


「出ましょ。」


「とりあえず出よー!(フィールド)出て特訓するー?」


「う、うん。そうだね。邪魔になりそうだし。」


「まーってまてまてまて!君ダメ帰っちゃ!」


「え、僕ですか?」


「なんでそんな強いのにEランクなのか意味わかんないけど君は重要な戦力だ。」

駆け寄ってきたギリーが肩に両手を乗せて来た。


「戦力って…。」


「君の戦い…少なく見積もってもA級クラスだ。戦列に加わってくれないか?」


「敵は…何ですか?」


「モンスターの群れだそうだ。君はポテンシャルはあるけど経験不足に見えた。いい機会だと思った。」


「それは…」

確かに何も言えない…


「とにかくこれから動きが決まって指令が降りてくる。俺は参謀本部と連絡を取る。あとからやっぱりやめたでも構わない!待っててくれたら嬉しい!」

走り去っていくギリー。



「勝手ねー。」とフィーネ。


「勝手ねー。」と真似するローラ。


「ハハ…。」


ーーーーーーーー


「全員聞けえェーーー!!!!」


「敵はモンスターの群れだ。しかも異種族同士の。皆よく知っての通り多数の異種族同士で群れを成すなど聞いた事も!見た事もない!明らかに我らがギルドという存在に害を成す悪意ある何者かの犯行だろう。貴様らこれをどう思う?」


ゴゴゴゴゴゴッ!

あたりで武器を叩き鳴らす音が響く、揺れさえ感じる。


「凄いな…なんなんだ…。」

レイシスがたじろぐ。


「よし…ぶっ潰せ、先にいく。ロシュトゥムはまだかぁー!」


ロシュトゥム!大賢者ロシュトゥム!ここにくるのか!

心ときめかせるレイシス。


「お前が演説しとったから隠れてたんじゃわい。」


きたー!てかすでにいたー!

頑張って表現は顔だけに抑えた。


「準備は大丈夫か。」


「オーケーじゃ。随分若い子がいるが彼らも行くのか?」

もちろんレイシス達の事だ。


「ああ、ギリーの推薦だ。」


「ああ、先ほどチラと念話(テレパシー)で話しかけた時に聞いた子か。ほほー。」


「おじいちゃん、多分あたしじゃないよ?」


「こらっ!ローラ!」


「はっはっは!ちょっと茶目っ気発揮しただけじゃ〜君じゃろ?名は?」


「レッ、レイシスです!」

三大冒険者のうちの二人にいっぺんに会うなんて〜気絶しそうだ…お師匠さまぁ…


「ほっほっほ、戦場では落ち着いてな。」


「はい!」

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