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魔導師レイシス、神と悪  作者: tommy
1章 一人前になるという事
23/29

三大冒険者

見知らぬ天井…じゃないのう…ワシの部屋か。


「天国では無いな。」

寝たまま体が動くか確認。


「体は動くか?」

グルイン族最強の戦士でギルド軍司令、ハシム=グラン=グルイン。グルイン族の王の直系で本当は彼が王に着くはずが現職のために彼の弟が王を継ぎグルイン族を統治している。

剣聖ハシムを知らぬ冒険者はいない。魔法を剣圧で弾き飛ばすのは有名な話だか真実と知る者は少ない。


「ハシムか…うむ問題ないようじゃ。しかし目覚めは美女と対面したかったのぉ。」


「軽口が叩けるなら平気だな。シェリーを呼んでくる。」


「そこはリーネじゃないのか、年寄りには優しくするもんだぞぉ。」


「それをシェリーに伝えても?。」


「やめてくれトドメをさされる。どれくらい寝ていた?」


「丸一日くらいだろう。おとなしくしていろ。」

少し笑みを浮かべ、左手を少し上げてそう告げると出ていった。



「マスターロシュトゥム!目覚めたとか!」

衛兵二人が駆け込んできた。ハシムから聞いたのだろう。部屋入り口の守衛だ。


「ああ。」


「御身体に問題は?!」

「何か必要なものは?!」

矢継ぎ早に大声が飛ぶ。


「問題ないちと老化が進んだくらいじゃ。必要な、というならちと静かにしてくれ。」

少し不愉快そうな声をだすロシュトゥム。


「失礼しました…。」

冷静になり細い声を出して敬礼する。


「ドルフは無事か?」


「はい、現在すでにご自身で歩けるほどに。」


「そうか…本当によかった。流石はリーネじゃ、いい子じゃ。」

安堵の表情を浮かべる。


「マスターの方があぶなかったと聞き及びました。一時は命の危険もという話でしたので…。幸運の庭(フォーチュンガーデン)に滞在中の冒険者にも協力を仰いで必要な物を揃えたとかおっしゃっていましたが…。」


「おお、そうか…。報酬を与えねばならんだろうな〜。わしのサインでよかろうもんか。」


「はははは、お元気そうで安心しました。」




「失礼します。」

「失礼します。」




「半分…いや4割強という所か…。」

ロシュトゥムは内部の異変に自覚した自分の総魔力量が目減りしている事に。上体を起こして手を開いたり握ったりしてみる。


「なんだか弱々しいかのぉ。」

肉体的な変化はまだ分からない、目覚めたばかりのせいかも知れない。これからまだ自分の使った力のしっぺ返しがどう現れるかよりも、次代に早く託さねばならないと焦る気持ちが高まる。


[コンコン]


「あいとるぞ。」


「失礼します。」

現れたのはドルフ腹部に包帯は巻いてあるがしっかり自分の足で歩いている。

「守衛から今しがた目を覚ましたと聞いて…失礼します。」

そう言うとベッドわきの椅子に腰掛ける。


「無事で何よりじゃった…。」


「まだ腹は少し抉れてますが。」


「お主は気を悪くするかも知れんが、ドルフ、お前を連れて行ってよかったと思っている。」


「それは…。」


「あやつと戦い生きて帰れたのだ。次も生きて帰れる。」


「部下の命を散らせて…ですか?」


「人類の存亡に関わる事なのじゃ。今はわしに腹を立ててもかまわん。ハシムとシェリーと一度話し合いたい、それから必ずお主にも仔細必ず伝える。」


「私はマスターにそんなっ!…ただ…おのれの未熟が口惜しいのです…。」


「あの者達の家族にはなんと伝えようかの…。」

窓を見るロシュトゥム。


「そう…ですね。」

戦時中でも無ければ凶悪モンスター討伐に出向いた訳でもない、ただの調査だ。彼らの家族になんと言えばいい、俺は。


「ワシが出向いて詫びよう。」


「…。」


「その気持ちがきっとお前を強くする。頼む、勝ってくれ。」


「え…はい…。」


[コンコン、ガチャ]


「ちょっとーノックした意味ないじゃない。」

「ギルドマスターになった時からこいつにプライベートなどない。」


「随分な言われようじゃ、おーこわい。」


「良かったわ、思ったより元気ね。」


「やーシェリーに抱き起こしてもらわんと立てそうにないわ。」


「え、ええ仕方ないわね…。」

少し照れた顔で手を伸ばすシェリー。


「さっきはリーネがなんたらと抜かしていたとおもったが?」


「やめんかばかたれ。」

起こしてもらいながらしかめ面でハシムに歯をむくロシュトゥム。


「ドルフお前には必ず詳しく話す。しばし時間をくれ、お前以外にも伝えたい者もいる。」

シェリーに肩を支えてもらいながら前を見たまま後ろのドルフに話す。


「はい…。」


「早く行くぞ。」

シェリーはエルフだ、六百何才だからしい。俺たちが出会った頃からシェリーは六百才台だったからあと50年もせず七百才を迎えるだろう。六百超えたババアと八十過ぎたじじいの抱き合った絵面など見たいものなどいるものか。ババアは本人に面と向かって言った事はないが。いやあったか?一度雷魔法の雨を剣で弾き飛ばしまくって抵抗したのはそれでキレた時だったか。まあ見た目が若い分実年齢を言われると腹立たしいのだろうな長命とは不便だな。


あそこは総司令が抱えるんじゃないのか…?


椅子に座ってドルフが疑問をぶつける先は無い。



「魔法が効かない、ねぇ…。」


「結局どうした?。」


「命を使った。」


「え…。」

「は?」


「前からずっと昔から気になっていた、魔法を使うのに魔力が必要だ、ではその魔力はどこから?と。」


「命か…。」


「そういうことじゃ。」


「須らく力とは流れるような感覚がある事がある。その感覚から力とは流動体なのだろうと思った。」


「なるほどな。」

「それで?」


「流れるという事は器があるのでは無いかとわしは考えた。」


「それを命と例えたという事…?。」


「ああ…。」


「魔力量が減った感覚はそのせいという事…。」


「半分ほど欠落した感覚がある。」

また手を開いて握ってみるロシュトゥム。


「出会った悪魔とおぼしき者は逃げて行ったのだろう?お前の命半分使って追い返せただけか。」


「ああ…さらに高位の存在に諭され帰ったようだった…。」


「そいつは今の俺たちじゃ命を捨てても追い返せも出来んだろうな。」


「ちょっと!。」


「事実じゃ…おそらくな。」


「そんな…。」


「一度書庫に行こう、もう一度何かヒントがないか調べよう。」


彼らが書庫と呼ぶその場所はまさしく書庫であり棚に収まった本のための部屋だ。ロシュトゥム、シェリー、ハシムらが正式ギルド立ち上げ時代に各地を駆け回っていた頃にロシュトゥム、シェリーが書物をあさっていた頃だ。歴史から統制、統治といったことにヒントを得るべく歴史書を探していたのだ。

ロシュトゥムがある事を疑問に思う。魔王がやってきて人間を滅ぼした所から全て始まっていて、それ以前の歴史に関する物が見当たらない。魔王が滅ぼしたとして、全てが残らないほど無くなっていたら人間など今生きていないはずなのである。もちろんその滅ぼされた歴史が伝わっているのだから当時の文書は無くとも口伝で伝わったら当時生き残りがいたはず。

ロシュトゥム達は活動と同時に書物の捜索を進行して行く事にした。魔王出現以前の歴史書を探し始めると不思議な事に書物が見つかり出した。魔王との戦いの歴史が繰り返されてきた事、その都度現れる英雄がいる事。分かった事はたくさんあったが全ての書物がひと続きでなく、一つの文章を書いたのが一人では無い事も分かった。違う書物の一ページ同士の話が繋がってしまうのだ。しかもそのそれぞれのページは明らかに違う人物が書いた文字に見える。

一つの書物に一ページだけ、魔王との歴史を綴ったページがあるのだ。最初の一ページと思わしき部分が入ったその本のタイトルをそのまま呼び“現世の書”とロシュトゥム達は呼んだ。

無数の歴史書を探している時になぜ見つからなかったのか不思議に思ったがそれ以上に魔王に対してロシュトゥム達は絶望した。人の力が通じないのだ。ただ英雄が魔王に対抗する力を持つ事を知った。ロシュトゥムは自身が英雄なのでは?と言う考えが一欠片ほどあった。数々の蔵書からこれらの文書を探し出した事。今になってみれば、悪魔に傷をつける事が出来た。ただそれが真実だとするとロシュトゥムはさらに絶望した。自身の命を賭して放った力もただの悪魔に深手とはいえ、傷つけるだけに終わったからだ。見つけてきた現世の書の中の英雄は悪魔達を圧倒している。自分には力が足りない事が今回証明されてしまったのだ。自分が英雄だとしたら人類は絶望的だ。ロシュトゥムは悪魔らしきモノと戦いさらに絶望を深めていた。

現世の書の中で魔王が現れては英雄が現れ、魔王を倒し人類は再生を続けてきた。その戦いで人類が悪魔に明確に傷をつけた記述は一切ない。悪魔に対抗するのは英雄しかありえないのだ。という考えがロシュトゥム自身に自分が英雄か?という一切喜びのない恐怖と絶望を与えていた。


「んーやはり英雄以外が悪魔と戦って勝ったーみたいなのはないわよね。」

シェリー=エヴァン=フィオーニ。彼女はエルフの王族では無いが位の高いフィオーニ家の一人として生まれ、ギルドとしての活動に参加する事に彼女は強い反発を家族に受けた。

ロシュトゥムの志を共にしたいと思った事が半分、彼と一緒にいたいと思ったのが半分。後ろの半分の理由を知る者は少ない。

本当ならエルフの一族の統治の一端を担う程のフィオーニ家だ。ギルドという、冒険者という、世俗的な行いに関わることなど許されざる事だが彼女のおかげでエルフの一族はひと昔前と比べればかなりオープンなイメージがついてきた。もちろんその傾向に批判的なエルフもいれば他種族の人間もいる。

閉じたエルフの世界を開きたいと正式ギルドの立ち上げから訴え、身をもって示して来た彼女の功績は大きい。


ロシュトゥム、シェリー、ハシムの彼らを三大冒険者と讃え人は呼ぶ。



「英雄が現れる事を祈るしかないのかのう。」

軽口を言うようなその雰囲気よりもロシュトゥムの心は暗く落ちていた。政治の真似事のような事をしていると嫌でも顔に出さないようには出来てくるらしい。


「もし…現状戦力がないまま、侵攻が始まったらどうするべきなのかしら…。」


「本当に剣が通らないのか一発いれてみたいもんだがな。」


「あなたねぇ、ロシューが死にかけたのよ?」


「まあまあ、ワシも試した時に同じ気持ちが無かった訳でもないしな。」


「だろう?」


「あなたたちは…。」


「そーゆーもんじゃ。」


[ビィーーービィーーー]


警戒音が部屋に響く。


[…西方より敵対勢力接近、総員緊急戦闘配備]


「襲撃じゃと?」

「まさか…」

「もう現れたの?!」


[繰り返す西方より敵対勢力接近、総員緊急戦闘配備]

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